トヨタが1998年に発売したプログレは、「小さな高級車」というコンセプトを体現した革新的なモデルでした。全長4.5m×全幅1.7mの5ナンバークラスミドルサイズボディながら、ラージクラスに匹敵する広いキャビンと高級感を実現していました。
プログレの最大の特徴は、コンパクトなボディサイズでありながら、一般的な高級車と同等の質感を持っていたことです。ウォールナットの本木目パネルや革シート、高級高性能オーディオなどの高級車にふさわしい素材が贅沢に使われていました。
エンジンには直列6気筒エンジンを搭載し、直噴システムD-4&VVT-iシステムを採用した3L(220馬力)と2.5L(200馬力)の2種類を用意。駆動方式はFRとフルタイム4WDを設定し、本格的な高級車としての性能を備えていました。
プログレは「進化・進歩」を意味するフランス語からネーミングされており、日本の道路事情に適したサイズでありながら、高級車としての品格を保った画期的なモデルとして注目を集めました。
2007年に発売されたトヨタブレイドマスターは、全長4.2mのコンパクトなボディに豪華な内装とパワフルなV型6気筒エンジンを搭載した「小さな高級車」の代表格です。
ブレイドマスターの内装は、まさに「めちゃ豪華内装」と評されるほどの仕上がりで、高級車に匹敵する質感を持っていました。コンパクトなハッチバックボディながら、室内空間は十分に確保されており、実用性と高級感を両立していました。
搭載されたV型6気筒エンジンは、コンパクトカーとは思えないほどのパワフルな走りを実現。「小さなクラウン」とも称されるほどの上質な走行性能を誇っていました。
ブレイドマスターは「誕生が早すぎた」モデルとも言われており、時代が違えば大ヒットの可能性があったとされています。現在でも中古車市場で高い人気を維持しており、その先進性と完成度の高さが評価されています。
2001年6月にデビューしたトヨタブレビスは、プログレに続く「小さな高級車」第2弾として登場しました。「小さなセルシオ」とも呼ばれるほどの上質な仕上がりで、ミディアムセダンながら高級車としての品格を備えていました。
ブレビスの特徴は、プログレよりもさらに洗練されたデザインと、より上質な乗り心地を実現していたことです。セルシオで培った高級車作りのノウハウを活かし、コンパクトなボディサイズでありながら、静粛性や快適性において高いレベルを達成していました。
エンジンラインナップも充実しており、直列6気筒エンジンを中心とした構成で、パワフルかつスムーズな走りを提供していました。内装には高級素材を惜しみなく使用し、まさに「小さなセルシオ」の名にふさわしい上質な空間を演出していました。
ブレビスは日本の道路事情に最適化された高級車として、多くの愛好家から支持を受けました。現在でもその完成度の高さから、中古車市場で根強い人気を誇っています。
2025年現在、トヨタの「小さな高級車」コンセプトは、アクアの特別仕様車「Z"Raffine"」(Zラフィネ)として現代的に進化しています。新車価格266万円という手頃な価格設定ながら、「豪華ブロンズ仕様」で上質な体験を提供しています。
アクアラフィネは全長4mサイズのコンパクトボディに、ブロンズ色を基調とした特別な内外装を施しています。「かっこいい」「外車っぽい」といった評価を受けており、現代の小さな高級車として新たな魅力を提案しています。
従来のプログレやブレイドマスターとは異なり、ハイブリッドシステムを搭載することで環境性能も重視。時代のニーズに合わせた進化を遂げながら、トヨタの「小さな高級車」の系譜を受け継いでいます。
アクアラフィネの登場により、トヨタの小さな高級車コンセプトは新たな時代に入ったと言えるでしょう。手頃な価格でありながら上質な体験を提供するという、現代のニーズに合った形で進化を続けています。
トヨタの小さな高級車シリーズが目指したのは、単なるサイズダウンではなく、日本独自の価値観に基づいた新しい高級車の形でした。欧州のプレミアムコンパクトカーとは異なる、日本の道路事情や文化に適応した独自のアプローチを取っていました。
これらの車種に共通するのは、「大きさ=高級さ」という従来の概念を覆し、限られたスペースの中で最大限の上質さを追求したことです。狭い日本の道路や駐車場事情を考慮しながら、高級車としての品格を保つという、相反する要求を高いレベルで両立させていました。
また、トヨタの小さな高級車は、単なる移動手段ではなく、所有する喜びや運転する楽しさを重視していました。コンパクトなボディサイズでありながら、ドライバーズカーとしての性格も併せ持っていたのです。
現在では、レクサスブランドでもLBXなどのコンパクトSUVが登場しており、トヨタの小さな高級車コンセプトは新たな形で継承されています。過去のコンセプトカー「LF-Ch」のような提案も含め、トヨタは常に新しい高級車の形を模索し続けています。
これらの取り組みは、日本の自動車文化における独自の価値観を体現しており、世界的にも注目される存在となっています。サイズに頼らない高級感の追求は、今後の自動車業界においても重要な指針となるでしょう。