トヨタが2021年に発売した特別仕様車「DARK PRIME S」は、ハイエース200系誕生から20年の節目に登場した記念すべきモデルです。この特別仕様車は、スーパーGLをベースとして、ダークな色調で統一された室内にスポーティな個性を融合させています。
DARK PRIME Sの最大の特徴は、インストルメントパネルやステアリング、シフトノブなどにカーボン調加飾を施している点です。シートにもカーボン柄の新デザインが採用され、従来の商用車的なイメージを一新しています。
エンジンには環境・燃費性能に優れる1GD-FTVディーゼルエンジンを高出力化したものを搭載し、最高出力116kW、最大トルク330N・mを発揮します。さらに専用ショックアブソーバーを採用することで、より心地よくしなやかな乗り味を実現しています。
価格面では標準モデルと比較して約30万円程度の価格上昇となっていますが、その差額で得られる装備や快適性を考えると、十分に納得のいく価格設定といえるでしょう。
タイで販売されている高級ハイエース「ベンチュリー(Ventury)」は、2005年から販売されている特別なモデルです。このベンチュリーは日本仕様ではワイドボディ、ミドルルーフのハイエースワゴンに相当するサイズで、エンジンは3Lディーゼルと2.7Lガソリンの2種類が用意されています。
興味深いのは、免許制度の違いから11名乗車モデルとして販売されている点です(日本は10名乗車)。販売価格はガソリン車が135万4000バーツ(約384万円)、ディーゼル車が143万2000バーツ(約406万円)からとなっており、日本の同サイズモデルと比較すると高額な設定です。
ベンチュリーはタイでは高級車として販売されており、エクステリアやインテリアの装備が日本のハイエースワゴンとは大きく異なります。この海外専用の高級仕様は、一時期日本でも大きな話題となり、逆輸入を検討する愛好家も現れました。
タイのベンチュリーが示すように、ハイエースは世界各国でその土地のニーズに合わせた高級化が図られており、商用車の枠を超えた可能性を秘めています。
レクサスブランドからハイエースが販売されることはありませんが、レクサス風にカスタマイズされたハイエースは街中でも見かけることがあります。このカスタマイズの背景には、「高級感のあるハイエースに乗りたい」というオーナーの強い願望があります。
レクサス風カスタマイズの最も手軽な方法は、エンブレムの交換です。トヨタのエンブレムをレクサスのものに変更するだけで、見た目の高級感が大幅にアップします。さらに本格的なカスタマイズでは、ボディカラーをレクサス風に塗装したり、ホイールをレクサス純正品に変更したりすることで、より本格的な高級感を演出できます。
カスタマイズを検討する際は、目的と予算を明確にすることが重要です。「高級感を演出したい」「他とは違うオリジナリティーを出したい」など、具体的な目的を設定し、現実的な予算内で最大限の効果が得られるよう計画を立てましょう。
エンブレム交換だけでなく、グリルやホイールなどの交換も検討する場合は、トータルの予算を考慮する必要があります。優先順位を付けてカスタマイズ箇所を決めていくことで、効率的に理想の一台を作り上げることができます。
トヨタのモータースポーツ部門であるTRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)が手がけたハイエースは、商用車の常識を覆す驚異的な性能を実現しています。TRDハイエースの最大の特徴は、快適性とスポーティさを高次元で両立させている点です。
TRDハイエースには、内部に大径ピストンを使ったモノチューブ式のショックアブソーバーセット(12万円)と、リアの床下の剛性を高めるメンバーブレースセット(3万円)が装着されています。これらの効果により、まるで高級な乗用ミニバンのような快適な乗り心地を実現しながら、スポーティなハンドリングも手に入れています。
15インチの「TF7A」アルミホイールとグッドイヤー イーグル「#1 NASCAR」タイヤセット(16万4000円)も装着され、路面状況に負けない強さを発揮します。リアシートの乗り心地も大幅に改善され、元気よく走ってもらっても腰が座面から離れることがないほどの快適性を実現しています。
TRDの技術力は、徹底的に締め上げていくやり方を知っているからこそ、緩め方やバランスの取り方も深く理解している点にあります。モータースポーツで培った技術力が、商用車であるハイエースを高級車レベルの乗り心地に変貌させているのです。
ハイエースの高級化の歴史を振り返ると、4代目となるH100系(1989年登場)が大きな転換点となりました。この世代では、ワゴンの最上級グレード「スーパーカスタムリミテッド」が登場し、カタログには「トヨタの、もう一つの高級車」と記載されるほどの豪華な仕様でした。
スーパーカスタムリミテッドには、世界初となるパワーイージーアクセスシステムが搭載されていました。これは、キーをオフにするとシートが後ろへスライドし、キーを抜くとステアリングがチルトして乗降性が向上するシステムで、現在では多くの高級車に装着されています。
電動スライドドアも、ハイエースが初搭載したシステムです。今では軽自動車にも当たり前のように装着されているこの機能も、元々はハイエースが先駆けとなって開発されました。
現在のH200系は2004年の登場から約20年が経過しており、次期型への期待が高まっています。新型ハイエースでは、ハイブリッドシステムの搭載や、さらなる高級化が予想されており、商用車の枠を超えた進化が期待されています。
トヨタ グランエースの登場により、ハイエースベースの高級車という新たなカテゴリーも確立されました。グランエースは圧倒的なボディサイズと高級感を併せ持つ、日本屈指のプレミアムミニバンとして位置づけられており、ハイエースの高級化の可能性を示しています。
高級ハイエースの世界は、メーカー純正の特別仕様車から、海外モデル、カスタマイズまで多岐にわたります。商用車として生まれたハイエースが、これほどまでに高級化の可能性を秘めているのは、その基本設計の優秀さと、世界中のユーザーに愛され続けている証拠といえるでしょう。今後も技術の進歩とともに、さらなる高級化が期待される注目のジャンルです。