韓国の軽自動車規格「キョンチャ(軽車)」は、日本の軽自動車よりもやや大きなサイズ設定となっている。具体的な規格は以下の通りだ。
日本の軽自動車規格(全長3400mm以下、全幅1480mm以下、全高2000mm以下)と比較すると、全長で200mm、全幅で120mmも大きく設定されている。この差は実際の使い勝手に大きな影響を与えており、韓国の軽自動車は日本の軽自動車よりも室内空間に余裕がある。
キョンチャには「超小型」と「一般型」の2種類の区分があり、現在市場で主流となっているのは一般型の規格だ。この規格により、韓国の軽自動車は日本の軽自動車とコンパクトカーの中間的な位置づけとなっている。
韓国の軽自動車市場は興味深い状況にある。新車市場では高級・大型志向の影響で販売が低迷している一方、中古車市場では根強い人気を維持している。
2023年上半期の中古車販売データを見ると、最も売れた中古車は起亜の軽自動車「モーニング」で、上位5車種中3車種を軽自動車が占めた。この背景には以下の要因がある。
現在韓国で販売されている主要な軽自動車は限られており、韓国GMの「スパーク」の生産終了により選択肢がさらに狭まっている状況だ。しかし、ヒョンデが20年ぶりに軽自動車市場に参入した「キャスパー」の登場により、市場に新たな動きが生まれている。
ヒョンデ・インスターは、韓国の軽自動車「キャスパー」をベースに開発されたBEV(バッテリー電気自動車)だ。日本市場向けには以下の特徴を持つ。
基本スペック
デザインの特徴
インスターは韓国本国のキャスパーからホイールベースを180mm延長し、後席空間を拡大している。これにより、日本の軽自動車よりも室内空間に余裕を持たせ、コンパクトカー並みの居住性を実現している。
ヒョンデは2022年の日本市場再参入以来、FCEVまたはBEVのゼロエミッションビークル戦略を採用しており、インスターもこの戦略に沿った製品となっている。
韓国では軽自動車に対する手厚い優遇制度が設けられており、これが軽自動車の普及を後押ししている。主な優遇内容は以下の通りだ。
税制・登録関連
利用時の優遇
その他のメリット
これらの優遇制度により、韓国の軽自動車は購入時だけでなく、維持費の面でも大きなメリットを享受できる。特にガソリン補助制度は、燃料費高騰の影響を受けやすい軽自動車ユーザーにとって重要な支援となっている。
韓国の軽自動車規格車両の日本参入は、従来の日本の軽自動車市場に新たな選択肢をもたらす可能性がある。特に注目すべき点は以下の通りだ。
市場への影響
技術的な特徴
今後の展望
インスターの成功次第では、他の韓国メーカーも日本市場への参入を検討する可能性がある。また、日本の軽自動車メーカーも、韓国の軽自動車規格を参考にした新たな車両カテゴリーの開発を進める可能性がある。
過去にはデーウ(現GM)の「マティス」が日本市場に投入された実績もあり、韓国の軽自動車規格車両の日本参入は決して新しい試みではない。しかし、BEV化という時代の要請と、ヒョンデの技術力向上により、今回のインスターは過去の事例とは異なる成功の可能性を秘めている。
韓国の軽自動車市場で培われた「チャバク(車中泊)」対応設計や、女性ユーザーを意識したデザインなど、日本市場でも受け入れられる要素が多く含まれており、今後の動向が注目される。