ダイハツセニアは2021年に10年ぶりのフルモデルチェンジを実施し、現在は3代目モデルが販売されています。ボディサイズは全長4395mm×全幅1730mm×全高1700mmで、日本のトヨタシエンタに近いサイズ感を持ちながら、7人乗りを実現したコンパクトMPVです。
最大の特徴は、従来のFR構造から初めてFF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトを採用したことです。これにより室内長が160mm拡大し、より実用的な室内空間を確保しています。最低地上高は195mmと高めに設定されており、インドネシアの道路事情に配慮した設計となっています。
パワートレインは1.3リッター自然吸気エンジン(最高出力98ps・最大トルク12.4kgm)と1.5リッター自然吸気エンジン(最高出力106ps・最大トルク14.1kgm)の2種類を設定。トランスミッションは5速MTまたはCVTが選択可能で、燃費性能と実用性を両立しています。
安全装備では、ダイハツの予防安全技術「スマートアシスト」(現地名:Advanced Safety Assist)を標準装備し、現代的な安全性能を確保しています。
実は、ダイハツセニアと日本市場には深い関係があります。初代・2代目セニアは、日本で2006年から2016年まで販売されていたダイハツビーゴ&トヨタラッシュと同じプラットフォームを使用していました。これらの車種は現在のスズキクロスビーに近いコンパクトSUVとして位置づけられていました。
セニアは2004年の初代モデル登場時から、ダイハツとトヨタの初の共同開発車として開発されました。トヨタでは「アバンザ」の車名で販売されており、両ブランドでの累計販売台数は約68万台に達しています。
興味深いことに、セニアは中国市場でも販売実績があります。2007年から第一汽車グループとの合弁で「森雅」という中国名で製造・販売が開始されましたが、ブランド知名度不足により販売は低迷し、2009年には一汽ブランドへと変更された経緯があります。
この過去の実績を見ると、セニアのプラットフォーム技術は既に日本市場でも実証されており、技術的な日本導入の障壁は低いと考えられます。
2024年9月に開催された「インドネシア国際オートショー」では、セニアの最上級スポーティ仕様「セニア ADS」が公開され、大きな注目を集めました。ADSは「Advanced Dynamic Sport」の略で、従来のセニアをベースにスポーティな外観パッケージを追加したモデルです。
セニア ADSの特徴的な装備には以下があります。
価格設定は2億5025万から2億8385万ルピア(約235万円から270万円)となっており、ベースモデルの1億9090万から2億4270万ルピア(約153万円から194万円)と比較すると、スポーティパッケージで約80万円の価格上昇となっています。
この価格設定は、日本市場での競合車種と比較しても非常に魅力的です。同クラスの7人乗りミニバンであるトヨタシエンタが約200万円からの価格設定を考えると、セニアの価格競争力は高いと言えるでしょう。
現在のところ、ダイハツセニアの直接的な日本導入は発表されていません。しかし、2025年7月1日の最新情報によると、「ロッキースペース」として2027年6月発売予定の国内向け7人乗りモデルが開発中であり、セニアコンセプトに近い仕様となる可能性があります。
この「ロッキースペース」は、現在日本で販売されているダイハツロッキーをベースとした7人乗りモデルと推測されます。ロッキーは既にインドネシアでも販売されており、セニアと同じDNGA(Daihatsu New Global Architecture)プラットフォームを採用しています。
日本市場でのミニバン需要を考慮すると、以下の要因が導入を後押しする可能性があります。
一方で、日本独自の安全基準や環境規制への対応、右ハンドル化のコストなどが導入の障壁となる可能性もあります。
日本市場でセニアが導入された場合の競合車種を分析すると、主要なライバルは以下の車種になると予想されます。
直接競合車種
間接競合車種
セニアの最大の優位性は価格競争力です。インドネシアでの価格設定を参考にすると、日本導入時も200万円を切る価格設定が可能かもしれません。これは現在の日本市場では非常に魅力的なポジションとなります。
また、セニアのリアドアがヒンジ式(スイング式)である点は、日本市場では珍しい特徴です。日本のミニバンユーザーはスライドドアを好む傾向がありますが、コスト削減と軽量化の観点から、ヒンジ式ドアも一定の支持を得る可能性があります。
さらに、最低地上高195mmという設定は、日本の積雪地域や未舗装路での使用にも適しており、SUV的な使い勝手も提供できます。この多用途性は、現代の日本市場のニーズに合致する可能性が高いと考えられます。
インドネシアでの成功実績(累計68万台販売)は、セニアの商品力の高さを証明しており、適切なローカライゼーションが行われれば、日本市場でも十分な競争力を発揮できると予想されます。