自動車損害賠償保障法86条の3は、自賠責保険に関する違反行為とその罰則を定めた重要な条文です。この法律は、交通事故の被害者を保護し、最低限の補償を確保するために制定されました。
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86条の3第1項では、次の各号のいずれかに該当する場合に、その違反行為をした者は一年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金に処すると規定しています。具体的な違反内容として、第5条の規定に違反した者(自賠責保険未加入での運転)、第23条の9第1項の規定に違反して職務上知り得た秘密を漏らした者、第84条の2第2項または第3項の規定に違反した者などが該当します。
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最も一般的な違反は、自賠責保険に未加入のまま自動車を運転することです。自動車損害賠償保障法第5条では、自動車は自賠責保険または自賠責共済の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならないと明確に定められています。
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自動車損害賠償保障法86条の3に違反した場合の罰則は非常に厳しく、刑事罰と行政処分の両方が科されます。
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刑事罰については、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。初犯であれば略式裁判による罰金処分で済むことが多いですが、懲役刑が科される可能性もあります。
参考)https://adcc-faq.aioinissaydowa.co.jp/faq/show/15?category_id=5amp;site_domain=default
行政処分としては、違反点数6点が付加され、即座に免許停止処分となります。行政処分前歴が0回の場合でも、6点の違反は一発で免許停止となる重大な違反です。免許停止期間は通常30日間ですが、前歴がある場合はより長期間となります。
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さらに、車検切れと自賠責保険未加入の両方に違反している場合、罰則はより厳しくなります。この場合、刑法併合罪第47条の規定により、1年6ヶ月以下の懲役または80万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-musyaken-muhoken/
自賠責保険への加入は、すべての自動車運転者に課せられた法的義務です。自動車損害賠償保障法は、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することを目的としています。
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この加入義務は、普通自動車だけでなく、バイクや原動機付自転車を含むすべての自動車に適用されます。損害保険会社が扱っているものを自賠責保険、共済組合が扱っているものを自賠責共済と呼びますが、内容は変わりません。
参考)https://soudanguide.sonpo.or.jp/car/q002.html
自賠責保険が強制加入とされている理由は、被害者保護の観点からです。加害者に資力がない場合でも、被害者が最低限の補償を受けられるようにするための制度なのです。自賠責保険の補償内容は、死亡時3,000万円、後遺障害時4,000万円から75万円、傷害時120万円と全国一律で定められています。
参考)https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/meeting/kyufu_kyouka/kaisai/3rd/shiryou02.pdf
国土交通省の調査によると、約20万台もの車両が車検切れで公道を走っていると推定されており、これらの多くは自賠責保険も切れている無保険車です。このような無保険車両の対策は、自動車の安全上の問題に加え、事故の被害者への補償を担保するという意味でも非常に重要となっています。
自賠責保険に加入するだけでなく、保険証明書を常に携帯することも法律で義務付けられています。自動車損害賠償保障法第8条では、自動車は自賠責保険証明書を備え付けなければ運行の用に供してはならないと規定しています。
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保険証明書を携帯していない場合、たとえ自賠責保険に加入していても30万円以下の罰金が科せられます。ただし、証明書不携帯の場合は違反点数は付加されません。それでも30万円という高額な罰金が科される可能性があるため、必ず車内に備え付けておく必要があります。
参考)車検切れ・自賠責保険未加入の罰則について!対処法なども解説
普通自動車の場合は、車検証と一緒に保管しておくのが一般的です。原付やバイクの場合は、シート下に保管することが推奨されています。保険証明書には、保険加入状況、有効期限、保険加入期間などの重要な情報が記載されており、交通事故などのトラブルが発生した際に速やかに提示する必要があります。
参考)【最新】自賠責保険証明書とは|データ交付可能に!再発行方法・…
令和6年11月からは、自賠責保険証明書の電子交付が開始されました。スマートフォンなどにデータを保存しておくことで、紙の証明書の代わりとして認められるようになっています。ただし、電池切れや端末を忘れた場合は備付義務違反となるため注意が必要です。
参考)https://faq-smp.sompo-japan.jp/jibaiseki/faq_detail.html?id=30617
自動車損害賠償保障法86条の3の違反を避けるためには、ドライバー自身が日頃から注意を払う必要があります。まず最も重要なのは、自賠責保険の有効期限を定期的に確認することです。
参考)自賠責保険とは?加入義務や補償内容、範囲等について簡単に解説…
自賠責保険は通常、車検時に更新されますが、車検切れの車は自賠責保険も切れていることが多いため特に注意が必要です。新車であれば37ヶ月、2回目以降は24ヶ月または25ヶ月の車検ごとに更新するのが基本的な流れとなっています。
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保険証明書を紛失した場合は、速やかに再発行手続きを行う必要があります。再発行されるまでは運転できないため、紛失に気づいたらすぐに加入している保険会社に連絡しましょう。自賠責保険は販売店や車検業者が手続きを代行することが多いため、任意保険とは別の保険会社になっている場合があります。
参考)車を運転する場合は必ず自賠責保険証を携帯しよう!もし紛失して…
国土交通省の公式サイト
自賠責保険未加入の罰則について、国土交通省が詳しく解説しています。法律の最新情報や具体的な処分内容を確認できます。
また、令和6年11月から開始された電子証明書を活用するのも一つの方法です。スマートフォンにデータを保存しておけば、紙の証明書を紛失するリスクを減らせます。ただし、電池切れや端末の忘れ物には十分注意しましょう。
参考)自賠責証明書(データ交付)について|日本損害保険協会
最後に、自賠責保険だけでは補償が不十分な場合も多いため、任意保険への加入も検討すべきです。自賠責保険は対人補償のみで、対物補償や加害者自身への補償はありません。また、補償額にも上限があるため、任意保険で不足分を補う必要があります。
参考)https://www.sonysonpo.co.jp/auto/guide/agde001.html