自衛隊の車両は「防衛専用品」として厳格に管理されており、不要となった場合の処分方法も明確に規定されています。防衛省の通達によると、自衛隊車両は「そのまま使用できないか又は復元できないよう破壊、切断等の措置を行う」とされ、保全上必要な部位や悪用される恐れのある部位は完全に破壊することが義務付けられています。
具体的な処分手順として、まず駐屯地内で自衛隊員の手によって以下の作業が行われます。
これらの作業完了後、車両は民間の契約業者に「スクラップ」として引き渡されます。業者との契約では「車両を解体することなくそのまま引き取る」「引渡後は復元して車両としての再利用は絶対にしない」「引渡後は速やかに鉄屑、リサイクルの処分を実施する」という条件が明記されています。
正式には払い下げが禁止されているにも関わらず、73式小型トラックに似た車両が中古車市場で確認されています。これらの車両は以下のような経路で民間に流出していると考えられています。
解体業者からの流出パターン
防衛省は入札する解体業者に対して、解体せず外部へ放出した場合は違約金を課すと警告していますが、実際には一部で流出が発生しているのが現状です。
海外経由での逆輸入
フィリピンやタイなど海外では、日本で解体された73式小型トラックをはじめとする自衛隊車両が現地で再び組み立てられ使用されている例があります。これらの車両を日本国内に逆輸入するという形式を取ることで、民間でも扱える可能性があるとされています。
実際に販売されている自衛隊仕様車両の価格帯は以下のようになっています。
価格例
車両の特徴
購入時の注意点
自衛隊の小型トラックは時代とともにベース車両が変化してきました。
歴代ベース車両の変遷
三菱ジープの生産終了に伴い、73式小型トラックもフルモデルチェンジが実施されました。現在使用されているのは三菱パジェロをベースとした車両で、製造元での型式名称はV10(Gカー)パジェロと呼ばれています。
パジェロ製造工場閉鎖の影響
2021年度上期にパジェロ製造(岐阜県坂祝町)の工場が閉鎖され、自衛隊向けの1/2tトラックの生産にも影響が出ています。パジェロの生産終了により、将来的には他メーカーの4輪駆動車を新たに導入する可能性も検討されています。
自衛隊車両に対する民間の関心は高く、様々な形で活用されています。
愛好家の活動
実用的な活用例
北海道の砂浜では、昆布漁師が3.2/1t等(ウィンチ付)の自衛隊車両を使用して、ウィンチで昆布を海中から砂浜へと引き上げる作業に活用している例があります。これらは払い下げ車両でも完全に復元され、実用的に使用されています。
コミュニティでの情報交換
自衛隊車両愛好家の間では、「本音と建て前の世界」として、表向きは禁止されているものの、実際には一定のルートで流通していることが認識されています。ただし、これらの活動は常にグレーゾーンにあり、法的リスクを伴うことも理解されています。
自衛隊ジープの払い下げは正式には不可能ですが、様々なルートで民間に流出している現実があります。購入を検討する際は、合法性の確認と適切な手続きを経ることが重要です。また、これらの車両は単なる趣味の対象ではなく、日本の防衛史を物語る貴重な文化遺産としての価値も持っています。