
旧 [GeneLife Genesis2.0 ] 遺伝子検査キット ジーンライフ ジェネシス2.0
お酒を飲むとすぐに顔が真っ赤になる人を「フラッシャー」と呼びます。この体質の原因は、アルコールを分解する際に重要な役割を果たすALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)という遺伝子の働きが弱いことにあります。
参考)お酒を飲むと赤くなる?フラッシャー体質と食道がんの関係 - …
アルコールは体内に入ると、まずアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドという有害物質に分解されます。このアセトアルデヒドは発がん性を持つ物質で、通常はALDH2によって速やかに無害な酢酸へと分解されます。しかし、フラッシャー体質の人はALDH2の働きが弱いため、アセトアルデヒドが体内に長時間蓄積してしまい、毛細血管が拡張して顔が赤くなるのです。
参考)食道がん診療・飲酒後、顔が赤くなる人は食道がんになりやすい?…
日本人を含む東アジア人の35~45%がALDH2の不活性型遺伝子多型を持っており、欧米人と比較してフラッシャー体質の人が多い特徴があります。具体的には、日本人の約4割がお酒に弱い体質で、そのうち5~10%は全く飲めない下戸、30~40%が一般的にお酒に弱い人たちとされています。
参考)フラッシング反応 - Wikipedia
遺伝子型は3つのタイプに分類され、ALDH2の1型遺伝子を2本持つノンフラッシャー(活性型)、1型と2型を1本ずつ持つヘテロタイプ(フラッシングタイプ)、2型遺伝子を2本持つ完全欠損型があります。この遺伝子型は両親から受け継がれるため、体質は遺伝します。
参考)ALDH2の1型遺伝子を2本持っている人(ワイルドタイプ・ノ…
フラッシャー体質の人が飲酒を続けると、食道がんのリスクが著しく高まることが科学的に証明されています。その理由は、発がん性物質であるアセトアルデヒドが食道粘膜に長時間接触することにあります。
参考)食道がんについて; 症状から治療を中心に解説 - 広島市で内…
東京大学医科学研究所の研究によると、ALDH2とADH1Bのいずれも正常型の人が飲酒も喫煙もしない場合の食道がんリスクを1とした場合、この体質の人が飲酒と喫煙をすると3.44倍になります。しかし、ALDH2とADH1Bのいずれも欠損型の人(最悪の組み合わせ)のリスクは6.79倍となり、その体質の人が飲酒と喫煙を同時にすると、なんと189倍にまで跳ね上がることが明らかになっています。
参考)食道がんを防ぐ|くにちか内科クリニック
また、毎日1.5合以上飲酒するフラッシャーは、食道や下咽頭に発がんするリスクが極めて高いとされています。多目的コホート研究では、飲酒で顔が赤くなる体質のヘビースモーカーで、飲酒量が増えると食道がんリスクが高くなることが再確認されました。
参考)がんを防ぐ ー 食道がん|くにちか内科クリニック
喫煙と飲酒の相乗効果も見逃せません。愛知県がんセンターの大規模統合解析によると、喫煙も飲酒もしない人を基準として、喫煙者では2.77倍、飲酒者では2.76倍の食道がんリスクがあり、両方する人は8.32倍とリスクが高くなることが確認されています。さらに、1日の飲酒量が多く喫煙量も多い場合、食道がんリスクは16.8倍にまで上昇します。
参考)喫煙と飲酒は食道がんリスクを高め合う!(愛知県がんセンター)…
この研究により、日本人男性の食道がんの81.4%は喫煙または飲酒が原因で発生しており、たばことお酒の両方を止めることで食道がんの約8割を予防できることが分かっています。
自分がフラッシャー体質かどうかは、簡単な質問や自宅でできるテストで確認できます。
参考)お酒の強さは人それぞれ
最も簡単な方法は「簡易フラッシング質問紙法」です。以下の2つの質問のいずれかに「はい」と答えれば、フラッシャーと判定されます。
参考)あなたはフラッシャー? - ラッフルズジャーパニーズクリニッ…
注意すべき点は、若い頃は顔が赤くなっていたが、習慣的に飲酒を続けることで耐性ができ、現在は赤くならなくなった人もフラッシャーに該当することです。このような「過去のフラッシャー」も、アセトアルデヒドの分解能力は変わっていないため、食道がんのリスクは高いままです。
参考)食道がんの症状と検査、治療法|横浜市神奈川区横浜駅から徒歩3…
より正確に体質を知りたい場合は「エタノール・パッチテスト」が有効です。この方法は以下の手順で行います。
参考)お酒を飲める体質かどうかをチェックする「アルコールパッチテス…
貼った部分が赤くなっていれば「赤型体質」(フラッシャー)、変化がなければ「白型体質」(ノンフラッシャー)と判定されます。
最も正確な方法は遺伝子検査です。医療機関で受けられるALDH2遺伝子検査では、遺伝子型を正確に判定し、自分のアルコール体質を科学的に知ることができます。
参考)飲酒リスクと体質を正しく知る|アルコール遺伝子検査|日本橋人…
キリンホールディングス「お酒の強さは人それぞれ」では、エタノール・パッチテストの詳しい方法と注意点が解説されています
食道がんは初期段階ではほとんど自覚症状がないのが特徴です。がんが進行するにつれて、様々な症状が現れてきます。
参考)食道がん 全ページ:[国立がん研究センター がん情報サービス…
早期の症状として、飲食時の胸の違和感が最も注意すべきサインです。具体的には、飲食物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛む、熱いものを飲み込んだときにしみる感じがするといった症状があります。これらの症状は一時的に消えることもあるため、見逃されやすいという問題があります。
参考)胃がんと食道がんの前兆は?なりやすい人の特徴は?|文京区の白…
中期の症状として、がんが大きくなると食道の内側が狭くなり、飲食物がつかえる感覚が強くなります。げっぷが頻繁に出るようになり、次第に軟らかい食べ物しか通らなくなります。食事の量が減少し、体重減少が目立つようになります。
参考)食道がんの症状と原因: 初期症状・末期症状とげっぷ・喉の違和…
進行期の症状として、食道がんは周りの臓器に広がりやすい特徴があります。気管や気管支、肺、背骨、大動脈にがんが進行すると、咳、声のかすれ(嗄声)、胸や背中の痛みなどの症状が出現します。がんがさらに進行すると、食道を完全にふさいで水も通らなくなり、唾液も飲み込めず戻すようになります。
参考)食道がんの進行度 href="https://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/medical/esop/esop_06/" target="_blank">https://gisurg.kuhp.kyoto-u.ac.jp/medical/esop/esop_06/amp;#8211; 京都大学消化管外科
食道がんの9割を占める扁平上皮がんは、非常に進行が速いがんです。症状を自覚してから約3か月で水分が通りにくくなるまでに進行するケースもあり、初期での発見が難しくなっています。
5年相対生存率を見ると、Ⅰ期で80%程度、Ⅱ期で50%程度と低く、Ⅲ期で30%を下回り、Ⅳ期では10%に届きません。このデータからも、早期発見がいかに重要かが分かります。
参考)胃がん・食道がんの早期発見に胃カメラが有効な理由
フラッシャー体質の方が食道がんを予防するために最も重要なのは、禁煙と飲酒量の制限です。
参考)食道がん 過度な飲酒と喫煙習慣
禁酒と禁煙の相乗効果について、たばことお酒の両方を止めることで食道がんの約8割を予防でき、たばこだけあるいはお酒だけ止めることでも約6割の食道がんを予防できることが科学的に証明されています。特に、お酒に弱い人が酒を飲みながら喫煙すると飛躍的にリスクが上昇します。
飲酒量の具体的な目安として、節度ある適度な飲酒は1日平均エタノールで20グラム程度とされています。これは大体「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チュウハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」に相当します。フラッシャー体質の方は、この量でもリスクが高まるため、より慎重な飲酒が必要です。
栄養面での予防として、果物や緑黄色野菜を摂取することが重要です。ビタミンを摂取し、栄養状態を良好に保つことが食道がんの予防につながります。特に、抗酸化作用のある食品を意識的に取り入れることで、アセトアルデヒドによる細胞ダメージを軽減できる可能性があります。
生活習慣の改善として、熱い飲み物の摂取にも注意が必要です。熱い飲食物は食道粘膜を傷つけ、がんのリスクを高める可能性があります。また、胃の外科的切除歴がある方は、食道がんのリスクが上がることも知られています。
参考)https://www.kenkou-clinic.jp/_theme/images/topics/topics_13.pdf?ver=1751407562
若い頃に顔が赤くなっていたが、現在は飲酒しても赤くならなくなった「過去のフラッシャー」も、体質は変わっていないため、同様の予防対策が必要です。耐性ができて不快感がなくなっても、アセトアルデヒドの分解能力は改善していないため、食道がんのリスクは高いままであることを理解しておきましょう。
参考)健康に配慮した飲酒とは
本田クリニック「お酒を飲むと赤くなる?フラッシャー体質と食道がんの関係」では、フラッシャーと食道がんの関連について専門医が詳しく解説しています
食道がんの早期発見に最も有効な検査方法は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)です。バリウム検査と比較して、胃カメラは食道がんの発見率が9倍高いという報告があります。
参考)食道がんは初期症状がほばない?|喉のつかえ感はふじみ野 消化…
胃カメラ検査の優位性として、上部消化管内視鏡検査での食道がんの発見率は0.065%程度で、そのうち早期癌の割合は85%であったという報告があります。早期胃がんの5年生存率は90%以上と非常に高く、逆に進行してから発見されると治療も大がかりになり、予後も悪くなります。
参考)食道がんの検査方法と費用とは?バリウム・内視鏡、他
NBIによる精密検査として、高画質の胃カメラ検査とNBI(狭帯域光観察)を併用することで、食道がんを早期発見できれば、30分から1時間程度の内視鏡手術で治療ができ、抗がん剤や放射線治療の必要がない場合もあります。NBIは粘膜の微細な血管構造や表面構造を強調して観察できる技術で、早期の食道がんを高い精度で発見できます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a21f6ffd2fde732e7ccb9bfff998aae7440d63be
検査の頻度と対象者について、喫煙歴や大量飲酒、フラッシャー体質の方は、定期検査を行うことで早期発見が期待できます。特に、飲酒・喫煙の習慣がある人は、年1回の定期的な胃カメラ検査が食道がんの早期発見・早期治療につながります。症状がないうちに胃カメラでチェックすることが重要です。
参考)【医師出演】食道がんの症状は?しみる、つかえる、声のかすれに…
食道の観察方法として、胃内視鏡は必ず食道を通過して胃に挿入され、また体外へ抜かれるときにも食道を通過するため、最低2回は食道を観察することになります。先進的なクリニックでは、この食道観察を3回に増やすことにより食道がんの早期発見に努めています。
参考)食道がんの症例写真と解説
内視鏡治療の適応として、食道がんを内視鏡治療で根治が可能な段階とは、がんが粘膜内にとどまっている場合です。食道がんは胃がんよりも早い段階での早期発見が必要とされています。食道がんの外科手術は開胸術が選択されることがあり、患者さんへの影響が大きな手術の一つであるため、内視鏡治療で完結できることの意義は非常に大きいのです。
国立がん研究センター「がん情報サービス 食道がん」では、食道がんの検査方法や治療について信頼性の高い情報が提供されています
車を運転する方にとって、フラッシャー体質と飲酒の関係は特に重要な問題です。フラッシャー体質の方は、少量の飲酒でも体内にアセトアルデヒドが蓄積しやすく、アルコールの影響が長時間持続する可能性があります。
アルコールの代謝速度は個人差が大きく、特にALDH2の働きが弱いフラッシャー体質の方は、通常の人よりもアルコールの影響が長く残ります。飲酒後の運転は法律で禁止されているだけでなく、フラッシャー体質の方は特に慎重な判断が必要です。
飲酒後に顔が赤くなる、動悸がする、眠気が強くなるといったフラッシング反応は、体がアルコールを適切に処理できていないサインです。このような症状がある間は、判断力や反応速度が低下している可能性が高いため、運転は控えるべきです。
また、フラッシャー体質の方は、飲酒習慣によって耐性ができ、不快な症状が出にくくなることがありますが、アルコール代謝能力自体は改善していません。症状が軽くなったからといって安全というわけではなく、体内でのアルコール処理には依然として時間がかかります。
健康管理の観点からも、フラッシャー体質のドライバーは定期的な健康診断と胃カメラ検査を受けることが推奨されます。特に、仕事で長時間運転する職業ドライバーの方は、ストレス解消のための飲酒習慣が身につきやすいため、飲酒量の管理と定期検査が重要です。
参考)食道がんの早期発見と予防
食道がんは進行が速く、症状が出た時には既に進行していることが多いがんです。早期発見できれば内視鏡治療で完治が可能ですが、進行すると大がかりな手術が必要になり、仕事への影響も大きくなります。フラッシャー体質であることを自覚し、適切な健康管理を行うことが、長く安全に運転を続けるための重要な要素となります。
国立がん研究センター「フラッシング反応別にみた飲酒とがん罹患リスクとの関連」では、フラッシング反応とがんリスクの関連について大規模研究のデータが公開されています