トヨタが2023年12月に発表したハイラックスハイブリッド48Vは、同社のピックアップトラックとして初めて電動化を実現したモデルです。このシステムは、従来の2.8リッター直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンに、コンパクトなモータージェネレーターと48Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用しています。
エンジン単体では最高出力204馬力(150kW)、最大トルク500Nmを発生し、これに加えてモータージェネレーターが最大12kWの出力と65Nmのトルクをアシストします。この組み合わせにより、発進時の加速性能が向上し、同時に燃費効率も最大5%改善されています。
特筆すべきは、48Vバッテリーがリアシート下にコンパクトに収納されており、キャビンスペースを犠牲にすることなく電動化を実現している点です。また、モータージェネレーターが常にエンジンに接続されているため、アイドリングストップからの復帰が素早く静かに行われ、快適性が大幅に向上しています。
ハイラックスハイブリッド48Vは、電動化によってオフロード性能がさらに強化されています。最も注目すべき改良点は、エンジンのアイドリング回転数が従来の720rpmから600rpmに低下したことです。これにより、低速域でのトルク制御がより精密になり、岩場や急勾配での走破性が向上しています。
マルチテレインセレクトシステムには6種類のドライブモードが用意されており、砂地、岩場、雪道、泥道などの様々な路面状況に対応できます。さらに「オート」モードでは、センサーが路面状況を自動検知して最適な設定に調整する機能も搭載されています。
防水性能も強化されており、バッテリーやDC-DCコンバーターなどの電装部品の防水対策により、渡河性能は最大700mmの深さまで対応可能です。これは従来のディーゼルモデルと同等の性能を維持しており、ハイブリッド化による実用性の低下は一切ありません。
最低地上高310mm、アプローチアングル29度、ディパーチャーアングル26度という基本的なオフロード性能も維持されており、最大積載量1000kg、牽引能力3500kgという実用性も変わりません。
ハイラックスハイブリッド48Vの価格は、欧州市場において約5万ユーロ(約825万円)からとなっています。英国市場では4万9640ポンド(約970万円)から販売されており、従来のディーゼルモデルと比較して約100万円程度の価格差となっています。
現在のところ、このハイブリッドモデルは欧州市場専用として展開されており、2024年半ばから順次販売が開始されています。日本市場への導入については、現時点で公式な発表はありませんが、トヨタの電動化戦略の一環として将来的な導入の可能性は十分に考えられます。
グレード展開については、英国ではインヴィンシブルXダブルキャブのみに設定されており、最上級グレードとしての位置づけとなっています。ボディタイプはダブルキャブ(4ドア)のみで、シングルキャブやエクストラキャブへの設定は現在のところありません。
ハイラックスハイブリッド48Vの内装は、SUV同等の上質な仕上がりとなっており、ピックアップトラックとしては非常に高い快適性を実現しています。ダッシュボードには8インチのマルチインフォメーションディスプレイが装備され、最新のトヨタスマートコネクトシステムが搭載されています。
先進運転支援システムとしては、最新の「Toyota Safety Sense」テクノロジーが採用されており、衝突回避支援システム、車線逸脱警報、アダプティブクルーズコントロールなどの機能が標準装備されています。これらの機能により、長距離運転時の疲労軽減や安全性の向上が図られています。
コネクティッド機能も充実しており、スマートフォンとの連携によるリモート操作や車両状態の確認、ナビゲーションシステムとの連動などが可能です。また、ハイブリッドシステムの動作状況やバッテリー残量なども、専用のディスプレイで確認できるようになっています。
ハイラックスハイブリッド48Vの登場は、ピックアップトラック市場における電動化の先駆けとなる重要な意味を持っています。現在、世界的にピックアップトラックの電動化が進んでおり、フォードF-150ライトニングやGMのシルバラードEVなど、フル電動モデルも登場していますが、ハイラックスのマイルドハイブリッドアプローチは実用性と環境性能のバランスを重視した現実的な選択と言えるでしょう。
特に、商用利用が多いピックアップトラック市場において、充電インフラの制約や航続距離の問題を考慮すると、マイルドハイブリッドシステムは非常に合理的なソリューションです。燃費改善効果は5%と控えめですが、実用性を損なうことなく環境負荷を軽減できる点は大きなメリットです。
今後、トヨタはこの48Vマイルドハイブリッドシステムを他のピックアップモデルや商用車にも展開していく可能性が高く、ハイラックスはその先駆けとしての役割を果たしています。また、将来的にはプラグインハイブリッドやフル電動モデルの開発も予想され、ハイラックスの電動化ラインナップはさらに充実していくことが期待されます。
日本市場への導入については、国内の環境規制の動向や市場ニーズを踏まえて検討されると考えられますが、トヨタの電動化戦略の重要な一翼を担うモデルとして、近い将来の導入が期待されています。