車検対応マフラーを付けても、消音材が劣化すると2回目の車検で落ちて30万円以下の罰金リスクがあります。
「柿本改=爆音」というイメージを持っている人は少なくありません。しかし、そのイメージの多くは1980〜90年代のチューニングカーブームに作られたものです。
創業者である柿本由行氏は、1975年にカキモトレーシングを設立した現役レーサーでした。1982年ごろには独自開発のスポーツマフラーが全国シェア3位を誇り、大口径テールのマフラー開口部近くに貼られた「柿本改」のステッカーは、当時のチューニングカーシーンの象徴でした。当然ながら、当時のマフラーは音量規制がゆるく、かなり大きな音を出すことが当たり前でした。
転機となったのは2006年です。JASMA(日本自動車スポーツマフラー協会)が「一般公道用マフラーはJASMA認定品のみ製造・販売を義務付ける」という自主規制を開始。これを受けて柿本改は、競技専用モデルを除く全シリーズをJASMA認定品へ移行させます。
「軟弱になった」わけではありません。JASMA基準を守りながらも、柿本改らしい「音質のこだわり」を追求するスタイルへと進化したのです。現在の柿本改のポリシーは「音量より音質」。いくら音量が大きくても音質が悪ければ意味がない、というスタンスに変わっています。
つまり今の柿本改マフラーです。昔の「爆音ブランド」というイメージは、すでに20年以上前のものと考えておいたほうが正確です。
参考:柿本改マフラーの各シリーズと性能のラインナップ詳細
柿本改のカキモトレーシング、どんなマフラーをつくっている? – crnavi
「柿本改マフラー」と一口に言っても、現行の車検対応モデルは7シリーズもあり、それぞれ音量・音質のキャラクターがまったく異なります。購入前にシリーズの特徴を把握することが大切です。
まず、最も静かな部類に入るのが Class KR です。2010年4月以降に生産された車向けの加速騒音規制(82dB以下)にも対応しており、近接排気騒音の実測値は82dBと非常に控えめ。アイドリング時のデシベルは68dBで、電車が来る直前のホームの騒音(約70〜80dB)よりも静かな水準です。「音量は純正プラスα程度で、家族は誰も気づかない」という口コミが多く見られるほどです。
次に GTbox 06&S は、ワゴン・1BOX車向けに設計されたシリーズで、近接排気騒音は91dBほど。中低速でのトルクとクイックなレスポンスを重視しており、街乗りの1,500〜2,000回転あたりで心地よいサウンドを楽しめます。JASMA基準の範囲内に収めつつも、柿本改らしい音質の味付けがあります。
Regu.06&R は「うるさすぎず、楽しめる音量」を明確なコンセプトに掲げたモデルで、近接排気騒音は92dB。インナーサイレンサーなしでこの数値をクリアするよう設計されています。スポーツサウンドを楽しみたいが日常使いもしたい、というユーザーに支持されています。
| シリーズ名 | 近接排気騒音 | 特徴 |
|---|---|---|
| Class KR | 約82dB | 最静粛・規制対応重視 |
| GTbox 06&S | 約91dB | ワゴン・1BOX向け |
| Regu.06&R | 約92dB | 日常+スポーツの両立 |
| Kakimoto.R | 非公表 | 重低音・オールラウンド |
| HYPER FULLMEGA N1+ | 非公表 | レース由来の高回転型 |
音量が大きいほど良いとは限りません。目的と用途に合わせて選ぶのが基本です。
参考:柿本改の各シリーズの騒音値・JQR認証情報
Class KR 製品ページ – 柿本改 KAKIMOTORACING
車検対応の柿本改マフラーを付けたのに、しばらくしたら音がどんどん大きくなってきた、という経験を持つユーザーは実は多くいます。これは不良品でも違法品でもなく、「消音材(グラスウール)の劣化」が原因です。
スポーツマフラーのサイレンサー(タイコ)内部には、グラスウールと呼ばれる消音材が充填されています。このグラスウールは、高温の排気ガスに長期間さらされることで徐々に焼けてへたり、消音効果が弱くなります。走行距離が増えるほど、また高回転で使う頻度が高いほど劣化は早く進みます。
新品装着時には保安基準内の音量でも、走行を重ねるうちに基準をオーバーする可能性があるということです。
実際、Yahoo!知恵袋でも「車検対応保安基準適合マフラーでも走行距離を重ねると消音剤が劣化し音が大きくなり、車検NGになる」との指摘があります。ディーラー車検では音量チェックが厳しくなる傾向があるため、2回目の車検でNGになるケースもあります。
これは痛いところですね。対処法としては次の2つが有効です。
1つ目は、柿本改が純正オプションとして販売している インナーサイレンサー の装着です。差し込むだけで音量を約3〜5dB下げる効果があります。価格は製品によって異なりますが、数千円〜1万円台で対応できるため、車検前の一時的な対処に使えます。
2つ目は、サイレンサー内部のグラスウールを交換・追加する方法です。みんカラでも「グラスウール増量で消音効果を回復させた」という事例が複数報告されています。ただし分解が必要なため、自信がない場合はショップへの持ち込みが安全です。
参考:柿本改マフラーのインナーサイレンサー製品詳細
EXHAUST:インナーサイレンサー – 柿本改 KAKIMOTORACING
「車検対応品を付けているから法的に問題ない」と思っている人は多いですが、これは必ずしも正しくありません。車検はあくまで検査時点での合否であり、その後に音量が変化した場合は別の話になります。
まず保安基準について整理しておきましょう。2010年4月1日以降に生産された車に社外マフラーを装着する場合、近接排気騒音96dB以下かつ加速走行騒音82dB以下の「絶対値規制」に加え、性能等確認済表示(JQR認証)を持つマフラーであることが求められます。これをクリアしていない状態で公道を走ると、保安基準不適合となります。
では違反した場合どうなるか。道路運送車両法第108条に基づき、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。路上で取り締まりを受けると整備命令標章が貼られ、期限内に基準を満たす状態に戻して再検査を受けなければなりません。
さらに注意したいのが、爆音で走ることによる道路交通法違反のリスクです。極端に大きな音を発しながら走行した場合、安全運転義務違反(違反点数2点・反則金普通車9,000円)に問われる可能性があります。また、他の車に対して威嚇・挑発する目的と見なされれば、妨害運転罪(あおり運転)として違反点数25点、免許取り消し(欠格2年)、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という極めて重い処罰対象となります。
罰則に注意すれば大丈夫です。でも、知らずにリスクを抱えたままにしないことが重要です。
参考:マフラー爆音・車内爆音の法的違反と罰則内容の詳細解説
車内爆音は違反になる?罰則内容やマフラー改造についても解説 – car-days
「デシベル値が同じでも、音の質によってうるさく感じるかどうかは変わる」という点は、あまり語られることがありません。これが柿本改マフラーの最大の差別化ポイントです。
たとえばRegu.06&Rは近接排気騒音92dBという数値上では「けっこう大きい音」に聞こえますが、実際に装着したユーザーからは「住宅街でも耳障りでない」「低音が渋くて周囲に威圧感を与えない」という評価が寄せられています。これは音量だけでなく、音の周波数特性(音質)が設計の段階で細かく作り込まれているためです。
一方、粗悪な社外マフラーは音量こそ大きくないのに、高周波の耳障りな音を出すものがあります。80dBでも「うるさく感じる音」と、95dBでも「気にならない音」が存在するのです。これが音質設計の差です。
柿本改が長年にわたって「音は性能」というコンセプトを掲げてきた背景には、このような設計哲学があります。開発段階では「音創り」から設計・製作するという方針を貫いており、各シリーズで排気音の周波数帯域を意図的にコントロールしています。
つまり「音量が大きい=うるさい」は必ずしも成立しないということですね。
音量数値だけで「うるさいかどうか」を判断するのは早計です。購入前にYouTubeなどで実際の排気音サンプルを確認すること、そして自分の使用環境(住宅街での早朝発進が多いか、高速道路での使用が多いかなど)を考慮した上でシリーズを選ぶことが、後悔しない選択につながります。
これは使えそうです。試聴動画と合わせてシリーズ選定の参考にしましょう。
柿本改公式サイトでは各製品のサウンドサンプルも確認できます。まず公式ページで気になるシリーズの音を試聴してから、実車での確認というステップが最も確実な方法です。
参考:柿本改マフラーのラインナップと各シリーズの音量・特性について
マフラーに関する法令について – 柿本改 KAKIMOTORACING