第二アクアライン東京湾口道路建設促進期成同盟会設立

第二アクアラインとも呼ばれる東京湾口道路の建設促進期成同盟会が設立され、横須賀と富津を結ぶ構想が本格化しています。SNSがきっかけで再燃したこの計画の現状と課題とは?

第二アクアライン東京湾口道路建設促進

第二アクアライン東京湾口道路の概要
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横須賀~富津間を直結

神奈川県横須賀市と千葉県富津市を結ぶ延長約17kmの海峡横断道路

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アクアライン渋滞解消

慢性的な渋滞に悩む東京湾アクアラインの交通分散効果を期待

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SNSから再燃

2023年のTwitter投稿がきっかけで9年ぶりに建設促進活動が活発化

第二アクアライン東京湾口道路の基本構想とルート

東京湾口道路は、神奈川県横須賀市の観音崎付近と千葉県富津市の富津岬付近を結ぶ延長約17kmの海峡横断道路として構想されています。この区間は「浦賀水道」と呼ばれる東京湾で最も狭い部分で、距離は10kmにも満たず、東京湾アクアラインの約15kmと比較してもかなり短い海峡部となります。

 

構想では高架橋または海底トンネルによる建設が検討されており、国道16号の「海上区間」として位置づけられています。国道16号は1都3県にわたって首都圏郊外をぐるっと周る環状国道として路線認定されており、将来的にこの海峡道路でつながることを企図して設計されました。

 

現在、この区間には東京湾フェリーの久里浜~金谷航路が運航していますが、自動車での直接的な連絡はありません。東京湾口道路が実現すれば、東名高速道路から房総半島への最短ルートが確立され、静岡方面から千葉南部への「まっすぐ東西軸」が完成することになります。

 

第二アクアライン建設促進期成同盟会設立の経緯

2024年、富津市を中心とした千葉県側の自治体や経済界が「房総地域東京湾口道路建設促進期成同盟会」を設立しました。この動きのきっかけとなったのは、2023年1月にTwitter上で投稿された「ここに橋が欲しい人、割といる説」という投稿でした。この投稿は1万件を超えるリツイートを記録し、大きな反響を呼びました。

 

こうした市民レベルでの関心の高まりと地元経済界からの要望を受け、富津市は9年ぶりに建設促進協議会の総会を開催。2008年に国土交通省が計画を棚上げして以降、2014年を最後に開催されていなかった協議会活動が再開されました。

 

期成同盟会では富津市長が会長を務め、自治体や地元財界が一体となって国への働きかけを本格化させています。2023年12月には国土交通省と国会議員に対して事業化を訴える要望書を提出し、構想の具体化に向けた活動を積極的に展開しています。

 

第二アクアライン建設によるアクアライン渋滞解消効果

東京湾アクアラインは開通以来、特に休日の千葉方面への交通集中により慢性的な渋滞が発生しています。週末の午前中を中心に、アクアトンネルを先頭とした渋滞が川崎浮島JCTから首都高湾岸線の両方向へ延びることが常態化しており、首都圏でも特に注意すべき渋滞箇所として認識されています。

 

2024年1月には川崎浮島JCTでの車線引き直し工事が実施され、渋滞損失時間が約10%短縮される効果が確認されました。しかし、根本的な解決には至っておらず、交通量の分散が急務となっています。

 

東京湾口道路が開通すれば、現在アクアラインに集中している交通を分散させることが可能になります。特に横浜・横須賀方面から房総半島へのアクセスが大幅に改善され、現在の「保土ヶ谷バイパス→首都高湾岸線→アクアライン」という迂回ルートが不要になります。これにより、アクアラインの交通量減少と渋滞緩和が期待されています。

 

第二アクアライン構想の課題と建設費用問題

東京湾口道路の実現には多くの課題が存在します。最大の問題は建設費用で、高架橋を採用しても海底トンネルを採用しても、東京湾アクアラインに匹敵する大規模事業となり、数兆円規模の建設費が必要と予想されています。

 

東京湾アクアラインの建設費は約1兆4400億円で、開通当初の通行料金は普通車4000円という高額設定でした。現在は国と千葉県が年間約5億円を負担して800円に割引されていますが、東京湾口道路でも同様の措置が必要になる可能性があります。

 

また、既存の東京湾フェリー事業との競合問題も深刻です。現在、久里浜~金谷間を結ぶ東京湾フェリーは2パターンのダイヤで運航していますが、道路が開通すれば大幅な利用者減少は避けられません。既存事業者への補償や代替案の検討も必要になります。

 

さらに、東京湾は貨物船の通行が非常に多く、海上交通への影響も懸念されています。高架橋の場合は船舶の航行に支障をきたす可能性があり、海底トンネルの場合は軟弱地盤での掘削技術や環境への影響が課題となります。

 

第二アクアライン実現による房総半島活性化の独自視点

東京湾口道路の実現は、単なる交通インフラの整備を超えた房総半島の産業構造変革をもたらす可能性があります。現在、房総半島は首都圏に近い立地でありながら、半島という地形的制約により企業立地や物流面で不利な状況が続いています。

 

しかし、東京湾口道路が開通すれば、房総半島南部が「東京湾の玄関口」として機能し、新たな物流拠点としての価値が生まれます。特に、富津市周辺は東京湾フェリーの発着地として海上交通の要衝でもあり、陸海両方の交通結節点としての発展が期待できます。

 

また、災害時の代替ルートとしての価値も見逃せません。近年の自然災害の激甚化・頻発化を考慮すると、東京湾を横断する交通路の複数化は首都圏の防災機能強化に直結します。東日本大震災の際にも、交通インフラの冗長性の重要性が再認識されており、東京湾口道路は単なる利便性向上を超えた安全保障上の意義を持ちます。

 

さらに、房総半島の観光産業にも大きな変革をもたらします。現在、房総半島への観光客は主に電車やアクアライン経由でアクセスしていますが、東京湾口道路により西日本からの自動車観光客の大幅な増加が見込まれます。これにより、房総半島の観光地としてのポテンシャルが飛躍的に向上し、地域経済の活性化につながることが期待されています。

 

房総半島の花火大会でも「東京湾口道路建設促進」の冠が10年ぶりに復活するなど、地域一体となった機運の高まりが見られており、今後の動向が注目されています。