トヨタ・ハイエースは2024年1月に一部改良を実施し、人気のアースカラーパッケージを新設定したものの、すぐに受注停止状態となりました。この状況は2025年7月現在も続いており、販売店では「ハイエース ワゴンは受注停止の状態です」と案内されている状況です。
受注停止の主な要因として、2024年1月27日に発覚した豊田自動織機製ディーゼルエンジンの「国内排出ガス認証不正問題」が挙げられます。該当するエンジンを搭載したハイエースの出荷が一時停止され、2月27日に解除されたものの、その影響は長期化しています。
さらに、コロナ禍によるアウトドアレジャーブームの影響で、ハイエースの需要が急激に増加したことも受注停止の背景にあります。従来のビジネスユーザーに加え、キャンプや趣味での利用者が大幅に増加し、供給が需要に追いつかない状況が続いています。
関東圏のトヨタ販売店スタッフによると、「現在、新型のハイエースは受注が停止している状態で、新たに注文をお受けすることができなくなっています」と説明されています。特に人気のアースカラーパッケージについては、「アウトドア人気が高いことから、多くの反響を受けているだけに、ご案内できないのが心苦しい状況」とのことです。
販売店では多くの問い合わせを受けているものの、追加販売などの情報がなく、顧客には待機していただく状況が続いています。一部の販売店では「少し前に追加販売枠が割り当てられましたが、すぐに完売しました」という状況も報告されており、わずかな販売枠も即座に埋まってしまう状況です。
法人顧客からの需要も依然として高く、「ハイエースは法人のお客様からのオーダーが常にあります」という状況のため、個人顧客にとってはさらに購入が困難な状況となっています。
新車の受注停止により、中古車市場では価格の高騰が続いています。ハイエースを専門に取り扱う中古車販売店では、「程度の良い個体は新車価格を上回ることもありますが、中古車相場に応じた価格です」と説明されています。
特に高年式・低走行車は「足が速く」、すぐに売れてしまう状況が続いています。これは「すこしでも早く欲しい」という購入希望者が多いためで、新車の供給が落ち着くまでこの傾向は変わらないと予想されています。
中古車価格の高騰は以下の要因によるものです。
ハイエースのリセールバリューは5段階評価で最高の5点とされており、商用車でありながら使われ方が粗く走行距離が伸びても高値で売却できる特徴があります。
購入希望者の対応策として、販売店担当者は以下のような状況を報告しています。
フルモデルチェンジ待ち
「フルモデルチェンジの噂が広がり、新型が出るまで待つというお客様もいます」という状況があります。ただし、「直近でも一部改良が行われており、フルモデルチェンジの情報の信憑性については疑問があります」とのことで、確実性は低いとされています。
中古車への移行
「走行距離が20万km以上であったり、故障したお客様などは、待てずに中古車を選ぶケースもあります」という状況で、緊急性の高い顧客は中古車市場に流れています。
メーカー認定中古車の活用
販売店では「どうしてもという場合はメーカー認定中古車をご案内していますが、こちらも高年式・低走行車は足が速く」という状況で、認定中古車も選択肢の一つとなっています。
競合車種の検討
ライバル車種である日産キャラバンも選択肢として挙げられます。ハイエースとキャラバンは荷室の広さや床の高さなどの実用性に大差はありませんが、トランスミッションの違い(ハイエースは6速AT、キャラバンは7速AT)などの差があります。
受注再開の見通しについて、関西圏のトヨタ販売店スタッフは「再開の目処は現在、多くの情報が入ってきておりませんが、9月か10月の秋口には何かしらのご案内ができるのではないかと思います」と2024年時点で話していましたが、2025年7月現在も受注停止状態が続いています。
この状況は商用車市場全体に影響を与えており、以下のような変化が見られます。
市場シェアへの影響
ハイエースは従来7割を超える市場シェアを誇っていましたが、受注停止により競合車種への流入が予想されます。日産キャラバンは先代では1:9のシェアだったものが、フルモデルチェンジ後は2.5:7.5程度まで改善したとされています。
カスタマイズ市場への影響
ハイエースは「定番品の安心感、信頼性の高さ、カスタマイズパーツの豊富さ」が人気の理由とされており、受注停止はカスタマイズ業界にも影響を与えています。ドレスアップパーツの充実度ではハイエースが圧倒的に有利とされているため、この分野での需要も中古車市場に流れています。
海外市場への影響
「ハイエースが盗難車のBest 10に入るなど、世界的に評価されている」状況で、海外輸出需要も高く、「中古の輸出に際してはバッチをレジアスエースからハイエースに変えないと値段が付かない」という話もあるほどです。
今後の見通しとしては、新型が登場したとしても「既にオーダー待ちの状態が続くと思われます」という状況で、根本的な解決には時間がかかると予想されます。商用車という特性上、生産能力の急激な拡大は困難であり、需給バランスの改善には長期間を要する可能性が高いでしょう。