実はE10ガソリン導入で、燃費が約3%落ちて年間数千円の出費増になります。
バイオ燃料という言葉を聞いたとき、「植物から作った環境にやさしい燃料」という大まかなイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、バイオディーゼルとバイオエタノールはまったく別物であり、混同すると実際の導入判断や知識理解で大きく誤ることになります。
まず最も根本的な違いは「使えるエンジンが違う」という点です。バイオエタノールはガソリンエンジン専用の燃料添加剤として使われます。一方、バイオディーゼルはディーゼルエンジン専用の軽油代替燃料です。つまり、乗用車のガソリン車はバイオエタノール混合燃料を、トラックや建設機械などのディーゼル車はバイオディーゼル混合燃料を使うという棲み分けがあります。
以下で両者の主な違いを整理すると、下記のようになります。
| 項目 | バイオエタノール | バイオディーゼル |
|---|---|---|
| 主な原料 | サトウキビ、トウモロコシ | 廃食油、菜種油、パーム油 |
| 製造方法 | 発酵・蒸留 | エステル交換反応(FAME)または水素化処理(HVO) |
| 代替する化石燃料 | ガソリン | 軽油 |
| 使用するエンジン | ガソリンエンジン | ディーゼルエンジン |
| 混合表記 | E5、E10、E20など | B5、B10、B20など |
| 日本の現状 | ETBE経由で間接混合(約3%相当) | 一部商用車・自治体で導入済み |
つまり「どちらもバイオ燃料だが、用途は正反対」と覚えるのが基本です。
混合率の表記についても知っておくと役立ちます。バイオエタノールを3%混合したガソリンは「E3」、10%は「E10」と呼ばれます。同様にバイオディーゼルを混合した軽油はB5、B10などと表記されます。経済産業省は2030年度までにE10ガソリンの国内供給を開始する方針を2024年11月に示しており、今後は一般ドライバーにとっても無縁ではない話になってきています。
資源エネルギー庁「ガソリンのカーボンニュートラル移行に欠かせない『バイオエタノール』とは」:バイオエタノールの基本解説と日本の政策方針について詳しく掲載されています。
バイオエタノールの製造方法は、原料を発酵させてアルコール分を抽出し、蒸留・精製するというプロセスです。これはアルコール飲料の製造とほぼ同じ工程です。実は工程的にも成分的にも「甲種焼酎」とほぼ同じとされており、品質の高い燃料用エタノールを得るには高純度の蒸留工程が必要になります。
現在主流となっているのは「第1世代バイオエタノール」で、サトウキビやトウモロコシなど食べられる農作物の可食部を原料とします。世界全体のバイオエタノール生産量のうち約60%がトウモロコシ由来、約25%がサトウキビ由来と、2種類の原料だけで85%以上を占めています(OECD-FAO Agricultural Outlook、2021年)。
第1世代の課題は、「食料との競合」です。エタノール需要が増えると農地の奪い合いが起き、穀物価格の高騰を引き起こすリスクがあります。これを解消するために登場したのが「第2世代バイオエタノール」で、稲わら・木材チップ・農業廃棄物など食べられない植物の非可食部(セルロース系バイオマス)を原料とします。食料と競合しない点が大きなメリットです。
重要なのが熱量の違いです。エタノールの発熱量はリットル当たり約5,600kcalで、ガソリン(約8,000kcal/L)の約70%しかありません。この差が燃費に直結します。
「燃費が落ちてもオクタン価が上がる」これは一見矛盾しているように見えますが、使用する車のエンジン仕様によって体感する影響が変わってきます。現在のE10対応エンジンを搭載した新しい車であれば、燃費低下は限定的です。
バイオディーゼルは大きく分けて「FAME(脂肪酸メチルエステル)」と「HVO(水素化植物油)」の2種類があります。両者は原料がほぼ同じでも、製造プロセスが異なり、性能にも大きな差があります。この違いを知っているかどうかで、導入判断が変わってきます。
FAMEの特徴
FAMEは廃食油・菜種油・大豆油などを原料に、メタノールとのエステル交換反応で製造します。製造設備が比較的シンプルで低コストなため、現在のバイオディーゼルの主流となっています。軽油との混合表記でB5、B20などと呼ばれます。
ただし、FAMEには以下の課題があります。
HVO(次世代バイオディーゼル)の特徴
HVOは同じ廃食油・動植物油を原料としながらも、水素化処理(水素を使って酸素を除去する精製方法)によって製造します。これにより、分子構造が石油由来の軽油と同じ炭化水素になります。
HVOが優れている点は「ドロップイン燃料」として使える点です。軽油と100%置き換えが可能で、既存のインフラ(給油設備・エンジン)をそのまま使えます。低温流動性にも優れ、芳香族化合物が少ないためクリーンな燃焼が期待できます。結論はHVOのほうが性能面で優れているということです。
ただしHVOは製造コストが高い点が課題です。伊藤忠エネクスが供給するHVO製品「RD(リニューアブルディーゼル)」はフィンランドのNESTE社製で、東京都の脱炭素化プロジェクトにも採用されています。
伊藤忠エネクス「バイオ燃料とは?種類や原料、製造方法を徹底解説」:FAMEとHVO(RD)の違い・法令上の位置づけ・導入事例について詳しく解説されています。
「バイオ燃料を使えば完全にCO2ゼロ」と思っている人は、少し認識を改める必要があります。これは重要な誤解です。
バイオ燃料のカーボンニュートラル概念の根拠は「植物が成長過程でCO2を吸収する→燃焼時に排出するCO2はプラスマイナスゼロ」という考え方です。確かにこの理屈は基本的に正しいのですが、ライフサイクル全体(栽培・輸送・製造・燃焼)で考えると話は変わってきます。
実際の削減効果についてはデータがあります。アメリカのDepartment of Energy(エネルギー省)の調査では、トウモロコシ原料のバイオエタノールはガソリンと比較してライフサイクルGHG(温室効果ガス)排出量を約58.5%削減できるとされています(アメリカ穀物協会の資料より)。一方で栽培・加工・輸送の段階でのCO2排出が積み重なると、削減効果が限定的になるケースも存在します。
また「食料と競合する原料」を使う第1世代バイオ燃料については、森林を農地に転換することで生態系を破壊し、かえってCO2排出が増えるリスクも指摘されています。植物の生長にかかる期間と、伐採による炭素固定の喪失を計算する「カーボンペイバックタイム(CPT)」という指標が環境省のガイドラインでも示されています。
意外ですね。「バイオ燃料=完全なカーボンニュートラル」は必ずしも成立しません。
より確実にCO2削減効果を得たいなら、廃食油や農業廃棄物など「廃棄物系原料」を使った第2世代のバイオ燃料(HVOやセルロース系エタノール)を選ぶのがより有効です。バイオ燃料を導入する際は、原料の調達経路と製造プロセスを確認することが大切です。
GEPR「バイオエタノールはカーボンニュートラルであるという誤解」:バイオエタノールのカーボンニュートラル概念の問題点を専門的視点から解説しています。
日本における両燃料の普及状況は、現時点では世界の先進国と比べて大きく遅れています。これが条件です。
バイオエタノールの日本の現状
日本のガソリンにはバイオエタノールが混合されているものの、「直接混合」ではなく「ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)経由」という方式が採用されています。ETBEはバイオエタノールと石油系ガスを反応させた安定した液体添加剤で、ガソリンに約7%配合され、純粋なエタノール換算で約3%相当が含まれている計算になります。世界でE10(10%直接混合)が標準的な中、日本は実質E3相当にとどまっています。
この遅れの背景には、過去に「ガイアックス」と呼ばれる高濃度アルコール燃料が市場に出回り、走行中の火災事故が発生したという歴史的経緯があります。この事件をきっかけに日本のガソリンへのバイオエタノール直接混合が3%以下に規制されていましたが、現在は政策が大きく転換されています。
経済産業省は2024年11月に「2030年度までにE10ガソリンの国内供給を開始し、2030年代早期にはE20対応新車販売比率を100%にする」という方針を示しました。2028年度には一部地域でE10の先行導入が予定されています。
バイオディーゼルの日本の現状
バイオディーゼルはすでに一部の自治体・企業で導入が進んでいます。廃天ぷら油を回収してBDF(バイオディーゼル燃料)に精製し、自治体のゴミ収集車や路線バスに使用する取り組みは、全国各地で見られます。これは使えそうです。
ただし制度面での課題があります。HVOなどを高濃度で混合した燃料が地方税法上「軽油」と見なされないケースがあり、公道走行車両に給油できるバイオディーゼルの混合率上限が低く、脱炭素効果が限定的になっている点が指摘されています。
資源エネルギー庁「バイオエタノールの導入拡大をめざして、課題解決のアクションプランを策定」:日本のE10導入に向けた具体的なロードマップと課題解決策が掲載されています。
ここまでの内容で両燃料の違いを理解したうえで、実際に「自分の生活・仕事とどう関わるか」という視点で整理しておきましょう。
ガソリン車ユーザーへの影響(2028〜2030年頃から)
E10導入が進むと、街のガソリンスタンドで給油する燃料にバイオエタノールが10%混合されます。現在すでにE10対応エンジンを搭載する車は多く、特別な改造は不要です。ただし、古い年式の車(特に2000年代前半以前)はゴムパーツや燃料タンクのコーティングがエタノールに対応していない可能性があります。E10 非対応の車にE10を使い続けると、燃料系部品の劣化が早まるリスクがある点を認識しておく必要があります。
気になる燃費への影響については「E10でガソリンより約3%低下」が計算値です。年間1万km走行の乗用車で燃費15km/Lと仮定すると、年間のガソリン消費量は約667L。E10による3%の燃費低下で約20Lの追加消費となり、ガソリン170円/Lなら年間約3,400円の追加出費になります。大きな負担ではないものの、知っておけば家計管理に役立てられます。
ディーゼル車・事業者への影響(現在進行中)
トラック・バス・建設機械などを扱う事業者にとって、バイオディーゼルはすでに現実の選択肢です。ただし導入前に必ず確認すべきことがあります。
両燃料に共通する「食料競合リスク」の視点
あまり語られない話題ですが、第1世代のバイオ燃料(サトウキビ・トウモロコシ・植物油が原料)は、今後の食料安全保障問題と深く絡み合います。世界人口の増加と、燃料需要の拡大が同時進行する中、「エネルギー用途の農作物需要増大が食料価格を押し上げる」という構造的リスクは現実のものです。2007〜2008年の世界的な食料価格高騰の一因にバイオエタノール需要の急増が挙げられたことは、よく知られた事例です。
この課題を解消するためにも、廃棄物や非可食バイオマスを原料とする第2世代・第3世代バイオ燃料への移行が世界的に加速しています。ユーグレナ社が開発する次世代バイオ燃料「サステオ」は廃食油と微細藻類ユーグレナを原料に使用しており、食料と競合しない設計になっています。2021年の岡山スーパー耐久レースでは100%サステオを使用したマツダ車がレースを完走し、実用性が実証されました。
バイオエタノールとバイオディーゼルの違いを正確に把握し、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、今後のエネルギー選択に役立てることが大切です。
ユーグレナ社「次世代バイオ燃料とは。特徴や従来型との比較」:次世代バイオディーゼル「サステオ」の詳細と従来型バイオ燃料との比較が具体的に解説されています。

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