HKSのマフラーを付けるだけで音が良くなると思っているなら、純正比4.8kgの軽量化がGR86のコーナリングを変えることを知っておいてください。
2021年10月にデビューした2代目GR86(型式:ZN8、エンジン:FA24)には、HKSから現在4種類のマフラーが展開されています。それぞれ「サウンドの派手さ」「重量」「価格」のバランスが大きく異なるため、目的に合わない選択をすると後悔につながります。
まずラインナップ全体を整理しましょう。
| モデル名 | 重量 | 近接排気音 | テール形状 | 価格目安(実売) |
|---|---|---|---|---|
| Hi-Power SPEC-L II for CUP | 7.8kg | 89dB | Φ94 右1本出し | 約15万円前後 |
| Hi-Power SPEC-L II(左右出し) | 11.4kg | 88dB | Φ94 左右出し | 約14万円前後 |
| LEGAMAX Premium | 未公表 | 非公開 | Φ124 左右出し | 約13万円前後 |
| LEGAMAX Sports | 未公表 | 非公開 | Φ100 左右出し | 約15万円前後 |
純正マフラーの重量は16.2kgです。Hi-Power SPEC-L II for CUPの7.8kgと比較すると、差はなんと8.4kg。これはおよそ2リットルのペットボトル4本分の重量に相当します。
GR86のリアオーバーハング(後輪より後ろの部分)は、ハンドリングに直結する重要な部位です。そこから8kg以上の重量が消えるという変化は、スプリングやダンパーの交換と並ぶほどのインパクトがあります。つまり「サウンドだけが変わる」わけではありません。これが重要なポイントです。
一方でLEGAMAX Premiumは、静粛性を重視した設計で街乗り中心のオーナーに向いています。HKSの公式動画でも、同じGR86でのサウンド聴き比べが公開されており、4モデルの音質の差は非常に明確です。購入前に必ず確認することをおすすめします。
参考:GR86用 HKS マフラー 全4種サウンド比較動画(HKS公式YouTube)
HKS Muffler Sound Compilation - HKSマフラー全4種 サウンド聴き比べ(GR86/BRZ)
「マフラーを換えると速くなる」という話を聞いたことがある方は多いと思います。しかし正確には、2つの異なるルートで走りが変化します。
1つ目は「排気効率の向上によるパワーアップ」、2つ目は「重量配分の最適化によるハンドリング向上」です。HKSのHi-Power SPEC-L IIシリーズは、この両方を狙って設計されています。
排気効率の面では、FA24エンジンに最適なパイプ径(Φ65→Φ50.8×2)を採用しています。「パイプは太ければ良い」と思われがちですが、NAエンジンでは太すぎると排気の流れが遅くなりトルクが下がります。HKS社内のシャシーダイナモ計測では、3速・20kW負荷時に純正マフラーが7.58秒かかる加速区間を、SPEC-L II for CUPは7.20秒で到達しており、加速性能の向上が確認されています。
重量配分の面では、純正マフラーのリアバンパー付近にあるメインサイレンサーが10.5kgあるのに対し、SPEC-L II for CUPでは同部位が2.7kgに激減しています。これは純正の約25%の重量です。重量物がリアオーバーハングから消えることで、コーナリング時のヨー慣性モーメントが低減し、向き変えが軽快になります。感覚的には「車が自分の意志通りに動く感触」が増す、と表現するオーナーが多いようです。
これは使えそうです。
ただし、重量軽減の恩恵をフルに引き出すには、足回りの状態が前提になります。へたったショックアブソーバーのままでは、マフラー交換による変化が体感しにくいこともあります。マフラーと合わせてサスペンションのコンディション確認も検討する価値があります。
参考:HKS公式 Hi-Power SPEC-L II for CUP 詳細スペックページ
Hi-Power SPEC-L II for CUP:GR86 詳細ページ(HKS公式)
「社外マフラーは車検が不安」という声をよく聞きます。結論から言うと、現行のHKSマフラーはすべて車検対応品です。
ただし「車検対応品である」という事実と「何も考えなくていい」はイコールではありません。ここが見落としがちなポイントです。
まず仕組みを理解しておきましょう。2010年4月1日以降に製造された普通車は、近接排気騒音が96dB以下であれば保安基準適合となります。HKSのGR86用マフラーは最大で89dBに設定されており、この基準を十分にクリアしています。GR86純正マフラーの近接排気音は82dBですので、7dBの増加にとどまります。
車検対応の証となるのが「JQRプレート」です。これはJQR(一般財団法人日本自動車用品・部品認定機構)が、マフラーの消音性能を第三者として確認したことを示す認証プレートです。HKSのGR86用マフラーには認証番号(例:JQR30233151)が付与されています。
注意点が2点あります。1点目は「劣化による音量増加」です。マフラー内部の消音材が走行距離と共に劣化すると、購入時より音が大きくなる場合があります。5万km以上走行したマフラーは、念のため専門ショップで音量チェックを受けることが安心です。2点目は「アプライドモデルの確認」です。SPEC-L II for CUPは「アプライドA-E型適合・AT車適合外」と明記されています。F型以降やAT車に誤って適合表外の品番を購入すると、取り付けができない場合があります。必ず車検証の型式と年式を確認してから購入しましょう。
参考:HKS マフラーと車検対応についての公式解説
HKS公式 マフラー車検対応へのこだわり(HKS公式)
HKSのGR86用マフラーには、リアピースのみを交換するモデルと、センターパイプ(中間パイプ)からセットで交換するモデルがあります。この違いは、取り付け工賃に直結します。
LEGAMAX PremiumやLEGAMAX Sportsはリアピース交換が基本で、工賃の目安は5,000〜8,000円程度です。一方、Hi-Power SPEC-L IIシリーズはセンターパイプから交換するため、工賃は8,000〜20,000円程度になります。トータルコストで考えると、マフラー本体代(実売14〜15万円)+工賃(1〜2万円)の合計15〜17万円前後が現実的な予算感です。
工賃の差は作業内容の差です。
DIYで取り付ける場合は、ジャッキとリジッドラック(ウマ)が必須となります。GR86はリアメンバー付近にパイプが通る構造上、車体をある程度しっかり持ち上げないと作業スペースが確保できません。また、年式が新しいGR86でも、ボルトやガスケットが固着している場合があるため、ブレーカーバーや貫通ドライバーなどの工具も準備しておくと安心です。
プロに依頼する場合は、オートバックスやイエローハットなどのカー用品店でも取り付けを受け付けています。ただしHKSのような高品質パーツの場合、取り付け実績の多い専門ショップを選んだほうが、ガスケットの向きや締め付けトルクなど細部の管理が丁寧です。取り付け後は必ずアイドリング状態で排気漏れがないか確認することが基本です。
参考:GR86へのHKS Hi-Power SPEC-L IIマフラー装着事例
GR86にHKSハイパワーSPEC-LⅡマフラーを装着(クラフトスポーツ 鈴鹿店)
GR86でサーキット走行を楽しむオーナーの間で、特に注目されているのがHi-Power SPEC-L II for CUPです。このモデルが一般的な「社外マフラー」と一線を画す理由は、「TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ CUP(PROFESSIONAL Series)指定部品」に認証されているという事実にあります。
GR86/BRZカップとは、TGRが主催する一車種ワンメイクレースです。参加車両に使用できるパーツは厳しく規定されており、その指定部品に選ばれたということは、レースフィールドでの実用性と信頼性がHKS内部だけでなく第三者機関によっても認められたことを意味します。認証番号はT.R.A.240319-174で、2025年シーズンも有効です。
サーキット走行での軽量化効果は、公道以上に体感しやすいものです。
特に、for CUPモデルの特徴的な設計が「重量物の車体中心への集約」です。リアオーバーハングにある重量物を最小化することで、コーナリング時のヨー慣性モーメントが下がります。これはF/Rの重量バランスを整えることとは別の効果で、「回転慣性」を下げることで、ターンインからの向き変えがシャープになります。タイムアタックのような状況では、この差がラップタイムに直結します。
ただし、一点だけ注意が必要です。for CUPモデルはAT車には適合していません。また地上高を純正より7mm稼いでいますが(140mm確保)、車高調でローダウンを施している場合は最低地上高が変わりますので、別途確認が必要です。サーキット仕様への第一歩としてマフラーを検討している場合、for CUPは費用対効果の高い選択肢のひとつです。
参考:HKS公式 GR86 エキゾーストチューニング ラインナップ一覧
GR 86 エキゾーストチューニング ラインナップ(HKS公式)