CHR新型日本発売しない理由と今後の展望

トヨタの人気SUV「C-HR」の新型モデルが日本で発売されない理由を徹底解説。欧州では好調な売れ行きを見せる2代目C-HRが、なぜ日本市場に投入されないのか?

CHR新型日本発売しない背景と市場戦略

CHR新型が日本で発売されない主な理由
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市場の変化

クーペスタイルSUVの需要縮小とユーティリティ系SUVの台頭

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社内競合

ヤリスクロス、カローラクロス、ハリアーとの競合回避

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生産体制

日本国内生産終了とトルコ工場からの輸入コスト

CHR新型の欧州での成功と日本市場との違い

2023年6月に欧州で発表された新型C-HRは、現地では大きな成功を収めています。イタリアでは2025年1月の月間販売台数が過去最高を記録し、欧州全体でのC-HR累計販売台数は100万台に達しました。

 

欧州市場では、クーペスタイルSUVに対する需要が依然として高く、特にデザイン性を重視する消費者層から強い支持を得ています。新型C-HRは1.8リッターハイブリッド、2.0リッターハイブリッド、そして2.0リッタープラグインハイブリッドの3つのパワートレインを用意し、多様なニーズに対応しています。

 

一方、日本市場では2020年代に入ってからユーティリティ系SUVが販売の中心となり、クーペスタイルSUVのマーケットは大幅に縮小しました。初代C-HRは2017年・2018年に国内SUV新車販売台数1位を獲得する大ヒットを記録しましたが、2022年にはピーク時の1割程度まで販売台数が落ち込んでいました。

 

CHR新型と競合車種の価格・性能比較分析

新型C-HRが日本で発売されない大きな理由の一つが、トヨタ内での競合車種の存在です。現在の日本市場では、以下のような競合関係が形成されています。
価格帯別競合車種の比較

  • ヤリスクロス:200万円台前半~(コンパクトSUV)
  • カローラクロス:200万円台後半~(ミドルサイズSUV)
  • ハリアー:310万円~620万円(プレミアムSUV)
  • 新型C-HR(予想):450万円~675万円

新型C-HRの予想価格帯を見ると、ハリアーと重複する部分が多く、社内での競合が避けられない状況です。特にハリアーは居住性や積載性でC-HRを上回るため、「C-HRがどうしても欲しい」という強い需要がない限り、日本での販売は困難とされています。

 

また、ヤリスクロスとカローラクロスが実用性を重視する日本の消費者ニーズに合致し、C-HRの市場シェアを奪った経緯があります。これらの車種は100万円台後半から設定されており、価格面でも大きなアドバンテージを持っています。

 

CHR新型の生産体制と輸入コストの課題

新型C-HRの日本未発売には、生産体制の変更も大きく影響しています。初代C-HRは日本国内のトヨタ自動車東日本岩手工場で生産されていましたが、2023年7月に生産を終了し、現在は代わりにレクサスLBXが生産されています。

 

新型C-HRはトルコのトヨタモーターマニュファクチャリングトルコ(TMMT)で製造されており、日本向けに販売する場合は輸入に頼らざるを得ません。これにより以下のような課題が生じています。

  • 輸送コストの増加による価格上昇
  • 為替変動リスクの影響
  • 供給量の制約と納期の長期化
  • アフターサービス体制の整備

トヨタとしては、限られた生産能力をより収益性の高い車種に振り向けたいという意向があり、日本市場でのC-HRの需要予測が低い状況では、積極的な導入に踏み切れない状況です。

 

CHR新型の特許登録と日本発売の可能性

一方で、新型C-HRの日本発売を示唆する動きも見られます。2024年2月には日本の特許庁に新型C-HRの意匠が登録されており、これは日本での販売を前提とした動きと解釈されています。

 

特許登録の詳細を見ると、2021年11月にオーストラリアの特許庁に登録されたものと同じ意匠が日本でも登録されており、これは「ほぼ100%に限りなく近い確率で日本で販売される」ことを示唆しているとの見方もあります。

 

さらに、2024年8月には日本の公道で右ハンドル仕様の新型C-HRが目撃されており、テスト走行が行われている可能性が高いとされています。これらの動きから、遅れて日本導入される可能性も残されています。

 

ただし、現時点でトヨタから日本市場向けの公式発表はなく、販売店レベルでも「新型C-HRが国内で展開されるというアナウンスはない」という状況が続いています。

 

CHR新型の電気自動車版「C-HR+」と次世代戦略

新型C-HRをめぐる状況で注目すべきは、電気自動車版の「C-HR+(プラス)」の存在です。2025年3月に欧州で発表されたC-HR+は、完全電気自動車として位置づけられており、トヨタの電動化戦略の一環として重要な役割を担っています。

 

一部報道によると、トヨタは2025年秋より日本でBEV専用モデルの新型「C-HR+」の生産を開始する可能性があるとされています。これが実現すれば、従来のハイブリッド版ではなく、電気自動車版として日本市場に投入される可能性があります。

 

C-HR+の特徴。

  • 完全電気自動車(BEV)仕様
  • 欧州での価格:239.2万円~302.3万円
  • 先進的なデザインと最新技術の搭載
  • 環境規制への対応

この電気自動車版の投入は、日本政府の電動化推進政策とも合致し、従来のハイブリッド版とは異なる市場ポジションを確立できる可能性があります。特に、環境意識の高い消費者層や、デザイン性を重視する若年層からの需要が期待されています。

 

トヨタ販売店からも「新型モデルが販売されれば、他の車種よりも購入意欲が高い層は多いので、販売力は期待できる」との声が上がっており、現場レベルでは新型C-HRの導入を強く望んでいる状況です。既存のC-HRユーザーが乗り換える適切な選択肢がないことも、販売店が抱える課題となっています。

 

今後の展開としては、日本市場での電動化の進展や、消費者ニーズの変化を見極めながら、C-HR+として日本市場に再参入する可能性が最も現実的なシナリオと考えられます。