ダブルストレーラーは、1台のトラクターで2台のトレーラーを牽引する3両編成の超大型車両です。実車の全長は約34mに達し、全高は約3.6mという巨大なサイズを誇ります。
この車両の最大の特徴は、その積載能力にあります。一度に最大88トンもの石灰石やクリンカーを輸送することができ、総重量は125トンに達します。これは日本の公道を走れる最大重量36トンの実に3.3倍以上という規格外の数値です。
車輪の構成も特殊で、全体で9輪という珍しい構造になっています。トラクター部分とトレーラー2台を合わせたこの9輪構成は、トミカの歴史においても初めての試みとなりました。
ダブルストレーラーが走行する宇部興産専用道路は、山口県美祢市の伊佐セメント工場と宇部市の宇部セメント工場を結ぶ全長31.94kmの私道です。この距離は私道としては日本最長で、東名高速道路の東京料金所から厚木間よりも長い距離となります。
この専用道路は1968年から14年という長期間をかけて建設され、管理もネクスコ並みに行き届いています。道路の建設目的は、伊佐工場で製造されるセメントの中間製品「クリンカー」を宇部工場まで効率的に輸送することにあります。
年間の輸送量は約350万トンに達し、宇部工場でセメントに仕上げられた後、日本国内や海外に出荷されています。この巨大な物流システムは、日本のインフラ整備に欠かせないセメント生産において重要な役割を果たしています。
現在、宇部興産専用道路で使用されているトラクターは4車種あります。それぞれが異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられています。
ケンワース T609型・T610型 🚛
いすゞ GIGA(EXZ52CK-XRR-M改) 🚛
ボルボ・スカニア 🚛
各トラクターの使用期間は約8年(150万km走行)に設定されており、その後は予備車として2年程度使用されます。
ダブルストレーラーの運転には、私道であっても公道での大型免許と牽引免許が必須となります。しかし、免許を持っているだけでは運転することはできません。
訓練プログラム 📚
125トンという非常に特殊な車両であるため、安全な走行には特別な技術が必要です。特に18速マニュアルトランスミッションの操作は高度な技能を要求され、フロントウィンドウの面積が狭いことによる視界の制限も運転の難しさを増しています。
最終的には検定者の同乗による厳しい走行試験に合格したドライバーだけが、この巨大トレーラーの運転資格を得ることができます。
2020年9月に発売された「ロングトミカ No.129 宇部興産 ダブルストレーラー」は、マニアックな車種にも関わらず大ヒットを記録しました。
製品の特徴 ✨
トミカ版の最大の魅力は、他のロングトミカとの互換性にあります。ヘッド部分とトレーラー部分を他の車両と組み合わせることで、様々な遊び方が可能になっています。
発売当初は実店舗や通販でも売り切れが続出し、Amazonではプレミア価格で取引されるほどの人気ぶりでした。この成功により、マニアックな働く車両への注目が高まりました。
現在のダブルストレーラーシステムが確立される前、約20年前までは「トリプルストレーラー」も運用されていました。これは現在よりもさらに巨大な輸送システムでした。
トリプルストレーラーの仕様 📊
このシステムは限られた乗務員にしか運転できない特殊な車両でしたが、効率性と安全性の観点から現在のダブルストレーラーシステムに移行しました。現在の積載量は44トン×2トレーラー=88トンとなり、より実用的なシステムとして運用されています。
この歴史的変遷は、産業輸送における技術革新と安全性向上の取り組みを物語っています。トリプルストレーラーからダブルストレーラーへの移行は、単なる規模縮小ではなく、より効率的で安全な輸送システムへの進化を意味しています。
宇部興産のダブルストレーラーは、日本の産業輸送における技術の粋を集めた特殊車両として、今後も重要な役割を果たし続けることでしょう。トミカとしても愛され続けるこの車両は、日本のものづくりの象徴的存在として多くの人々に親しまれています。