軽自動車韓国で復活する軽車キョンチャ規格とインスター

韓国で軽自動車に相当する「軽車(キョンチャ)」が復活している。日本の軽自動車とは異なる規格や、ヒョンデ・インスターの日本上陸など、韓国の軽車事情はどうなっているのか?

軽自動車韓国軽車規格とインスター

韓国軽車(キョンチャ)の基本情報
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規格の違い

韓国の軽車は日本の軽自動車より大きく、全長3600mm以下、全幅1600mm以下の規格

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販売復活

2021年以降、経済不振やガソリン価格高騰で軽車の販売が急増

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電動化

ヒョンデ・インスターなど電気自動車版も登場し、日本市場にも進出

軽自動車韓国規格キョンチャの基本仕様

韓国の軽車(キョンチャ)は、日本の軽自動車とは異なる独自の規格を持っています。韓国の軽車規格は排気量1.0リッター以下で、乗車定員は5名となっており、日本の軽自動車の4名定員とは大きく異なります。

 

ボディサイズについては、全長3600mm以下、全幅1600mm以下、全高2000mm以下と定められており、日本の軽自動車(全長3400mm以下、全幅1480mm以下、全高2000mm以下)よりもやや大柄な設定となっています。

 

特に注目すべきは全幅の違いで、韓国の軽車は1600mmまで許可されているため、日本の軽自動車よりも120mm幅広く設計することが可能です。この差により、室内空間や安定性において優位性を持つことができます。

 

韓国の軽車には「超小型」と「一般型」の2つのカテゴリーが存在し、多くの車種は一般型に分類されています。馬力に対する制限はなく、他の車級が税金と関連してエンジンの排気量だけに基づいて分類されるのに対し、軽車は大きさと排気量の両方による制限がかかっています。

 

軽自動車韓国市場での復活背景と販売動向

韓国では長らく軽車は不人気な存在でした。韓国では見栄っ張りな方が多く、自動車をステータスシンボルと考える傾向があり、軽車はあまり人気がありませんでした。実際、軽車の販売台数は2012年に21万6,221台を記録して以降、ずっと右肩下がりで推移し、2021年には半減未満の9万8,781台まで下がっていました。

 

しかし、2022年には13万4,294台に増加し、2023年8月の韓国内軽車登録台数は1万278台で前月比3.7%増加しています。この増加は、全体の自動車販売台数が前月比11.6%減少している中での出来事であり、軽車の復活ぶりを物語っています。

 

復活の背景には複数の要因があります。

  • 経済的要因: 韓国経済の低迷とガソリン価格の高騰により、燃料消費の少ない軽車に注目が集まっています
  • 社会的変化: 40~50代のアルバイト増加により、宅配業務などで軽車が選ばれています
  • ライフスタイルの変化: キャンプ文化の普及により、アウトドア用途での需要が増加しています
  • 価値観の変化: より経済的な消費文化が選好されるようになりました

軽自動車韓国ヒョンデインスター日本進出の意義

ヒョンデ・インスターは、韓国の軽車「キャスパー」をベースとした電気自動車で、2025年1月の東京オートサロンで日本デビューを果たしました。インスターのサイズは全長3830×全幅1610×全高1615mmと、特に全幅は日本の5ナンバー車で一般的な1695mmよりも極端に狭いのが特徴です。

 

インスターは、ベースとなるキャスパーのホイールベースを180mm延長し、後席空間などを拡大しています。韓国で販売されるキャスパーには1.0リッター直列3気筒のエンジン車もありますが、日本向けインスターはEVのみとなっています。

 

興味深いことに、インスターは全長と全幅がキャスパーより大きくなっており、韓国の軽車規格を超えています。これは日本市場向けに最適化された結果と考えられます。

 

キャスパー/インスターの生産は、韓国・光州市が21%、ヒョンデが19%の株式を持つ光州グローバルモーターズが担当しており、ヒョンデグループ傘下外の企業による生産という珍しい体制となっています。

 

軽自動車韓国キャスパー成功要因とデザイン戦略

ヒョンデ・キャスパーの成功は、韓国の軽車市場復活の大きな要因となっています。キャスパーは2021年9月にデビューし、ヒョンデとしては久しぶりの軽車となりました。全長3595×全幅1595×全高1575mmのサイズに1リッター直3ターボエンジンを搭載しています。

 

キャスパーの成功要因として以下が挙げられます。

  • CUVスタイル: スズキ・ハスラーのライバルともいえるコンパクト・ユーティリティ・ビークルスタイルを採用
  • ブランド力: ヒョンデブランドによる軽車への信頼性向上
  • 実用性: キャンプなどのアウトドア用途に適したデザイン
  • 経済性: 燃料消費量の少なさと維持費の安さ

キャスパーの存在が韓国において軽車の販売台数を押し上げているのは間違いなく、軽車全体で見ても2022年の年間販売台数が2021年実績を上回る事態になっています。

 

軽自動車韓国と日本の軽自動車市場への影響分析

韓国の軽車復活と日本市場への進出は、日本の軽自動車市場に新たな競争をもたらす可能性があります。特にヒョンデ・インスターは、日産サクラのライバルとして注目されています。

 

日本市場への影響として考えられる点。
競争激化の要因:

  • 韓国の軽車は日本の軽自動車より大きく、室内空間で優位性を持つ
  • 電気自動車としての先進性とコストパフォーマンス
  • 5名乗車が可能な点での差別化

日本メーカーの対応:

  • 軽自動車の電動化加速の必要性
  • 室内空間拡大への技術的挑戦
  • コストパフォーマンス向上の圧力

過去には韓国の軽車規格車が日本に上陸した例があります。デーウ(大宇)の「マティス」は、イタルデザインによるボディにスズキの軽自動車用をベースとした800cc直列3気筒エンジンを搭載していました。国や地域によってはシボレー「スパーク」として販売されていたこの車種の経験は、今回のインスター進出の参考となるでしょう。

 

韓国の軽車市場の復活は、見栄よりも実用性を重視する価値観の変化を表しており、この傾向は日本市場にも影響を与える可能性があります。特に経済的な消費を重視する若い世代の台頭により、軽自動車の位置づけが両国で変化していくことが予想されます。