韓国の軽車(キョンチャ)は、日本の軽自動車とは異なる独自の規格を持っています。韓国の軽車規格は排気量1.0リッター以下で、乗車定員は5名となっており、日本の軽自動車の4名定員とは大きく異なります。
ボディサイズについては、全長3600mm以下、全幅1600mm以下、全高2000mm以下と定められており、日本の軽自動車(全長3400mm以下、全幅1480mm以下、全高2000mm以下)よりもやや大柄な設定となっています。
特に注目すべきは全幅の違いで、韓国の軽車は1600mmまで許可されているため、日本の軽自動車よりも120mm幅広く設計することが可能です。この差により、室内空間や安定性において優位性を持つことができます。
韓国の軽車には「超小型」と「一般型」の2つのカテゴリーが存在し、多くの車種は一般型に分類されています。馬力に対する制限はなく、他の車級が税金と関連してエンジンの排気量だけに基づいて分類されるのに対し、軽車は大きさと排気量の両方による制限がかかっています。
韓国では長らく軽車は不人気な存在でした。韓国では見栄っ張りな方が多く、自動車をステータスシンボルと考える傾向があり、軽車はあまり人気がありませんでした。実際、軽車の販売台数は2012年に21万6,221台を記録して以降、ずっと右肩下がりで推移し、2021年には半減未満の9万8,781台まで下がっていました。
しかし、2022年には13万4,294台に増加し、2023年8月の韓国内軽車登録台数は1万278台で前月比3.7%増加しています。この増加は、全体の自動車販売台数が前月比11.6%減少している中での出来事であり、軽車の復活ぶりを物語っています。
復活の背景には複数の要因があります。
ヒョンデ・インスターは、韓国の軽車「キャスパー」をベースとした電気自動車で、2025年1月の東京オートサロンで日本デビューを果たしました。インスターのサイズは全長3830×全幅1610×全高1615mmと、特に全幅は日本の5ナンバー車で一般的な1695mmよりも極端に狭いのが特徴です。
インスターは、ベースとなるキャスパーのホイールベースを180mm延長し、後席空間などを拡大しています。韓国で販売されるキャスパーには1.0リッター直列3気筒のエンジン車もありますが、日本向けインスターはEVのみとなっています。
興味深いことに、インスターは全長と全幅がキャスパーより大きくなっており、韓国の軽車規格を超えています。これは日本市場向けに最適化された結果と考えられます。
キャスパー/インスターの生産は、韓国・光州市が21%、ヒョンデが19%の株式を持つ光州グローバルモーターズが担当しており、ヒョンデグループ傘下外の企業による生産という珍しい体制となっています。
ヒョンデ・キャスパーの成功は、韓国の軽車市場復活の大きな要因となっています。キャスパーは2021年9月にデビューし、ヒョンデとしては久しぶりの軽車となりました。全長3595×全幅1595×全高1575mmのサイズに1リッター直3ターボエンジンを搭載しています。
キャスパーの成功要因として以下が挙げられます。
キャスパーの存在が韓国において軽車の販売台数を押し上げているのは間違いなく、軽車全体で見ても2022年の年間販売台数が2021年実績を上回る事態になっています。
韓国の軽車復活と日本市場への進出は、日本の軽自動車市場に新たな競争をもたらす可能性があります。特にヒョンデ・インスターは、日産サクラのライバルとして注目されています。
日本市場への影響として考えられる点。
競争激化の要因:
日本メーカーの対応:
過去には韓国の軽車規格車が日本に上陸した例があります。デーウ(大宇)の「マティス」は、イタルデザインによるボディにスズキの軽自動車用をベースとした800cc直列3気筒エンジンを搭載していました。国や地域によってはシボレー「スパーク」として販売されていたこの車種の経験は、今回のインスター進出の参考となるでしょう。
韓国の軽車市場の復活は、見栄よりも実用性を重視する価値観の変化を表しており、この傾向は日本市場にも影響を与える可能性があります。特に経済的な消費を重視する若い世代の台頭により、軽自動車の位置づけが両国で変化していくことが予想されます。