デヴェル16の価格が極めて高い理由は、その開発過程にあります。ドバイに本社を置くデヴェル・モータース社によって2006年に開発がスタートし、15年以上の長期間をかけて設計・製造されてきました。2013年のドバイ国際モーターショーで初披露されたコンセプトモデルから、2017年の量産版プロトタイプ、そして2022年の日本初上陸まで、継続的な改修と最適化が行われています。
この長い開発期間と高度なエンジニアリングが、デヴェル16の値段を決定する主要因となっています。パワートレインだけでも、スティーブ・モリス・エンジンズと共同開発した最大出力5,007馬力、最大トルク519.4kgmのV16クアッドターボエンジンに対して、膨大な研究投資が必要でした。さらに、公道走行対応のためにシボレー・コルベットC8ベースの2,000馬力V8ツインターボ仕様も同時開発され、複数ラインナップの製造コストがデヴェル16の値段に反映されています。
限定生産ではなく、オーダーメイド販売のためのカスタマイズコスト、日本の厳格な規制に対応させるための技術開発費、そして希少性を維持するための戦略的価格設定が、最終的な値段を形成しています。
デヴェル16には複数のパワートレインオプションが存在し、値段と性能は密接に関連しています。最もエントリーレベルのV8ツインターボ搭載モデルは1,600万ドル(約1億8,000万円)の価格設定で、最高出力2,000馬力、最大トルク1,604Nmを発揮します。このモデルは公道での走行が可能で、日本への輸入も実現した実績があります。
次のグレードはV16クアッドターボエンジン搭載モデルで、1,800万ドル(約2億200万円)の値段となります。このバージョンは最高出力3,000馬力を発揮し、サーキット専用として設計されました。さらに最上位の完全版V16クアッドターボエンジン搭載モデルは、理論値5,000馬力以上を発生し、最高速度560km/hに到達可能とされています。
値段の差異は単なる出力の違いではなく、エンジン構成、トランスミッション、冷却システム、エアロダイナミクスなど、車全体の統合設計に影響します。例えば、5,000馬力モデルを支えるため、タイヤの仕様について開発者のラシッド・アル・アッタリ氏自身が「懐疑的な意見を持つほど」の技術的課題があり、これが値段に反映された高度な部品選定につながっています。
デヴェル16の日本向け価格は約10億円という桁外れの金額に設定されており、これは消費税を含んだ最終価格です。この値段を実現した最初の購入者は、芝浦グループホールディングスの元会長である新地哲己氏で、2022年6月の芝浦グループ新社屋完成式典で世界初公開された日本仕様車が、彼の所有モデルとなります。
日本での販売体制は、ドバイのデヴェル・モータース社と日本企業ニューガイアモータースの提携により構築されており、ニューガイアモータースが正規ディーラーとしての役割を担当しています。購入から納車まで約2年間の期間が必要とされ、カスタマイズ仕様の相談、日本の厳格な自動車規制への対応改修、さらには日本のナンバープレート取付用の台座装着など、多岐にわたるローカライズが行われます。
値段10億円という価格は単なる基本車両価格ではなく、カスタムオーダー、日本規制対応、納車ロジスティクス、アフターサービス体制構築などを含んだトータルコストが算定されています。このため、購入希望者は単に金銭的余裕があるだけでなく、長期間のカスタマイズプロセスに対応する計画性と、エキゾチックカーのメンテナンスに対応できる環境整備が必須条件となります。
デヴェル16の最も注目すべき特性は、複数のエンジン搭載オプションにより、値段と性能が段階的に設定されている点です。公道走行対応のV8ツインターボモデルでは、シボレー・コルベットC8ベースの6.2L直噴エンジンを採用し、TwinTurboシステムにより2,000馬力まで出力を高めています。このアプローチにより、既存の自動車規制への適合が容易になり、値段も比較的抑制されました。
一方、開発初期に想定されていたV16クアッドターボエンジンは、排気量12.3L、16個の気筒、クアッドターボチャージャーシステムという前代未聞の構成を採用しています。スティーブ・モリス・エンジンズの実験室でのテストにより、最大出力5,007馬力、最大トルク519.4kgmという数値が実証されていますが、この値段に見合う実走性能の検証はいまだ限定的です。
値段の妥当性に関して、比較対象となるのはブガッティ・シロン(約3億円、最高出力1,500馬力)やケーニグセグ・アゲーラRS(約3億円以上、最高出力1,360馬力)といった既知のハイパーカーです。デヴェル16の最高出力当たりの値段効率は、これらの競合モデルと比較して優位性があるとも言えますが、実際の走行テストデータが限定的であるため、値段に対する信頼性の評価は分かれています。
2022年6月に芝浦グループで公開されたデヴェル16は、表面的なスペックだけではなく、細部の仕様にも超高額な要素が隠れています。このモデルはイタリアでのテスト走行時にスパイショットされていたプロトタイプで、ユーチューバーのスーパーカーブロンディ氏のチャンネルでも公開されていた個体です。全長5,298mm×全幅2,315mm×全高1,197mmというボディサイズは、通常の機械式駐車場に収納不可能なほどのワイド設計であり、これ自体が特別製造を必要とする高価な要素となっています。
日本初公開の個体は、最終完成形ではなくフェーズ2段階のプロトタイプとして位置づけられており、今後さらにボディデザイン、内装仕上げ、機能装備が日本向け仕様へとアップデートされる計画です。フロントフードに施されたブラックアクセント、フロア下部の補強構造、エアロダイナミクスパッケージなど、公開されたモデルでも複数の製造コストが視認できます。
参考までに、同時期に公開されたWモーターズ・フェニアスーパースポーツは新地哲己氏が6台を購入・契約済みであり、この企業家がデヴェル16とも同時購入したという背景から、ドバイの超富豪層の購買層へのみ販売された超限定車であることが確認できます。日本での納車は現在のところ新地氏の1台のみとなっており、これが値段の高さと希少性を如実に物語っています。
参考資料:デヴェル16の開発経緯と技術仕様
デヴェル16(Wikipedia日本語版)には、開発スタートから2022年の日本初上陸に至るまでの全貌と、各バージョンのエンジン仕様、価格体系が網羅的に記載されています。
参考資料:日本初公開時の詳細インプレッション
creative311の詳細レポートでは、2022年6月の日本初公開式典での実車解析、ボディサイズの詳細測定値、フロントエンドの意匠設計、そして今後の日本規制対応の予定が詳述されています。