2003年に放送されたTBSドラマ「GOOD LUCK!!」で木村拓哉演じる新海元が愛車として乗っていたのが、トヨタ・ランドクルーザー40系でした。この車は「ヨンマル」の愛称で親しまれ、1960年から1984年まで24年間という長期間にわたって製造された名車です。
劇中で使用されたのは1974年から生産されたBJ40型と推察されており、これまで1ナンバーだったランドクルーザーが、ディーゼルエンジンを搭載することで初めて4ナンバーとして登場したモデルでした。オイルショック対策として導入されたディーゼルエンジンは、その後のランドクルーザーシリーズにおいて根強い人気を獲得することになります。
40系ランドクルーザーの特徴は以下の通りです。
「GOOD LUCK!!」は木村拓哉の人気絶頂期に放送されたドラマで、平均視聴率30%を超える驚異的な数字を記録しました。最高視聴率は37.6%、瞬間最高視聴率は41.6%に達し、まさに社会現象と呼べる作品となりました。
このドラマの影響は視聴率だけにとどまりませんでした。
全日本空輸の全面協力のもと制作されたこのドラマは、パイロットの仕事や恋愛を丁寧に描いた作品として高く評価されています。堤真一、柴咲コウ、いかりや長介など演技派俳優の出演も話題となり、現在でも内容の評価が高い名作として語り継がれています。
「GOOD LUCK!!」の放送が自動車業界に与えた最も顕著な影響は、40系ランドクルーザーの中古車相場の急上昇でした。放送当時すでに生産終了から約20年が経過していた40系でしたが、木村拓哉がドラマ内で乗りこなす姿が多くの視聴者の心を掴みました。
中古車市場での変化は以下のような特徴がありました。
この現象は「キムタク効果」と呼ばれ、ドラマや映画で使用された車両が人気を博する典型例として自動車業界で語り継がれています。30年近く前の車両が現代のドラマで使用されることは異例でしたが、それが逆に話題性を生み出し、大きな経済効果をもたらしました。
なぜ「GOOD LUCK!!」の制作陣は、新米パイロットの愛車として30年近く前の40系ランドクルーザーを選んだのでしょうか。この選択には深い演出意図が込められていました。
キャラクター設定との関連性。
航空会社のパイロットといえば一般的に高級車をイメージしがちですが、あえて武骨で古い車を選ぶことで、主人公・新海元の頑固で職人気質な性格を表現していました。新しいものよりも古いものにこだわる、実用性を重視する人物像を車選びで巧妙に演出したのです。
ドラマ全体のテーマとの調和。
この車選びは、単なる小道具を超えて、主人公の内面を表現する重要な要素として機能しました。視聴者は新海元がランドクルーザーを運転する姿を通じて、彼の人となりを理解することができたのです。
木村拓哉は「GOOD LUCK!!」以外のドラマでも印象的な車に乗っており、それぞれが話題となりました。各作品での車選びを比較すると、興味深い傾向が見えてきます。
「プライド」(2004年)でのハイラックス。
フジテレビ月9枠で放送されたアイスホッケーを題材としたドラマでは、トヨタ・ハイラックスが使用されました。大きな車体と少々の汚れが特徴的で、スポーツマンらしい男性的なイメージを演出していました。
各ドラマでの車選びの特徴。
ドラマ名 | 車種 | 特徴 | 演出効果 |
---|---|---|---|
GOOD LUCK!! | ランドクルーザー40系 | 武骨・レトロ | 職人気質の表現 |
プライド | ハイラックス | 大型・実用的 | スポーツマンの男性性 |
これらの車選びに共通するのは、いずれも実用性と男性的な魅力を重視している点です。高級車ではなく、あえて働く車を選ぶことで、キャラクターの等身大の魅力を表現していました。
トヨタ車との長年の関係。
木村拓哉は長年にわたってトヨタ車が登場するドラマやCMに出演しており、「キムタクといえばトヨタ車」という印象を多くの人が持っていました。この関係性は、後に日産のブランドアンバサダーに就任した際にも話題となりました。
これらの事例から、ドラマにおける車選びがいかに重要な演出要素であるかがわかります。単なる移動手段ではなく、キャラクターの内面や作品のテーマを表現する重要な小道具として機能していたのです。