シエナは1997年に北米市場でデビューし、トヨタ「プレビア」の後継モデルとして位置づけられました。プレビアは日本国内では「エスティマ」として親しまれ、その流麗なスタイリングと革新的なパッケージングで多くのファンを獲得していました。
初代プレビアは1990年にデビューし、ボディサイズは全長4750mm×全幅1800mm×全高1780mm-1820mmと、現在のノア/ヴォクシーとアルファード/ヴェルファイアの中間サイズでした。特筆すべきは、ミッドシップレイアウトという独特な設計により、優れた重量配分と走行性能を実現していた点です。
しかし、北米市場では戦略の転換を余儀なくされ、2000年1月に2代目と入れ替わる形で販売終了となりました。その後継として登場したシエナは、より一般的なフロントエンジンFFレイアウトを採用し、北米市場におけるメンテナンスの容易さやコスト面での利点を重視した設計となっています。
現行4代目シエナは2020年に登場し、最新の「TNGA GA-K」プラットフォームを採用しています。ボディサイズは全長5173mm×全幅1994mm×全高1776mmという堂々たるフルサイズミニバンで、アルファードよりもさらに大きなボディを持ちます。
パワートレインは全車2.5リッターのハイブリッドシステム「THS-II」を搭載し、システム総合最高出力245馬力を発生します。駆動方式は2WD(FF)と、後輪をモーターで駆動するAWD仕様「E-Four」を選択可能となっています。
2025年モデルでは、さらなる改良が加えられ、カナダ市場では510万円からの価格設定で発表されました。注目すべき装備として、車内に掃除機と冷蔵庫が搭載されるなど、北米ユーザーのライフスタイルに合わせた実用的な機能が充実しています。
デザイン面では、日本の新幹線からインスピレーションを受けて設計されており、フロントはSUVを意識した造形となっています。フロントロアグリルは大型でワイルドな印象を与え、従来のミニバンとは一線を画すスタイリッシュな外観を実現しています。
シエナの日本導入については、自動車業界関係者の間で長らく議論されてきました。特に2020年の第4世代発表時から「日本導入を期待」の声が多数あり、次期型では日本発売の実現可能性がさらに高まっているとの見方があります。
日本導入が期待される背景には、エスティマが2019年10月に生産終了となって以来、トヨタのラインナップにエスティマクラスのミニバンが存在しないことがあります。アルファード/ヴェルファイアは高級志向が強く、ノア/ヴォクシーは一回り小さいため、その中間を埋めるモデルとしてシエナへの期待が高まっています。
しかし、シエナの全幅1994mmという寸法は、日本の道路事情や駐車場事情を考慮すると課題となる可能性があります。初代エスティマでは、車幅を狭めた派生モデル「エスティマ エミーナ」「エスティマ ルシーダ」が登場した歴史もあり、日本導入時には何らかの対応が必要かもしれません。
シエナ以外にも、エスティマの後継候補として注目されているモデルがあります。その一つが、東南アジア市場向けに販売されている「イノーバゼニックス」です。
イノーバゼニックスは、ボディサイズが全長4760mm×全幅1850mm×全高1790mmと、かつてのエスティマ(4795×1800×1760)に近いサイズ感を持っています。TNGAプラットフォーム(GA-C)を採用し、現行プリウスと同じ2.0リッターハイブリッドシステムを搭載しています。
エクステリアは、フロントボンネット先端を持ち上げてフロントデザインを強調した、ミニバンとSUVを融合したクロスオーバーのようなスタイリングが特徴的です。日本人からすると、エスティマに現代のSUV顔がついたような印象で、次期エスティマのデザイン方向性を示唆している可能性があります。
また、過去には2017年の東京モーターショーで「ファインコンフォートライド」というコンセプトカーが出展されました。この車両は燃料電池を搭載した3列6人乗りミニバンで、「次期エスティマを示唆したもの」として注目を集めましたが、結果的に市販化には至りませんでした。
次期シエナのデザインについて、カーデザイナーの「Theottle」氏が2025年2月13日に公開した予想レンダリングが話題を呼んでいます。このレンダリングでは、現在のトヨタ車に共通する「ハンマーヘッド」デザインがフロントマスクに採用されており、最新の「クラウン」シリーズや「プリウス」にも通じる意匠となっています。
全体のシルエットは、北米で「クラウン シグニア」として販売される「クラウン エステート」からインスピレーションを得ており、シャープなヘッドライトユニットと滑らかなサイドのキャラクターラインが、従来のミニバンとは一線を画す流麗なフォルムを描き出しています。
リアには薄型の横一文字LEDテールランプが配置され、先進的でワイドな印象を強調しています。このデザインは、新型シエナが単なるミニバンにとどまらず、高級感と実用性を兼ね備えたモデルになる可能性を示唆しています。
エスティマの復活については、一部のSNSなどで、トヨタ初のBEV(バッテリーEV)ミニバンとして、あるいはPHEV(プラグインハイブリッド)を搭載して2026年以降に登場する可能性が噂されています。しかし、現在のところトヨタから具体的な復活計画は公式発表されておらず、確度は低いままです。
ただし、2025年秋開催予定の「ジャパンモビリティショー」で、トヨタが新たなミニバンのコンセプトカーやプロトタイプを出展する可能性があり、今後の動向に注目が集まっています。
エスティマ後継としてのシエナの日本導入、または新たなエスティマの復活、いずれにしても日本のミニバン市場に新たな選択肢をもたらす可能性があり、今後の展開から目が離せません。