電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタの違いと特徴と使い分け

電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタは電子回路に不可欠な半導体素子ですが、電圧制御と電流制御という根本的な違いがあります。それぞれの構造や動作原理、用途における使い分けをご存知ですか?

電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタの違い

この記事でわかる3つのポイント
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制御方式の根本的な違い

電界効果トランジスタは電圧で制御し、バイポーラトランジスタは電流で制御する電子素子です

構造とキャリアの違い

電界効果トランジスタは単極性、バイポーラトランジスタは双極性の電荷キャリアを利用します

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用途における使い分け

消費電力や増幅率、ノイズ特性など、用途に応じた最適な選択が可能です

電界効果トランジスタの電圧制御と構造的特徴


GaAs電界効果トランジスタの基礎

 

電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)は、ゲート端子に印加する電圧によってドレイン-ソース間の電流を制御する電圧制御素子です。ゲート電極にかける電圧で、ドレインとソースという電極間にできた「チャネル」という電流の流れ道の幅を電気的に変化させて電流を制御します。FETは電子か正孔どちらか1種類だけのキャリアを扱うため、ユニポーラトランジスタとも呼ばれます。
参考)トランジスタの『種類』と『特徴』について!

電界効果トランジスタには主に接合型FET(JFET)と金属酸化膜半導体FET(MOSFET)の2種類があり、それぞれNチャネル型とPチャネル型に分類されます。MOSFETはゲート電極が酸化膜で絶縁されているため、入力インピーダンスが非常に高く、10^9オームを超えることもあります。この構造により、ゲートに電流をほとんど流さずに動作するため、低消費電力で動作可能という大きなメリットがあります。
参考)FET(電界効果トランジスタ)とは何ですか?

バイポーラトランジスタの電流制御と増幅特性

バイポーラトランジスタ(BJT:Bipolar Junction Transistor)は、ベース端子に流れる電流によってコレクタ-エミッタ間の電流を制御する電流制御素子です。N型半導体とP型半導体をNPN、またはPNPの順番に接合した構造を持ち、電子と正孔の両方のキャリアを利用するため「バイポーラ」と呼ばれます。
参考)トランジスタとは?用途や種類、何に使われているかを解説します…

バイポーラトランジスタの最大の特徴は、ベースに流す小さな電流がエミッタ・コレクタ間の大きな電流を制御し、電流を増幅できることです。電流増幅率(hFEまたはβ)は通常20~1000程度であり、一般的には100~300程度の増幅率を持ちます。この高い増幅率により、マイク入力の微弱な音声信号をスピーカーを駆動できる十分な大きさに増幅することが可能です。
参考)X

電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタの入力インピーダンスと消費電力の違い

入力インピーダンスにおいて、両者には決定的な違いがあります。電界効果トランジスタは非常に高い入力インピーダンスを持ち、数百万オーム以上に達します。対してバイポーラトランジスタの入力インピーダンスは低く、数百Ω~数kΩ程度です。この高い入力インピーダンスにより、FETはアンプや負荷が最小限で済むアプリケーションにとって理想的な入力段となります。
参考)https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/applinote/common/types_and_features_of_transistors_an-j.pdf

消費電力の面では、電界効果トランジスタが圧倒的に有利です。MOSFETは電圧制御システムが通常の動作中にゲート電流をほとんど消費しないため、駆動損失(電力ロス)が発生しません。一方、バイポーラトランジスタは動作に常にベース電流が必要なため、駆動に電力を消費します。デジタル回路として使用した場合、MOSFETは動作時以外は電流が流れないという特長を持ち、低消費電力を実現します。
参考)バイポーラトランジスタ(BJT)とは? 特性・MOSFETと…

電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタのスイッチング速度と用途における使い分け

スイッチング速度において、電界効果トランジスタは高速動作が可能です。MOSFETは高速スイッチングに優れており、高周波数下での使用に適しています。対してバイポーラトランジスタのスイッチング速度は低速とされていますが、より高い周波数で動作することも可能です。
参考)トランジスタの特性 - 電子回路の基礎

用途における使い分けでは、それぞれの特性を活かした選択が重要です。バイポーラトランジスタはゲイン(利得)が得やすく増幅率が高いため、アナログ増幅回路やオペアンプ、マイコン出力の電流ブースターとして使われます。また、ノイズ特性もバイポーラトランジスタの方が良く、高周波動作にも優れているため、携帯電話などの無線機器に適しています。
参考)バイポーラトランジスタとは?MOS FETやCMOSとは何が…

一方、電界効果トランジスタのMOSFETは小さく作ることに向いており、微細化により高い集積度を実現できるため、デジタル回路や大規模集積回路に最適です。スイッチング用のパワーMOSFETは電源系やインバーターなどの用途に必要不可欠であり、自動車のエンジン制御システムやEV(電気自動車)のトラクション・インバータにも広く使用されています。
参考)FETの使い方&選定ガイド

電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタを組み合わせた車載用途とパワーエレクトロニクス

現代の車載電子機器では、電界効果トランジスタとバイポーラトランジスタの両方が重要な役割を果たしています。xEV(電動車両)向けインバータ回路では、スイッチング素子としてMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が使用され、それらを駆動するバッファとしてバイポーラトランジスタが利用されます。IGBTは、MOSFETとバイポーラトランジスタを複合化したデバイスで、MOSFETの高速動作とバイポーラトランジスタの高耐圧・低オン抵抗という特徴を併せ持ちます。
参考)IGBTとは?日本が誇るパワー半導体

車載用途では、ノイズが多いモーターなどの制御に現在でもバイポーラトランジスタが使われることがあります。バイポーラトランジスタはノイズ特性が高く、電磁ノイズが発生しやすい回路に有効です。一方、低耐圧ではMOSFETを、高耐圧ではIGBTを使い分けることが広く行われており、使用状況によって最適なデバイスを選択することが重要です。
参考)マイコン時代の電子回路入門 その7 MOSFETの基礎

パワー半導体市場では、日本企業が特に活躍しており、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果型トランジスタ)とIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が主流となっています。これらのデバイスは、EV(電気自動車)の省エネ化と性能向上の鍵となる電気回路において不可欠な要素です。トランジスタやダイオードなどのパワーエレクトロニクスデバイスは、エンジン管理や電力変換回路において現代の自動車制御システムの基盤となっています。
参考)EVの省エネ化と性能向上の鍵は電気回路にあり

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バイポーラトランジスタ(BJT)の特性とMOSFETとの違いについて詳しく解説

 

 


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