2009年の登場以来、ビジネスシーンからアウトドアレジャーまで幅広く愛されてきた日産NV200バネットが、2026年度中に生産を終了することが2025年7月15日に公式発表されました。生産終了の直接的な理由は、生産を委託していた日産車体・湘南工場の経営再編ですが、その背景には、日産の経営戦略「Nissan NEXT」による生産効率化と電動化への集中があります。
現行NV200バネットは2009年の登場から17年のロングセラーモデルとなっており、2024年度まで継続販売される予定です。商用バンながら、ビジネスユーザーから個人のアウトドアファンまで多くのユーザーに支持されてきた背景には、「ちょうどいいサイズ感」という独自のポジショニングがあります。全長4400mm、全幅1695mmの5ナンバーサイズを保ちながら、商用車由来の広大な荷室を実現した設計が、日本の都市環境と使い勝手の理想形を体現していました。
NV200次期モデル導入の背景には、より新しい世代の共通プラットフォーム「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」への移行と、電動化技術への対応が課題として挙がっていました。旧世代プラットフォームを持つNV200では、最新の電動化パワートレインや安全技術の搭載に制約が出てきたためです。日産が欧州で展開する「タウンスター」への後継車種の絞り込みは、こうした技術的進化への対応を見据えた戦略的な決定となっています。
参考情報:日産の公式ニュースリリースに生産終了スケジュール詳細が記載
日産公式サイト
2027年度に導入予定のNV200次期モデルの最有力候補が、日産の「タウンスター」です。タウンスターは2021年に欧州市場で発表された新型コンパクトバンで、フランスの人気バン「ルノー・カングー」の3代目をベースにした兄弟車です。ルノー・日産・三菱アライアンスの共通プラットフォーム「CMF-C」を採用することで、高い品質と性能を効率的に実現しています。
欧州デビュー後、タウンスターは数々の権威ある賞を受賞しており、特にEVモデルは英国の権威ある賞「What Van? Awards 2024」で「Electric Van of the Year」と「Compact Van of the Year」の2冠に輝きました。これは、デザインだけでなく実用性、走行性能、先進性においてクラスをリードする実力を持つ証明です。
ルノー・カングーとの兄弟関係にありながら、タウンスターは日産のデザイン要素を取り入れ、シャープなヘッドライトと大型の「Vモーショングリル」という独自の表情を持ちます。日本市場への導入に際しては、カングーのフランス的な優雅さに対し、日産は先進技術と信頼性を前面に打ち出すポジショニング戦略を取ると予想されます。
タウンスター関連の詳細情報は欧州の自動車メディアで多数報道されており、日本導入の前に欧州での成功事例が多く参考になります。
NV200次期モデル(タウンスター)は、現行NV200よりも一回り大きなボディサイズになることが予想されています。現行NV200が全長4400mm、全幅1695mm、全高1855mmの5ナンバーサイズだったのに対し、タウンスターは全長約4486mmの標準ボディで全幅約1860mmの3ナンバーサイズへと拡大します。さらにロングボディは全長約4910mmとなり、より積載性に優れた選択肢を提供することになります。
この全幅の拡大により、従来の5ナンバーサイズでは実現できなかった走行安定性と室内の横方向広がりが実現されます。ホイールベースも長くなることで、走行時の快適性が向上し、より大型の機械的安定性を備えたプラットフォームになると予想されます。
積載量についても、NV200の荷室容量が最大4.2㎥(海外仕様)だったのに対し、タウンスターの標準ボディで最大3.9㎥、ロングボディでは最大4.9㎥(海外仕様)まで拡大します。ボディサイズの拡大という変化はありますが、これにより「ちょうどいいサイズ感」から「より積めて安定感のあるバン」へと進化することになります。
日本国内での駐車環境を踏まえると、全幅1860mmは立体駐車場の多くで対応可能な幅となっており、実用性とサイズのバランスが取れた選択と言えます。
参考情報:欧州での仕様詳細はルノー・日産のテクニカルスペック資料が参考になります
NV200次期モデルのパワートレイン構成は、日本市場への導入を検討する際の最大の関心事の一つです。欧州仕様のタウンスターでは、1.3リットル直列4気筒ターボエンジン(130ps/240Nm)と、45kWhバッテリー搭載の電気自動車(EV)モデルが設定されています。日本仕様に関しては、最有力候補が1.3Lダウンサイジングターボガソリンエンジンです。
現行NV200の1.6リットル自然吸気エンジン(113ps/150Nm)と比較すると、1.3Lターボモデルはパワーと燃費性能の両立が期待できます。ターボチャージャーにより、ダウンサイジングしながらも十分なトルク特性を確保し、日本国内の運転シーン(登坂や市街地走行)での実用性を維持できると予想されます。
また、かつてe-NV200として電気自動車での実績を持つ日産にとって、EV化への対応は重要な課題です。欧州で45kWhバッテリー搭載EVが航続距離約295km(WLTP)を実現していることから、日本市場への導入が検討されている可能性があります。急速充電インフラの充実と、政府補助金の対象化により、商用ユースとしての導入を見据えたモデル展開が予想されます。
驚くべき情報として、一部のユーザーや業界関係者の間では、日産の人気パワートレイン「e-POWER」の搭載を期待する声があります。ただし、カングーとの部品共通化や開発コストの観点から、実現可能性は限定的と考えられます。ただし、セレナ等での成功事例を踏まえると、将来的なe-POWER設定の可能性は完全には排除できません。
現行NV200でも「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」などの先進安全装備が搭載されていますが、NV200次期モデルでは大幅な進化が予想されています。欧州仕様のタウンスターには20以上の先進安全技術が搭載されており、これらの多くが日本仕様にも導入されることが期待されます。
特に注目されるのが「ProPILOT(プロパイロット)」です。EV仕様では高速道路の同一車線内でアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をアシストする最先端の運転支援システムが組み込まれます。これは、セレナなどの日産の乗用車では既に採用されている実績のあるシステムで、商用バンへの搭載により、長距離配送や営業車運用における運転負荷の軽減が実現されます。
加えて、アラウンドビューモニター(360°カメラシステム)、ハンズフリーパーキング、インテリジェント クルーズコントロール(歩行者・サイクリスト検知機能付)など、複数の安全機能が統合された次世代の安全プラットフォームが構築されます。
建設現場やアウトドアシーンでの使用が多いNV200ユーザーにとって、これらの先進安全装備の搭載は、実務的な安全性の大幅な向上をもたらします。
現行NV200バネットの完成度の高さと、未来を見据えた新型への待機という、困難な選択肢を前にしたユーザーのために、詳細な比較分析が必要です。コストパフォーマンス面では、現行NV200の新車価格が254万円から300万円台(グレード別)に対し、次期モデルは300万円台スタートが予想される可能性が高くなります。
現行NV200が5ナンバーサイズを維持することで、日本国内の限定的な駐車環境対応や、軽自動車並みの小回り性能(最小回転半径5.2m)を実現している点は、立体駐車場が限定的な地方都市ユーザーにとって大きなメリットです。一方、次期モデルの3ナンバー化によるサイズアップは、走行安定性の向上と積載能力の増加をもたらしますが、駐車スペースの制約が厳しい地域ではデメリットになる可能性があります。
安全装備とパワートレイン面では、次期モデルが圧倒的に有利です。ProPILOT搭載による長距離運転の負荷軽減、ターボエンジンによる性能向上、EVオプションの提供など、最新技術の体験ができます。
ユーザーの用途別判断としては、「日本の限定的な駐車環境と5ナンバー取り回し性が絶対条件」「現在のシンプル操作性を重視」「コストパフォーマンス重視」といったニーズなら現行NV200、「最新の安全技術と走行性能を求める」「先進的なインテリアを重視」「将来的な電動化対応を見据えたい」といったニーズなら次期モデルの待機が推奨される判断基準となります。