ホンダジェットの内装は、全長12.5メートルという限られた機体サイズの中で、最大限の居住性を実現するために設計されています。最大の特徴は、エンジンを主翼上面に配置することで生まれた広々とした客室空間です。この革新的な設計により、従来の小型ジェット機では考えられないほどの室内容積を確保しています。
客室の高さは中央部分が最も高くなるよう設計されており、身長190センチの人でも余裕を感じられる空間を実現しています。この設計思想は、ホンダが自動車開発で培った「人間中心設計」の考え方を航空機に応用したものです。
標準定員は操縦者2名と乗客4名、または操縦者1名と乗客5名の計6名となっており、自動車のような感覚で利用できるサイズ感が特徴的です。
ホンダジェットのシートは、単なる座席を超えた多機能性を備えています。最も注目すべき機能は、シート横のレバーを引くことで前後左右にフレキシブルに動かせる点です。この機能により、乗客は自分の体型や好みに合わせて最適なポジションを見つけることができます。
シートの配置も工夫されており、大人が向かい合って座っても脚が接触しない十分な足元空間を確保しています。従来の小型ジェット機では脚を互い違いにしなければ座れないことを考えると、この足元の広さは圧倒的な優位性を持っています。
各シートには読書灯やドリンクホルダーが完備されており、長時間のフライトでも快適に過ごせる環境が整っています。さらに、ビジネスジェットでは考えられないほど大きな収納式テーブルを備え、ノートPCを置いても余裕があります。
ホンダジェットの内装で特筆すべきは、その静粛性の高さです。エンジンを主翼上面かつキャビンより後方に配置することで、機内騒音を大幅に低減しています。この設計により、対面相手と通常の声で会話ができるレベルの静かさを実現しています。
最新のElite IIでは、機内壁の遮音材を刷新して機内に流れ込む風切り音を抑える設計を採用し、さらなる静粛性の向上を図っています。この改良は自動車の年次改良のようなアプローチで、継続的な品質向上を目指しています。
音響システムも革新的で、壁面に24個のトランスデューサーを内蔵する「スピーカーレス」設計を採用しています。この3Dサウンドシステムにより、タブレット端末での映画鑑賞なども高品質な音響で楽しむことができます。
ホンダジェットの化粧室設計は、実用性と快適性を重視した独特のアプローチを取っています。多くのビジネスジェット機が前方にトイレを配置するのに対し、ホンダジェットは機内の空気の流れを考慮してキャビン最後方に配置しています。
化粧室の仕切りは、カーテンのような目隠しではなく、しっかりとした扉式を採用しており、同乗者に遠慮することなく利用できます。フタをすればシートとしても使える多機能設計で、限られた空間を有効活用しています。
オプションで洗面台の設置も可能で、トイレが流水式であることと同様に、手を洗う際には水が使えます。この設備は、長時間のフライトでの快適性を大きく向上させる要素となっています。
ホンダジェットの内装で最も特徴的なのは、自動車のような感覚でカスタマイズできる豊富な選択肢です。2014年の量産初号機公開時からボディーカラーを5色展開するなど、バイクや自動車のようなアプローチを取っています。
最新のElite IIでは、特別色の「Black Edition」を新設し、内装にはグレーを基調にした「スチール」と暖かみのあるベージュを基調にした「オニキス」の2種類が加わりました。機内通路の床材も従来のカーペットに加え、木目調のデザインが選択可能になっています。
扉から入った正面にはオプションでギャレーを設置でき、コーヒーメーカーなどもレイアウト可能です。このスペースはシートにも変更できる柔軟性があり、用途に応じた最適な配置が可能です。
読書灯のオン・オフなどはスマートフォンやタブレットの専用アプリで操作でき、現代的なデジタル機能も充実しています。Wi-Fiも利用可能で、空の上でもビジネスや娯楽を継続できる環境が整っています。
ホンダジェットの内装は、優れた燃費や性能、高精度な外観と共に、空間デザインや乗り心地、室内騒音など全ての要素が結果的に高級感に関係しています。自動車メーカーならではの発想で設計された内装は、従来の航空機の常識を覆す革新的な空間を創出し、「空飛ぶスポーツカー」という愛称にふさわしい魅力を備えています。