エンジンブレーキを頻繁に使用することで最も深刻な影響を受けるのがトランスミッションです。特に現代の車に多く搭載されているCVT(無段変速機)は、エンジンブレーキの多用により大きな負荷がかかります。
CVTは金属ベルトとプーリーで構成されており、強いエンジンブレーキをかけると以下のような負担が生じます。
整備士によると、ブレーキパッドの交換費用は数千円から数万円程度ですが、CVTの交換となると数十万円の費用がかかってしまいます。この費用対効果を考えると、エンジンブレーキの過度な使用は経済的にも大きなリスクとなります。
一般的にエンジンブレーキは燃費向上に効果があるとされていますが、使いすぎると逆効果になる場合があります。エンジンブレーキ中は確かに燃料カットが作動し、理論上は燃料消費がゼロになります。
しかし、以下の状況では燃費が悪化する可能性があります。
特に平地での不必要なエンジンブレーキ使用は、車速が下がりすぎてアイドリング回転付近まで低下すると、エンジンは停止を防ぐため通常通りに燃料噴射を復帰させます。これにより、期待していた燃費向上効果が相殺されてしまうのです。
最新の電子制御車では、エンジンブレーキ中にスロットルを微調整して減速量を最適化し、より長い惰性走行を可能にする制御が行われています。
エンジンブレーキの過度な使用は、安全運転の観点からも問題があります。最も重要な問題は、ブレーキランプが点灯しないことです。
後続車への影響:
車体安定性への影響:
特にバイクの場合、強いエンジンブレーキによるスリップは大惨事に発展する危険性があるため、エンジンブレーキのみでの強い減速は控えるべきとされています。
エンジンブレーキを適切に使用するためには、使用場面と方法を正しく理解することが重要です。
推奨される使用場面:
避けるべき使用方法:
現在のAT車では、速度に合わせてコンピューターが自動で変速を調整するため、エンジンブレーキを適度に使用する分には車への過度な負担は与えないとされています。ただし、一昔前の電子制御ではない車の場合は、オーバードライブをオフにしてから段階的に変速する方が負担が少ないとされています。
エンジンブレーキ使用時に発生する「ブーン」という大きな音は、多くのドライバーが不安に感じる要素です。この音の正体と車への影響について詳しく解説します。
音の発生メカニズム:
この音は正常な現象であり、エンジンブレーキを多用したとしても直ちに壊れることはありません。しかし、以下の点には注意が必要です。
エンジン内部抵抗の約30%をポンピングロスが占めており、これがエンジンブレーキの主要な減速力となっています。適切な使用であれば問題ありませんが、過度な使用は避けるべきです。