2024年11月に開催されたラリージャパン2024のスペシャルトークショーで、トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長が「セリカ、やっちゃいます」と公式に発言したことで、次期セリカの復活が現実味を帯びてきました。この発言は、豊田章男会長が以前から事あるごとにセリカへの想いを語っていたことを受けてのものです。
中嶋副社長は「モリゾウさんがいろんなところで、セリカセリカっていうわけですよ。まだね。何も影も形もないのに。僕にプレッシャー与えるわけです」と語りながらも、最終的に復活宣言に至りました。ただし、豊田会長は「社内的には何も決まってませんから」とも述べており、まだ正式決定ではない段階であることも明かされています。
米国トヨタの製品企画担当シニアVPであるクーパー・エリクソン氏も「開発が進行中で、実際に走行可能なプロトタイプも存在する」と認めており、開発は最終段階に入っているとされています。
次期セリカの最も注目すべき点は、従来のFF(前輪駆動)ベースから大幅に変更され、ミッドシップ方式が検討されていることです。この構想では、GRヤリスで使用されている1.6L直3ターボエンジン(最高出力300ps程度)をキャビン後方に配置し、4WDシステムを組み合わせる計画となっています。
具体的な構成としては、GRカローラのコンポーネントを前後逆に配置した形となり、エンジンがキャビン後方に搭載され、プロペラシャフトが前方に伸びて前輪を駆動する仕組みです。これは過去のMR2でFFのカローラをミッドシップ化した技術的ノウハウを活用したものと考えられます。
このミッドシップ化により、重量配分の最適化と運動性能の向上が期待されますが、コスト面では従来よりも高価格になる可能性が指摘されています。
2025年1月15日に、ブラジル産業財産庁に「GRセリカ(GR CELICA)」という商標がトヨタ自動車によって出願されたことが明らかになりました。この商標登録は公式なものであり、GR86やGRスープラと同様のネーミング戦略を示しています。
発売時期については、複数の情報源から2026年後半から2027年にかけてのデビューが有力視されています。現在は開発の最終段階とされており、デザインについてはディーラーには既に公開済みという情報もあります。
過去の商標登録から実際の発売までの期間を考慮すると、商標登録から数年以内の発表が一般的であり、次期セリカも近い将来に正式発表される可能性が高いと考えられます。
次期セリカのパワートレーンについては、複数の選択肢が検討されています。主要な候補は以下の通りです。
1.6L直3ターボ仕様
2.4L直4ハイブリッド仕様
トヨタのカーボンニュートラル方針を考慮すると、ハイブリッド搭載の可能性も十分にあります。一方で、往年のGT-FOURブランド復活を期待する声も強く、パワフルな4WD仕様への期待も高まっています。
次期セリカの復活は、単なるノスタルジー商品ではなく、トヨタの戦略的な市場展開の一環として位置づけられています。現在のスポーツカー市場では、GR86とGRスープラの間に価格帯のギャップが存在しており、次期セリカがその中間を埋める役割を担うと予想されます。
特に注目すべきは、ホンダ・プレリュードの復活発表を受けた競合関係です。両車種ともに往年の名車の復活という共通点があり、スペシャリティクーペ市場の再活性化を狙っています。次期セリカがハイブリッド化された場合、環境性能とスポーツ性能の両立という新たな価値提案が可能になります。
また、デザイン面では1970年代の初代セリカ「ダルマセリカ」の要素を現代的に解釈したレトロ×モダンの融合が検討されており、幅広い年齢層へのアピールが期待されています。5ドアリフトバック形式と2ドアクーペ形式の両方が検討されているという情報もあり、実用性とスポーツ性能のバランスを重視した開発が進められています。
中嶋副社長が「昔のセリカは、デートカーとして人気を得ました。またラリーでもトヨタのセリカは人気です。今後、お客様がデートカーなのか、ラリーなのかどちらを期待するかは分かりませんが、ワクワクするようなクルマにはしたいですね」と語っているように、多様なニーズに応える車両として開発が進められています。
次期セリカの成功は、トヨタのGRブランド戦略全体にも大きな影響を与えることになり、スポーツカー市場における同社のポジション強化につながると考えられます。