エレベーターの表示灯はビル内における安全な移動を実現するための基本要素です。表示灯システムは、利用者に対して到着情報や運転方向、現在地など重要な情報を光で伝える役割を担っています。エレベーター表示灯の3大要素は、呼び出しや開閉に使用する押しボタン、到着と運転方向を知らせるホールランタン、そして現在地を示すインジケーターです。これらが調和することで、利用者は安心してエレベーターを利用できます。
特にインジケーター（階数表示器）は、エレベーターを待っている方や乗車している方に対して、現在地の階数を正確に知らせる重要な装置です。数字を内側から電球で照らす「アナログ式」と、液晶画面に数字を表示する「デジタル式」の2つのタイプが存在します。デジタル式は視認性に優れ、複数言語対応も可能なため、国際化が進む施設で採用が増えています。ホールランタンは到着と運転方向を表示し、チャイムと連動して点灯することで、エレベーター利用者に直感的に情報を伝えます。
エレベーターの表示灯の点灯・消灯パターンは、利用者の安全と利便性に直結した仕組みです。建物内のエレベーターシステムにおいて、表示灯は複数の情報を同時に送信する必要があります。例えば、ホールランタンは点灯と点滅を使い分けることで、異なる意味の情報を伝えます。一般的に点滅は「ここに向かっています」という予告を示し、点灯は「到着しました」という即時性の高い情報を表します。
また、エレベーターの運行状態に応じて表示灯の表示内容も変化します。かご内操作盤のインジケーターは、エレベーターが上昇中か下降中かを矢印アニメーションで分かりやすく伝える機能を備えている最新式も増えています。乗場の押しボタンが点灯しているのは、その階への行き方が「上行き」か「下行き」か、または「両方向対応」かを示しています。このような複数階層の情報発信により、利用者は混乱なく目的地に到達できるようになっています。
エレベーターのカゴ位置を表示する方式は、技術進化に伴い大きく変わってきました。従来のアナログ式インジケーターは、複雑な機械装置内に光源を仕込んで表示していました。針が各階を示すメーター式や、段階的に階数表示が光るタイプなど、多様な表示方式がありました。これらは導入コストが低く保守も確立されていましたが、複数言語表示には対応しにくいという課題がありました。
対して、デジタル式の液晶インジケーターは、6.2型や7.5型の液晶画面に数字やマークを表示します。LED基板を組み合わせることで、超ロング型のホールランタンにも対応可能です。液晶方式は外光の影響を受ける環境でも見やすいよう、バックライト輝度調光範囲が広く設計されています。さらに、タッチパネル搭載型の最新式では、階数入力が直感的に行え、身体の不自由な方のための車椅子用操作盤では低い位置に配置された専用ボタンが採用されています。
特に乗場側に設置される液晶は、建物の状況によって外光が差し込み、見やすさに影響を受けることを考慮した設計が施されています。バックライト輝度の自動調光機能により、昼間の明るい環境でも夜間の薄暗い環境でも最適な視認性が保たれます。デジタル式の表示装置は既存エレベーターのきょう体に実装でき、建物に特殊な工事を施さずに設置できるという利点もあります。
エレベーター表示灯のLED色選択は、視認性と建築デザインの両面から重要な決定項目です。標準的な表示灯では、アンバー・赤・緑・白・青の5色のLEDが用意されています。各色には独自の役割と効果があり、施設の特性に応じて最適な色が選定されます。アンバー（黄色）は古くから案内灯に使用される色で、夜間視認性に優れており、一般的な施設のホールランタンに多く採用されています。赤は警告や緊急性を示す色として機能し、非常時の表示灯に用いられることが多いです。
緑色は安全と通行可能を表す国際的な色彩基準であり、到着・乗車可能を示すため採用されることがあります。白は明るく清潔感を演出し、モダンな建築物に適しています。青はLED技術の進展で実現した色で、高級感や先進性を表現する際に活用されます。特に注目すべきは、カラーユニバーサルデザイン（色覚の多様性に対応した設計）への配慮です。赤緑色覚異常の方でも識別しやすい色の組み合わせや、色だけに依存しない情報設計が施されています。
参考：エレベーター液晶インジケータのカラーユニバーサルデザインについて - 色覚多様性に対応した表示技術の詳細
https://www.jstage.jst.go.jp/article/review/65/02/65_02_a05/_article/-char/ja/
ユニバーサルデザインの考え方は、現代のエレベーター表示灯設計において必須要件となっています。高齢者や視覚障害者、色覚異常のある方など、あらゆるユーザーが正しく情報を理解できる設計が求められています。視認性を高めるためには、単なる明るさだけでなく、色のコントラスト、文字サイズ、フォント選択などの複合的な検討が必要です。最新のデジタル式インジケーターでは、文字サイズやフォントによって情報の重要度を視覚的に区別できる仕様になっています。
また、多言語対応もユニバーサルデザインの重要な要素です。英語をはじめとした外国語に対応しているインジケーターが増え、日本を訪れる外国人旅行者にも対応しています。音声ガイダンスと併用することで、視覚障害者にも情報が等しく伝わるようになっています。建物への特殊工事を施さずに設置でき、保守性にも配慮した設計により、リニューアル工事の際の施工負担も軽減されています。表示灯カバーの材料には、ステンレス304（3t）ヘアーライン仕上げやアルミ52S（3t）アルマイト仕上げが用いられ、耐久性と美観が両立しています。
参考：ビルテクノロジーに関する表示灯システム - エレベーター表示装置の技術仕様
https://orientaru.sakura.ne.jp/wp/?page_id=159
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