日産は2024年3月22日、NCAA男子バスケットボールトーナメントの開幕ラウンドに合わせて、3代目となる新型キックスを北米で発表しました。この戦略的なタイミングでの発表は、スポーツイベントの注目度を活用した日産の巧妙なマーケティング戦略と言えるでしょう。
現行の2代目キックスは2016年にブラジルでワールドプレミアが行われ、その後世界各国で展開されてきました。日本では2020年6月にe-POWER専用車として発売され、コンパクトSUV市場で一定の地位を築いています。
今回のフルモデルチェンジは、日産の新しいデザイン言語を採用し、従来のVモーショングリルからの脱却を図った点が特徴的です。これは日産の今後のデザイン戦略を占う重要な変更点と言えるでしょう。
新型キックスの外観デザインは「高級スニーカーのような洗練されたデザイン」というコンセプトで開発されました。この独特な表現は、ターゲット層である若い世代のライフスタイルを意識したものです。
フロントデザインでは、水平基調のLEDライトがグリルを囲むように配置され、従来のVモーショングリルとは大きく異なる新しいデザインアプローチを採用しています。この変更は、中国で発表された新型パスファインダーでも同様のデザインが採用されており、日産の新しいデザイン言語として統一される可能性が高いです。
ボディサイドでは、高級スニーカーのソールからインスパイアされた立体的な造形がアクセントとなり、スポーティな印象を演出しています。リアデザインでは、フェンダーに沿って配置されたフルLEDテールライトが、テールゲートを分割するような印象的なデザインとなっています。
新型キックスは現行モデルと比較して、全方向にサイズが拡大されています。具体的な寸法は以下の通りです。
新型キックス(北米仕様)のボディサイズ
この大幅なサイズアップにより、室内空間の拡大が期待されます。特にホイールベースの40mm延長は、後席の足元空間に大きな恩恵をもたらすでしょう。
興味深いことに、新型キックスのサイズは先代キャシュカイに近い寸法となっており、日産のコンパクトSUVラインナップにおける位置づけが上位にシフトしていることが分かります。
日本仕様の新型キックスには、セレナと同様の1.4L e-POWERシステムが搭載される予想です。これは現行の1.2L e-POWERから排気量がアップされ、より力強い走りが期待できます。
現行モデルでは2022年7月のマイナーチェンジで第2世代e-POWERが採用され、以下の改良が施されました。
新型キックスでは、これらの技術をベースにさらなる進化が期待されます。特に協調回生制御の搭載により、動力性能と燃費効率の両立がより高次元で実現される見込みです。
新型キックスの予想価格は319万円からとされており、現行モデルのX・2WD(299万8600円)から約20万円の値上げが予想されています。この価格設定は、ボディサイズの拡大や装備の充実を考慮すると妥当な範囲と言えるでしょう。
価格帯別の競合車種との比較では、以下のような位置づけになります。
300万円台前半のコンパクトSUV競合状況
新型キックスは、この激戦区において独自のe-POWER技術と洗練されたデザインで差別化を図る戦略と考えられます。特にハイブリッド専用車としての燃費性能は、競合他車に対する大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、現行モデルで好評を得ている4WDシステム「e-4ORCE」の搭載も期待されており、これにより悪路走破性や走行安定性の向上が見込まれます。
日産の経営計画「The Arc」では、2026年度までにe-POWERの展開拡大が掲げられており、新型キックスはその重要な一翼を担う車種として位置づけられています。