フロントにボルテックスジェネレーターを貼ったのに、燃費が全く変わらなかった経験はありませんか?
ボルテックスジェネレーター(以下、VG)とは、車体表面に取り付ける小さな突起物で、「渦流生成器」とも呼ばれます。航空機の翼、F1マシン、そして現代の市販車まで幅広く採用されている空力デバイスです。
その役割をひと言で言えば、「空気の剥離を防ぐこと」です。
車が走ると、ボディ表面に沿って空気が流れます。ところが、ある地点を過ぎると空気は車体から剥がれてしまい、大きな渦を発生させます。これを「境界層剥離」と呼びます。この渦が車体後方に発生することで強力な負圧(低気圧)領域が生まれ、車体は後ろに引っ張られる「圧力抗力」が発生します。つまり、ブレーキをかけている状態と同じになってしまうわけです。
VGの仕組みはシンプルです。突起によって空気に意図的な「縦渦(螺旋状の流れ)」を発生させ、境界層内の遅い空気に運動量を供給します。これにより空気が剥離しにくくなり、負圧領域が小さくなるというわけです。
結果として得られるのは、空気抵抗の低減と燃費向上、そして高速走行時の車体安定性です。
トヨタではこのVGを「エアロスタビライジングフィン」と呼び、プリウス・アクア・VOXYなど多くの車種に純正採用しています。呼び名は違いますが、原理はまったく同じです。これはあくまで呼び方を変えただけに過ぎません。
ここで重要なのが、「VGは剥離が発生する箇所より少し前に取り付ける」という原則です。剥離してしまった後に貼っても手遅れです。効果を得るには「剥離が始まる手前」を狙うことが条件です。
「境界層剥離」の原理と空気抵抗との関係(スポーツカーを愉しむ)
フロント周りの中でも、最初に多くの人が注目するのがAピラーやドアミラー付近です。トヨタ純正車がミラー根元にVGを装備しているのを見て「マネしてみよう」と考えるのは自然な流れです。
ただし、この位置には少し複雑な背景があります。
Aピラー付近では、フロントガラスから流れてきた空気がAピラーの角を曲がる際に剥離が起きやすくなります。VGはその剥離を抑えるために、剥離点の少し前に設置するのが原則です。つまり、Aピラーに沿って空気が流れてくるルート上の、剥離が始まる手前のポイントを狙う必要があります。
ミラー根元への取り付けには、実はいくつかの狙いがあります。ひとつは、サイドミラーとフロントウィンドウの間を流れる空気の整流効果です。VGがここで縦渦を生み出すことで、ボディに沿って流れるべき空気がミラー側へ逃げず、後方まで安定して流れていきます。もうひとつは、ミラーの後ろで発生しやすい風切り渦の抑制です。
取り付けの際の具体的な目安として、「ミラー後端から10cm以上手前の車体側」に設置するのが安全です。これはみんカラユーザーの実践事例でも確認されています。
ただし、取り付け後に「風切り音が増した」というケースも実際に報告されています。これはVGが空気を余計にかき乱してしまったケースで、サイズが大きすぎたり位置が前後にズレている場合に起こります。これは注意が必要な点です。
また、スバルの新型BRZのようにミラー本体の側面にVGを付けているモデルも存在します。この場合はミラー自体の空力性能を改善するのが目的で、車体への取り付けとは狙いが異なります。どこに貼るかだけでなく「何を改善したいか」を明確にしてから位置を決めることが大切です。
フロント周りでVGの効果が特に大きいとされるのが、フロントタイヤハウスの前方です。
フロントタイヤハウス内部には、走行中に大量の乱れた空気が流れ込みます。タイヤが高速回転することで、ホイールハウス内は激しい乱流状態になり、その乱れた気流は車体下面や車体側面に悪影響を与えます。この状態を整えることが、フロントVGの大きな役割のひとつです。
具体的な取り付け場所として広く参照されているのは、「タイヤ最上部から前方に約10cmの位置」です。さらに垂直方向(タイヤ回転方向に対して直角)に取り付けるのが基本となっています。BMW E46を使った実践記録によれば、この位置への取り付け後に「フロントタイヤの接地感が明らかに上がり、荒れた路面でのバンプ収束が改善された」という体感変化が報告されています。
フロントバンパーサイドへの取り付けも有効です。フロントバンパーの端部から後方へ空気が回り込む際に剥離が発生しやすいため、そのコーナー手前にVGを配置することで、車体横面への気流をスムーズに誘導できます。実際の取り付け間隔は、「後端から10cm前方・10cm間隔」が目安として紹介されています(はがきの長辺が約14.8cmなのでイメージしやすいです)。
なお、フロントタイヤハウス内部は曲面が多く、一般的な板状VGでは取り付けが難しいケースがあります。この場合、3MのP型ドア用シールテープのような素材を代替として使う実践例もあります。重要なのは形状よりも「気流の流れを整えること」という目的に立ち返ることです。これが原則です。
フロントホイールハウスへのVG取り付け実践と効果(aikawa-net)
VGをフロントに取り付けたのに効果を感じられない場合、最も多い原因のひとつが「向きの間違い」です。
一般的な流線型VGには、「こんもりした側(厚い側)」と「シュッとした側(細い側)」があります。多くのユーザーが「空気抵抗が少ないように」と厚い側を前にしてしまいます。しかしVGの主目的は渦を起こすことなので、細い側を前(風上側)にするのが正しい向きです。三菱自動車の研究論文でも、「ウインドウに対して約27度の角度が最も渦を生成しやすい」とされており、VG本体が適切に気流を切り裂ける向きに設置することが前提となっています。
数については「多ければ多いほどよい」という思い込みも禁物です。
ワゴンRにVGを50個以上取り付けて最高燃費35.3km/Lを達成した実践者も、後に検証を行い「車体横のテールランプ周辺のVGを計10個取り外しても燃費に変化なし」という結果を得ています。VGを多く貼ることで発生する過剰な乱流が、他の空力デバイスの効果を妨げる場合があるからです。つまり、数を減らして正しい場所に絞ることが、コスパの高い空力チューンにつながります。
また、スピードレンジにも注意が必要です。VGの効果は高速走行時(概ね60km/h以上)で顕著になります。山道や街乗り主体の走行では、劇的な変化を期待しにくい面があります。取り付け前に「自分の走行パターンで効果が見込めるか」を確認してから作業に進むことをおすすめします。
VGをフロントバンパー付近やボンネット、Cピラーなどに取り付ける際には、保安基準に注意が必要です。これは多くのユーザーが見落としがちな点です。
2017年4月1日(平成29年4月1日)より、乗用車の外部突起に関する新基準が適用されています。内容は「曲率半径が2.5mm未満である突起を有してはならない」というものです(道路運送車両の保安基準 第178条 3項4号)。
この基準が意味するのは、VGの先端部分の丸みが半径2.5mm以上なければ保安基準違反になる可能性があるということです。市販の星光産業「エアロフィンプロテクター(EW-135/EW-137)」のような製品は、この基準をクリアした形状設計がされています。しかし、海外通販(アリエクスプレスなど)で入手した安価なVGは先端が鋭く尖っているものもあり、注意が必要です。
また、高さが1cm近くあるVGは「車体の最大幅を超えない位置に取り付ける」ことも必要です。フロントバンパーのサイドなど、車幅ギリギリの場所に取り付ける際は特に確認が求められます。
突出量が5mm未満の場合、丸みが付いていれば条件を満たすとされています。取り付け前に商品の仕様書を確認し、「曲率半径2.5mm以上」の記載があるかを確かめるという行動を1つ取るだけで、車検トラブルを事前に防ぐことができます。
車検における外部突起物の基準(press-feed.com)

車用 ボルテックスジェネレーター エアロダイナミクス改善&風切り音低減 カーボン調/赤/黒/銀/白 8ピースセット ドア サイド コーナー ガード (ブラック)