違反があっても、特定任意講習を受けると更新当日の講習が全員免除されると思っていませんか?
「特定任意講習」という言葉は、知っている人でもその内容を正確に説明できる人は少ないかもしれません。正式には、道路交通法第108条の2第2項に規定された「車両の運転者に対する講習」のことです。公安委員会が、車両の運転に関する技能および知識の向上を図るために、運転者へ実施するよう努める義務のある講習と定められています。
重要なのは「任意」の講習でありながら、受講した場合に法定の更新時講習が「免除」されるという点です。更新時に受ける義務のある講習(道路交通法第101条の3)は、この特定任意講習を更新申請日の前6か月以内に修了していれば、受けなくてよいとする除外規定が設けられています。
つまり、制度の仕組みはシンプルです。
- 「事前に2時間の特定任意講習を受けておく」
- 「当日は適性検査だけで手続きが完了する」
この2ステップで免許更新の当日負担が大幅に減ります。
実施主体は各都道府県の公安委員会で、交通安全協会などに業務委託されている場合がほとんどです。教本・視聴覚教材・運転適性検査器材・運転シミュレーターなどを活用した2時間の講習が標準的な形式となっています。
講習内容は、最新の道路交通法令改正・危険予測・年齢に応じた運転特性・飲酒運転の根絶・事故時の応急救護処置など、幅広いトピックをカバーしています。こういった情報を体系的に学べるのも、この制度の意義の一つです。
参考情報:道路交通法の条文はe-Gov法令検索で確認できます。
道路交通法 | e-Gov法令検索(第108条の2など講習制度の根拠条文を確認できます)
特定任意講習を受ければ誰でも更新時講習が免除されると思いがちですが、実はそうではありません。免除対象は条件が決まっています。
免除の対象となる主な条件は以下の通りです。
- 更新期間が満了する日の年齢が70歳未満であること
- 更新申請書を提出する日の前6か月以内に特定任意講習を受講していること
重要なのは「70歳未満」という年齢制限です。70歳以上の方は対象外となります。
また、もう一点見落とされやすいのが「違反運転者」の扱いです。特定任意講習は更新時講習の種別(優良・一般・違反・初回)を問わずに免除効果がある制度ですが、更新時に問われるのが「講習の免除」であって、免許の有効期間(3年か5年か)とは別の話になります。つまり、特定任意講習で講習は免除されても、免許証の色や有効期間が変わるわけではありません。これは意外と知られていない点です。
さらに、特定任意講習終了証明書には有効期間が設定されています。受講後6か月以内に更新手続きを行わないと、証明書の効力が切れてしまいます。
| 区分 | 法定講習時間 | 特定任意講習受講後の当日手続き |
|---|---|---|
| 優良運転者 | 30分 | 適性検査のみ |
| 一般運転者 | 1時間 | 適性検査のみ |
| 違反・初回更新者 | 2時間 | 適性検査のみ |
違反・初回更新者にとってこそ、特定任意講習の恩恵が大きいということですね。通常なら2時間の講習のために免許センターへ行く必要があるところ、事前に特定任意講習を済ませておけば、当日は適性検査だけで終わります。
運転免許の更新手続をする場合に必要な講習|埼玉県警察(免除となる終了証明書の種類・対象者の詳細が確認できます)
特定任意講習を受けるには、個人で単独申し込みできる場合は少なく、多くは「団体・職場・地域を通じた申込」が基本スタイルです。ここが一般に誤解されやすい部分です。
仕組みとしては、講習を希望する地域・職場・団体等の代表者が、管轄の警察署に「講習開催申請書」を提出し、講師が派遣される「出前講習」型の実施が原則となっています(いわゆる出前講習)。申請は講習日の30日前までに行う必要があります。
ただし、自治体や地域によっては交通安全協会経由で個人でも参加できる定期開催の講習会が設けられている場合もあります。
受講の費用(講習手数料)は都道府県によって異なりますが、標準的な金額は1,400円前後です。愛媛県では1,350円、群馬県も同水準となっています。更新時の法定講習も1,400円程度かかるため、特定任意講習の受講費用は更新時の講習費用と同等レベルと考えると分かりやすいです。
受講後は「特定任意講習終了証明書」が交付されます。この証明書は更新当日に持参することで講習免除の根拠となります。再交付も申請すれば可能ですが、手間がかかるため紛失に注意しましょう。
申込の流れをまとめると次の通りです。
1. 地元の交通安全協会または警察署に開催情報を問い合わせる
2. 職場・団体として、または参加者を集めて開催を申請する
3. 講習当日に受講し、終了証明書を受領する
4. 免許更新期日の6か月以内に更新手続きを行う(証明書を持参する)
受講できる場所は地域によって差があります。たとえば三重県では交通安全協会(いなべ地区)が偶数月に年6回・第4金曜日に実施しているなど、各地域で開催頻度が異なります。まず地元の交通安全協会か警察署に確認するのが最初の一歩です。
特定任意講習について|一般財団法人三重県交通安全協会(実施地区・手数料・申込先の具体例が掲載されています)
「2時間の講習」と聞くと、座っているだけの退屈な座学を想像する方も多いかもしれません。実際の内容は意外と充実しています。
福島県の実施要領(他県でも同水準)によると、特定任意講習の内容は大きく4つの科目で構成されています。
- 道路交通の現状と交通事故の実態(地域別の事故データなどを含む):10分以上
- 運転者の心構えと義務(シートベルト、事故時の責任、救護義務など):10分以上
- 安全運転の知識(法令改正情報・危険予測・DVDなどを活用):40分以上
- 運転適性および技能についての診断と指導(筆記検査・適性器材・シミュレーター・実車):60分以上
注目したいのは最後の「運転適性および技能の診断」です。筆記による診断だけでなく、運転シミュレーターの操作体験や、場合によっては実車を走らせながら講習指導員が同乗して運転個癖を診断・指導するプログラムも含まれています。
これはかなり実践的な内容です。
普段の運転で「自分のクセ」を意識する機会はなかなかありません。特定任意講習では、そのクセを客観的に診断してもらえる場でもあります。車好きの方にとっても、自分の運転を見直す貴重なきっかけになり得ます。
また、講習内容には「最新の車両技術の活用方法」も含まれており、先進安全自動車(ASV)・自動運転・ETC・電気自動車・ハイブリッド車・横滑り防止装置といった最新トピックも取り上げられます。現代の自動車技術に関する知識を体系的に整理できるという点も、車好きにとってはプラスの要素です。
運転者特定任意講習実施要領の制定について|福島県警察本部(講習科目・時間割など具体的な実施基準が確認できます)
具体的に「どのくらい時短になるのか」を知っておくと、この制度を使うメリットがよりはっきり見えてきます。
埼玉県運転免許センターのケースでは、更新手続の目安時間として以下が示されています。
- 違反運転者・初回更新者:約2時間30分
- 一般運転者:約1時間30分
- 優良運転者:約1時間
これに対して、特定任意講習の終了証明書を持参した場合は、更新当日の講習が免除され「適性検査のみ」で手続きが完了します。適性検査は視力検査などを含む簡易なものなので、全体の手続き時間が30〜60分程度に圧縮されるのが一般的です。
時短の恩恵が最も大きいのは違反・初回更新者です。通常なら免許センターに行かないと2時間講習が受けられないところ、特定任意講習を事前に済ませておけば、近くの警察署での更新も選択肢に入り、当日の時間も大幅に短縮されます。これは使えそうです。
また、免許更新の受付時間が厳しく区分されている場合(違反運転者は午後1時30分から〜など)、特定任意講習を済ませておくことで受付時間の制限がなくなり、スケジュール調整がしやすくなるというメリットもあります。
平日に仕事を休んで更新センターへ行く必要が減る。これは時間という価値に直結します。
自分の免許更新スケジュールに当てはめて考えてみると、特定任意講習を受けるべきかどうかの判断がしやすくなります。更新前6か月以内に受講すれば有効なので、更新ハガキが届いたタイミングで地元の交通安全協会に開催スケジュールを問い合わせてみることをおすすめします。
運転免許更新Q&A|埼玉県警察(当日の所要時間・受付時間帯・講習免除の仕組みなどが詳しく解説されています)