ホンダの第二世代ハイブリッドシステム「i-DCD」は、1モーター・ハイブリッドシステムとして開発されました。このシステムの最大の特徴は、高出力モーター内蔵7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用していることです。
DCTは奇数段用と偶数段用の2系統のギアセットとクラッチを持ち、クラッチを交互に接続することで変速を行います。この構造により、マニュアルトランスミッションのような高い伝達効率と、鋭いレスポンスやダイレクト感のある加速を実現しています。
しかし、この構造こそが立ち往生の根本的な原因となっています。DCTは本質的にマニュアルトランスミッションと同じクラッチ機構を持つため、渋滞時には機械が半クラッチ操作を延々と繰り返すことになります。
特に問題となるのは、ホンダのi-DCDが乾式クラッチを採用していることです。乾式クラッチは湿式クラッチと比較して温度に対する許容度が低く、長時間の渋滞や坂道走行で高温になりやすいという致命的な弱点があります。
立ち往生が発生するメカニズムは以下の通りです。
初期段階:ハイブリッドモード
中期段階:バッテリー消耗
最終段階:熱負荷限界
この現象は特に以下の条件で発生しやすくなります。
i-DCDシステムを搭載し、立ち往生のリスクがある車種は以下の通りです。
主要対象車種
これらの車種は2024年8月のお盆休み中にも複数の立ち往生事例が報告されており、SNSでは「複数台連続でヴェゼル(先代)が止まっている」という投稿が相次ぎました。
過去の主要事例
特に注目すべきは、これらの事例がすべて交通量の多い時期や場所で発生していることです。高速道路の本線上での立ち往生は、後続車にとって極めて危険な状況を作り出します。
i-DCD搭載車のオーナーが実践できる予防策は限られていますが、以下の方法が効果的とされています。
予防策
対処法
しかし、これらの対策も根本的な解決にはならず、構造上の限界を完全に回避することは困難です。
この問題は単にホンダだけの問題ではなく、DCT技術全体の課題を浮き彫りにしています。実際に、海外メーカーでも同様のクラッチトラブルが報告されており、フォルクスワーゲンやアウディでもDCT関連のリコールが発生しています。
業界への影響
ホンダの対応
現在のホンダは、i-DCDシステムを廃止し、日産のe-POWERに近いシリーズハイブリッドシステムに移行しています。新世代のハイブリッドシステムでは、この立ち往生問題は基本的に解決されています。
消費者への教訓
この問題は「日本の道路事情を全く考慮していない欠陥品」という厳しい評価を受けており、今後もSNSを賑わすネタとして継続する可能性が高いとされています。自動車メーカーにとって、技術的な優秀さだけでなく、実際の使用環境への適応性がいかに重要かを示す事例となっています。