街中で見かける青い回転灯を装着した車両は、正式には「青色防犯パトロール」と呼ばれる防犯活動用の車両です。通称「青パト」として親しまれているこの車両は、警察のパトカーとは全く異なる性格を持っています。
青パトの運用は平成16年(2004年)から開始され、当初は全国で約100団体しかありませんでしたが、現在では7000を超える団体が活動し、青パトの台数も8万台以上に増加しています。
通常、青色回転灯を自動車に装着して運行することは道路運送車両法違反となり禁止されていますが、警察に申請し、自主防犯パトロールを適正に行うことができると認定を受けた団体のみが青色回転灯の装着を許可されています。
この制度が導入された背景には、2002年に刑法犯の認知件数が285万4061件に達するなど、犯罪件数の増加に対する地域住民の「自分の街は自分で守る」という自主防犯意識の高まりがありました。
青パトの主な活動内容は、取り締まりではなく地域の見守りです。徒歩のパトロールに比べて少人数で広範囲を移動できるメリットがあり、特に夜間パトロールでその効果を発揮しています。
神奈川県厚木市を中心に活動する特定非営利活動法人防犯パトロールブルーラインでは、全13台の青パト車両を保有し、主に21時以降の夜間パトロールを重点的に実施しています。昼間は警察のパトカーや役所の関連車両、郵便局の車両などが街中を走行しているため、夜間の人目が少なくなる時間帯に活動を集中させているのです。
活動内容は多岐にわたり、以下のような取り組みが行われています。
山形県では令和4年4月末現在で176団体が認定を受け、2,285台が青色防犯パトロールを実施しており、各団体が地域の安全・安心のために積極的に活動しています。
青パトの運用には厳格なルールが設けられており、以下の条件を満たす必要があります。
装備に関するルール:
運用に関するルール:
これらのルールは、青パトが適切に運用され、地域住民に安心感を与えるために設けられています。また、青パトには特別な権限は与えられておらず、普通の車と全く同じ扱いとなるため、交通規則の遵守と模範的な運転が求められています。
青パトの導入により、実際に犯罪抑止効果が確認されています。2003年をピークに刑法犯の認知件数は減少し続けており、2019年には74万8559件(2002年比で74%減)まで減少しました。
特に窃盗や器物損壊、暴行傷害、強制わいせつといった街頭犯罪の抑制に効果を発揮しており、青パトの視認性の高さが犯罪者への威嚇効果を生んでいると考えられています。
地域貢献活動としては、防犯パトロールブルーラインが「こども110番の家」を地域に増やす活動に積極的に取り組み、およそ400件の施設を登録へと繋げた実績があります。このように、青パトを運用する団体は単なるパトロール活動にとどまらず、地域の安全・防犯活動全般に力を入れています。
また、青パトは地域住民とのコミュニケーションツールとしても機能しており、昼間のパトロールでは音楽を流しながら巡回し、子どもたちと手を振り合うなど、地域との繋がりを重視した活動が行われています。
青パトの車両は、団体によって様々なカスタマイズが施されています。ボランティアの自家用車に青色灯を装着する場合もあれば、自治体がオリジナルの車両をデザインする場合もあり、そのスタイルは多様です。
特に興味深い事例として、防犯パトロールブルーラインが所有する13台の青パトのうち1台は、警察の許可を得てパトカー風にカスタマイズされたスズキ「エブリイ」があります。この車両は、ボディへの防犯パトロールの表記や後席への許可証の搭載など、青パト車両の条件を満たしつつ、警察のパトカーと同様の外装に仕上げられています。
このような正しい手続きを経たカスタマイズにより、地域住民からの認知度が高く、より親しまれやすい存在となっています。また、SNS運用にも力を入れる団体が増えており、インスタグラムやフェイスブック、ツイッターなどを通じて青パト車両や団体の活動について詳細な情報発信が行われています。
青パトの運用には人材確保が課題となっていますが、大阪市などでは資金面での支援が進んでおり、ボランティア活動の継続性を高める取り組みが行われています。地域に応じた活動が求められる中、各団体が創意工夫を凝らした独自の取り組みを展開しています。
青パトは単なる防犯パトロール車両を超えて、地域コミュニティの結束を高め、住民同士の絆を深める重要な役割を果たしています。その青い回転灯は、地域の安全を守る頼れる存在として、今後も街中で活躍し続けることでしょう。