グローバルハイエースBEVコンセプト次世代商用車

トヨタが発表したグローバルハイエースBEVコンセプトは、従来のハイエースを大きく進化させた次世代商用車として注目を集めています。電動化による革新的な機能と実用性を両立したこの車両は、商用車の未来をどう変えるのでしょうか?

グローバルハイエースBEVコンセプト革新

グローバルハイエースBEVコンセプトの革新ポイント
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電動化による機能向上

BEV化により静粛性と環境性能を大幅に向上

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大型化したボディサイズ

全長5,280mm×全幅1,950mm×全高1,990mmの堂々たるサイズ

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革新的な荷室設計

フラットフロアと3.5m長尺物積載可能な広大空間

グローバルハイエースBEVコンセプト基本スペック

2023年のジャパンモビリティショーで世界初公開されたグローバルハイエースBEVコンセプトは、トヨタ車体が手がける次世代商用車の決定版として大きな注目を集めました。このコンセプトカーは、海外で展開されている300系ハイエースをベースに、完全電動化を実現した革新的なモデルです。

 

ボディサイズは全長5,280mm、全幅1,950mm、全高1,990mmと、現行の200系ハイエースと比較して大幅に拡大されています。特に注目すべきは、これだけ大型化しながらも最小回転半径を5.5mに抑えている点で、これは現行のスーパーロング(6.0m)よりも優れた取り回し性能を実現しています。

 

荷室寸法は最大荷室長3,490mm、荷室幅1,715mm、荷室高1,270mmという広大な空間を確保。乗車定員は1名に特化することで、助手席エリアまでカーゴスペースとして活用し、約3.5mの長尺物積載を可能にしています。

 

グローバルハイエースBEV電動化メリット

電動化による最大のメリットは、床下に配置される大容量バッテリーによる重心の低下です。これにより走行安定性が大幅に向上し、商用車として重要な安全性能が強化されています。また、エンジンルームが不要になることで、同じ全長でもホイールベースを3,210mmまで延長でき、荷室スペースの拡大を実現しています。

 

BEV特有の静粛性は、住宅地での早朝・深夜配送や観光バス利用時の快適性向上に大きく貢献します。特に観光バスとして利用する場合、エンジンをかけたまま乗客を待つ必要がなくなり、無駄な排気ガス排出を削減できる環境メリットも注目されています。

 

バッテリー容量は用途に応じて1層構造と2層構造を選択可能な設計となっています。1層構造では車両重量を軽くして積載量を優先し、2層構造では航続距離を重視した運用が可能です。これにより、配達用貨物車、救急車、観光バスなど多様な用途に最適化できる柔軟性を持っています。

 

グローバルハイエース先進デザイン特徴

外観デザインは現行ハイエースのイメージを大きく刷新し、BEV特有のグリルレスフェイスを採用しています。トヨタの統一デザイン言語である「ハンマーヘッド」を採用したヘッドライトと、SUVを思わせる黒塗装のボディ下部が力強さとモダンさを演出しています。

 

セミボンネット型のボディ採用により、正面衝突時の衝撃吸収性能が大幅に向上。現行の200系ハイエースのようなキャブオーバー型と比較して、安全性の面で大きなアドバンテージを持っています。

 

リアは中央で縦に分割された観音開きドアを採用し、大型化したボディに対応した開口部を確保。床の高さも最適化され、重い荷物の積み下ろし作業負担を軽減する設計となっています。

 

インテリアでは、デジタルメーターパネルとダイヤル式シフトセレクターを採用。従来のシフトレバーを廃することで、運転席周りの空間効率を向上させています。助手席がないシングルシーター構成により、どのドアからもアクセス可能なウォークスルー設計を実現しています。

 

グローバルハイエースコネクティッド技術活用

配送業務の効率化を目指したコネクティッド技術の搭載が大きな特徴です。配送ルートの最適化システムにより、交通状況や配達先の在宅時間を考慮した効率的なルート案内を提供します。

 

荷物の積載位置表示機能では、次に配達する荷物が車内のどこに配置されているかをディスプレイで確認できます。これにより「荷物が見当たらない」という配送現場でよくある問題を解決し、配達効率の大幅な向上が期待されています。

 

再配達削減のための在宅時間連動システムも提案されており、配達先の在宅予定時間に合わせてルートを自動調整する機能も検討されています。これらの技術により、配送業界が抱える人手不足や効率化の課題解決に貢献することが期待されています。

 

荷物移動を支援する専用カートシステムも搭載され、重い荷物でも軽い力で移動できる設計となっています。車内に設置されたスライドレールにより、荷物ごと動かせるラックを備え、積み下ろし作業の負担軽減を実現しています。

 

グローバルハイエース市場展開予想と課題

現時点では海外市場への展開が優先される見込みで、日本市場への導入時期は未定となっています。ボディサイズが全長5,280mm、全幅1,950mmと日本の道路環境には大きすぎるという課題があり、国内展開には慎重な検討が必要とされています。

 

トヨタ車体の担当者によると、海外の多くの国では商用車のEV化を望む声が高まっており、そうした市場ニーズに応える形でのグローバル展開が計画されています。特に欧州市場では、メルセデス・ベンツ・スプリンターやフィアット・デュカトなどの競合車種と同様のL数字H数字表記によるボディサイズ展開も検討されています。

 

多彩なボディバリエーションとして、標準ボディのL1H1パネルバン、ガラス仕様のL1H1ガラスバン、ロングボディ・ミドルルーフのL2H2パネルバン、大人数送迎用のL2H2コミューター、救急車用のL2H3などが計画されています。

 

日本での現行200系ハイエースのEV化については、現時点では具体的な計画が発表されていません。しかし、2024年3月にトヨタ車体の意匠登録が特許庁で公開されており、市販化への期待が高まっています。また、2023年11月には300系ハイエースをベースとした水素エンジン搭載試作車も公開され、電動化以外の選択肢も検討されていることが明らかになっています。

 

商用車の電動化は世界的な潮流となっており、グローバルハイエースBEVコンセプトは、トヨタのマルチパスウェイ戦略の象徴として、多様なパワートレインによる幅広い顧客ニーズへの対応とカーボンニュートラル社会実現への貢献が期待されています。