高速道路で見かける緑色の線は、正式には「車線キープグリーンライン」と呼ばれています。この緑色の線は、NEXCO東日本が2021年7月から導入した比較的新しい道路表示で、主に渋滞対策として設置されています。
設置の背景には、追い越し車線への車両集中による渋滞発生があります。多くのドライバーが「早く先に行きたい」という心理から追い越し車線に移動することで、交通の流れが悪化し渋滞が発生していました。緑色という目立つ色を使用することで、ドライバーの心理に働きかけ、左車線での走行を促進する効果を狙っています。
関越自動車道の東松山IC付近が最初の設置場所で、第一走行車線(最も左側の車線)に約4kmにわたって引かれています。この区間は従来から渋滞が発生しやすいポイントとして知られており、対策が必要とされていました。
高速道路の緑色の線には、実は2つの異なる種類が存在します。それぞれ目的と正しい走行方法が異なるため、正確な理解が重要です。
車線キープグリーンライン
関越道などで見られるこのタイプは、車線の両端に引かれており、この線の間を走行するのが正しい方法です。線をまたいで車線変更することは可能で、法的な規制はありません。目的は左車線での継続走行を促すことです。
車両誘導線(緑色)
秋田県の日本海東北道や和歌山県の京奈和自動車道で見られるタイプは、車線の中央付近に引かれており、この線を「またいで走行する」のが正解です。運転席の真下に来るように設計されており、道路中央のワイヤーロープとの適切な距離を保つための安全対策です。
この2つのタイプを混同すると、適切でない走行をしてしまう可能性があるため、設置場所と線の位置を確認することが重要です。
多くのドライバーが気になるのが、緑色の線に関する法的な規制の有無です。結論から言うと、現在設置されている緑色の線はすべて法的な規制がありません。
従来の道路標示との比較。
ただし、法的規制がないからといって無視して良いわけではありません。これらの線は交通安全と渋滞緩和を目的として設置されており、協力することで全体の交通流が改善されます。また、緑色の線を無視した走行により事故が発生した場合、過失割合に影響する可能性も考えられます。
将来的には、効果が実証されれば法的な位置づけが変わる可能性もあるため、動向を注視する必要があります。
現在、緑色の線が設置されている主要な場所は以下の通りです。
車線キープグリーンライン
車両誘導線(緑色)
これらの設置場所に共通するのは、渋滞発生地点やワイヤーロープ接触事故が多発する区間であることです。特に暫定2車線区間では、対向車線への飛び出し防止用ワイヤーロープとの接触事故が問題となっており、緑色の車両誘導線が効果的な対策として注目されています。
今後の展開については、現在設置されている区間での効果検証が進められており、渋滞緩和や事故減少の効果が確認されれば、他の高速道路への展開も予想されます。特に首都圏の慢性的な渋滞区間や、地方の暫定2車線区間での導入が検討される可能性が高いでしょう。
冬季の積雪地域では雪による視認性の問題もあるため、季節要因も含めた効果検証が重要な課題となっています。
緑色の線の技術は、現在の渋滞対策や安全対策にとどまらず、将来の道路技術発展の基盤となる可能性を秘めています。
自動運転技術との連携
緑色の線は視覚的な誘導効果だけでなく、将来的には自動運転車両の走行ガイドラインとしても活用できる可能性があります。特定の色彩を使った車線表示は、カメラやセンサーによる認識が容易で、自動運転システムの精度向上に貢献できるでしょう。
ワイヤレス充電技術の統合
一部では、緑色のラインにワイヤレス充電設備を組み込み、走行中の電気自動車への充電を可能にする構想も議論されています。これが実現すれば、電気自動車の航続距離問題が大幅に改善され、普及促進につながる可能性があります。
リアルタイム交通制御
IoT技術と組み合わせることで、交通状況に応じて緑色の線の表示を動的に変更し、より効果的な交通流制御を実現できる可能性もあります。渋滞予測に基づいた事前の車線誘導や、事故発生時の迂回誘導など、従来の固定的な道路標示を超えた柔軟な交通管理が期待されます。
心理学的効果の応用拡大
緑色が持つ心理的効果(安心感、自然さ)を活用した道路設計は、ドライバーのストレス軽減や安全運転促進にも寄与する可能性があります。色彩心理学の知見を道路インフラに応用する新しいアプローチとして、今後の研究発展が注目されます。
これらの技術展望は、現在の緑色の線が単なる渋滞対策を超えて、次世代の道路インフラ技術の先駆けとなる可能性を示しています。効果検証の結果次第では、日本の道路技術が世界をリードする革新的なソリューションとして発展していくことも期待できるでしょう。