ダブルストレーラー宇部興産専用道路最長私道トミカ

日本最長32kmの私道を走る宇部興産のダブルストレーラーは、総重量125トンの巨大車両です。トミカでも大ヒットしたこの特殊車両の魅力とは?

ダブルストレーラー宇部興産専用道路最長私道トミカ

ダブルストレーラーの基本情報
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超巨大サイズ

全長34m、総重量125トンの規格外車両

🛣️
専用道路走行

日本最長32kmの私道を走行する特殊車両

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セメント輸送

年間350万トンのクリンカーを効率輸送

ダブルストレーラーの基本構造と規格外スペック

ダブルストレーラーは、1台のトラクターで2台のトレーラーを牽引する3両編成の超大型車両です。実車の全長は約34mに達し、全高は約3.6mという巨大なサイズを誇ります。

 

この車両の最大の特徴は、その積載能力にあります。一度に最大88トンもの石灰石やクリンカーを輸送することができ、総重量は125トンに達します。これは日本の公道を走れる最大重量36トンの実に3.3倍以上という規格外の数値です。

 

車輪の構成も特殊で、全体で9輪という珍しい構造になっています。トラクター部分とトレーラー2台を合わせたこの9輪構成は、トミカの歴史においても初めての試みとなりました。

 

ダブルストレーラーが走る宇部興産専用道路の詳細

ダブルストレーラーが走行する宇部興産専用道路は、山口県美祢市の伊佐セメント工場と宇部市の宇部セメント工場を結ぶ全長31.94kmの私道です。この距離は私道としては日本最長で、東名高速道路の東京料金所から厚木間よりも長い距離となります。

 

この専用道路は1968年から14年という長期間をかけて建設され、管理もネクスコ並みに行き届いています。道路の建設目的は、伊佐工場で製造されるセメントの中間製品「クリンカー」を宇部工場まで効率的に輸送することにあります。

 

年間の輸送量は約350万トンに達し、宇部工場でセメントに仕上げられた後、日本国内や海外に出荷されています。この巨大な物流システムは、日本のインフラ整備に欠かせないセメント生産において重要な役割を果たしています。

 

ダブルストレーラーのトラクター車種とメーカー別特徴

現在、宇部興産専用道路で使用されているトラクターは4車種あります。それぞれが異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられています。

 

ケンワース T609型・T610型 🚛

  • 最高出力:600馬力
  • 排気量:15リッター
  • トランスミッション:18速マニュアル
  • 特徴:オーストラリアから直輸入の右ハンドル仕様で、日本では極めて珍しい車種

いすゞ GIGA(EXZ52CK-XRR-M改) 🚛

  • 最高出力:520馬力
  • 排気量:15.7リッター
  • トランスミッション:16段マニュアル
  • 特徴:日本メーカー製でメンテナンス性に優れ、トミカのモデルにも採用

ボルボ・スカニア 🚛

  • 欧州メーカーの高性能トラクター
  • 長距離輸送に適した設計

各トラクターの使用期間は約8年(150万km走行)に設定されており、その後は予備車として2年程度使用されます。

 

ダブルストレーラー運転に必要な特殊技能と訓練

ダブルストレーラーの運転には、私道であっても公道での大型免許と牽引免許が必須となります。しかし、免許を持っているだけでは運転することはできません。

 

訓練プログラム 📚

  • 助手席同乗による基礎学習
  • 空車状態での走行トレーニング
  • 積載状態での実践走行
  • 訓練期間:1~2ヶ月

125トンという非常に特殊な車両であるため、安全な走行には特別な技術が必要です。特に18速マニュアルトランスミッションの操作は高度な技能を要求され、フロントウィンドウの面積が狭いことによる視界の制限も運転の難しさを増しています。

 

最終的には検定者の同乗による厳しい走行試験に合格したドライバーだけが、この巨大トレーラーの運転資格を得ることができます。

 

ダブルストレーラートミカの製品化と人気の秘密

2020年9月に発売された「ロングトミカ No.129 宇部興産 ダブルストレーラー」は、マニアックな車種にも関わらず大ヒットを記録しました。

 

製品の特徴

  • サイズ:約W24.5×H31×D190mm
  • 材質:亜鉛合金製で重量感を再現
  • 塗装:実車の色見本に合わせた専用車体色
  • ロゴ:大型のUBEロゴを実車のバランスに合わせて配置

トミカ版の最大の魅力は、他のロングトミカとの互換性にあります。ヘッド部分とトレーラー部分を他の車両と組み合わせることで、様々な遊び方が可能になっています。

 

発売当初は実店舗や通販でも売り切れが続出し、Amazonではプレミア価格で取引されるほどの人気ぶりでした。この成功により、マニアックな働く車両への注目が高まりました。

 

ダブルストレーラーの歴史と進化:トリプルストレーラー時代

現在のダブルストレーラーシステムが確立される前、約20年前までは「トリプルストレーラー」も運用されていました。これは現在よりもさらに巨大な輸送システムでした。

 

トリプルストレーラーの仕様 📊

  • 積載量:35トン×3トレーラー=105トン
  • 全長:45m
  • 総重量:約160トン
  • 運用台数:2セットのみ

このシステムは限られた乗務員にしか運転できない特殊な車両でしたが、効率性と安全性の観点から現在のダブルストレーラーシステムに移行しました。現在の積載量は44トン×2トレーラー=88トンとなり、より実用的なシステムとして運用されています。

 

この歴史的変遷は、産業輸送における技術革新と安全性向上の取り組みを物語っています。トリプルストレーラーからダブルストレーラーへの移行は、単なる規模縮小ではなく、より効率的で安全な輸送システムへの進化を意味しています。

 

宇部興産のダブルストレーラーは、日本の産業輸送における技術の粋を集めた特殊車両として、今後も重要な役割を果たし続けることでしょう。トミカとしても愛され続けるこの車両は、日本のものづくりの象徴的存在として多くの人々に親しまれています。