日産R35型GT-Rは、生産終了の噂が流れた2021年から2023年にかけて、中古車市場で驚異的な価格上昇を経験しました。2022年1月の時点では約900万円程度だった平均価格が、わずか4ヶ月後の3月には約1287万円、5月には最高値の約1540万円まで急騰したのです。この背景には、「もう新車が買えなくなる」という購買層の危機感と、半導体不足による新車の供給不足が重なったことが挙げられます。
特に2021年9月に発表された2022年モデルの100台限定特別仕様車「T-spec」が瞬く間に完売し、その後の注文受付停止は、GT-R最後の時代が来ると多くの人に認識させました。欧州の騒音規制やオーストラリアの安全基準をクリアできなくなったというニュースも、生産終了感を強めていました。
しかし2023年1月13日、東京オートサロン2023の会場で日産は2024年モデルの発表を行いました。アシュワニ・グプタCOOが「R35型GT-Rの集大成ともなるモデル」と発言したことで、本当のラストモデルが生産されることが確定し、相場の高騰心理は一転します。この発表以降、中古車相場はそれまでの最高値から段階的に下落していくことになったのです。
2024年から2025年にかけてのR35型GT-Rの中古車市場では、価格帯が大きく広がる傾向が見られています。最安値は760万円程度ですが、最高値は6280万円に達するなど、同じR35型でもコンディション、走行距離、グレード、カスタム状態により極めて大きな価格差が生じている状況です。
中古車流通台数を見ると、2024年は30台、2025年以降は21台と、それなりの流通量が確保されています。走行距離別の相場を分析すると、低走行車(0.5万km~1万km)が1470万円~1950万円の価格帯に集中しており、走行距離が増えるにつれて価格は下がる傾向が顕著です。一方、新車時価格が777万円~3061万円という幅を持つため、グレードによる基準価格の違いも相場に大きく影響しています。
新車価格に対する中古車価格の関係を見ると、多くのR35型GT-Rの中古車は依然として新車価格を上回る現象が続いています。これは「最後の純内燃機関GT-R」としての希少性と、次期型で電動化される可能性が高いという予想が、相場下支え要因として機能していることを示唆しています。
年式別に見ると、最も供給が多いのは2008年モデルで21台、次いで2016年の21台です。これはR35型が2007年12月の登場以来、長期生産車として多くの世代が存在することを反映しています。2020年代モデル(2020年~2025年以降)の高年式車は相場が高く、特に2024年モデルと2025年以降のモデルは、わずかな台数ながら最高額の中古車候補となっています。
走行距離別の相場を詳細に検証すると、0.5万km~0.7万km帯の31台が中古市場の層厚い層を形成しており、この帯域は1470万円~1970万円の価格帯に集中しています。低走行(0~0.5万km)の44台は当然最も高価で、多くが2000万円を超える価格で取引されています。
特に注目すべきは、9万km~10万km帯の走行距離を持つ中古車でも、依然として1000万円前後の高い価格を維持しているという点です。一般的なセダンやコンパクトカーであれば、10万km近くの走行距離で中古価格は新車の30~40%程度に下落しますが、R35型GT-Rではその3~4倍の残価率を保つことが珍しくありません。このことは、GT-Rが単なる消費財ではなく、資産性の高いコレクターズアイテムとしての性格を強く持つことを物語っています。
R35型GT-Rを中古で購入する際の最大の判断ポイントは、購入後の資産価値保持です。2022~2023年の相場高騰期に購入した人の中には、最高値の約7000万円で購入した極端な例も存在しますが、その後の相場調整で大きな含み損を抱えることになった可能性があります。一方で、相場が調整された現在のタイミングは、逆張り的に見ればより安定した相場で購入でき、今後の値崩れリスクが相対的に低い局面とも言えます。
グレード別の相場差も重要です。最初のR35型である2007~2010年モデルのピュアエディション系は、現在850万~950万円帯の比較的手頃な価格で流通しており、初めてGT-Rを所有する層にとって入門車としての役割を果たしています。一方、最終型や限定車・ニスモなど特別仕様車は、相場下落局面においても高い価格を維持する傾向が強いです。
R35型GT-Rの中古相場の今後は、次期型の動向に大きく左右されることが確実です。業界関係者からは、近い将来のフルモデルチェンジにおいて、電動化・ハイブリッド化が行われるという予測が有力視されています。もし次期型が純ガソリン自動車としての特性を失い、電動パワーユニットに移行するのであれば、「最後の純内燃機関スーパースポーツ」としてのR35型の希少性はさらに高まり、相場の支持基盤が強固になる可能性があります。
逆に次期型が完全に予想外の方向性を打ち出した場合、または新型車のデビューまでに相当な時間が経過する場合は、相場は緩やかに下落していくシナリオも考えられます。また、維持費の高さは潜在購買層を限定する要因となっており、購買希望者の限界経済規模が相場の天井を決める構造になっています。
記事の参考情報。
カーセンサーのGT-R相場表では年式・走行距離・グレード別の詳細な相場推移が確認できます
ベストカー「2024年モデル発表でR35 GT-Rは今が買い時だった」の記事では相場変動の詳細な背景解説が記載されています