アプリを削除したつもりが、毎年40時間分の時間損失を取り戻せていません。
JARTIC(公益財団法人日本道路交通情報センター)は、1970年に警察庁と建設省(現・国土交通省)の認可のもとで設立された、日本の道路交通情報の総本山ともいえる機関です。現在は警察・国土交通省・各高速道路会社・都道府県土木部局などから委託を受けて情報を収集し、24時間体制で全国の道路状況を提供しています。
そのJARTICの情報を地図上でわかりやすく表示するスマホアプリとして長く親しまれてきた「JARTIC渋滞情報」アプリ(開発:MMP社)が、2020年11月に突然、渋滞情報を取得できない状態になりました。原因は、JARTICが同年11月から情報配信フォーマットを新しい仕様に切り替えたことです。
つまり、「アプリ自体が廃止・削除された」のではなく、「JARTIC側のシステム変更にアプリが対応しきれず、情報が取得できない一時的な状態」になったということです。これが多くのユーザーに「配信停止」「使えなくなった」と認識された最大の原因です。
その後、2020年11月21日にバージョン4.01へのアップデートが公開され、JARTIC新フォーマットに対応しました。ただし、旧バージョン(3.52以前)で使えていた一部機能はv4.01でも引き継がれず、段階的なアップデートで対応予定とされました。このようにアプリの仕様変更と対応遅延が重なり、「配信停止」という言葉が広まっていったのです。
参考情報:iPhone-maniaによるアップデート詳細レポート
JARTIC渋滞情報が新フォーマット対応にアップデート(iPhone-mania)
また、JARTIC公式の「道路交通情報Now!!」では、システム保守作業などによる「一部情報停止のお知らせ」が定期的に告知されています。これはスマホアプリの問題ではなく、JARTIC側のサーバーメンテナンスに伴うものです。停止の告知はJARTIC公式サイトのメンテナンスページで確認できます。こちらも確認しておくことが大切です。
参考情報:JARTIC公式・一部情報停止のお知らせページ
一部情報停止のお知らせ(JARTIC公式)
アプリが正常に機能しない状態でドライブに出かけると、どんなことが起きるのでしょう?その損失は想像以上に大きいのが実態です。
国土交通省の調査によると、日本人のドライバー1人あたりの年間渋滞損失時間は約40時間にのぼります。これは乗車時間全体の約4割に相当します。1年間で「およそ丸2日分」もの時間が渋滞によって消えている計算になります。さらに、日本全体では年間約50億時間もの時間が失われており、経済損失は約12兆円とも試算されています(国土交通省)。
渋滞情報を把握せずに出発した場合、特にGW・お盆・年末年始などのピーク期には、東名・中央道・関越などの主要高速で数十キロに及ぶ渋滞に巻き込まれるリスクがあります。これは数時間単位の遅延であり、時間コストとしても燃料コストとしても無視できません。なお、渋滞中は通常走行時に比べて燃料消費量が約2.5倍になるという研究データもあります。
痛いですね。そのような損失を防ぐためにも、アプリが使えない状況では「代わりになる手段」をあらかじめ手元に確保しておく必要があります。
参考情報:渋滞による経済損失年12兆円の背景
経済損失は年間12兆円!渋滞の実態(WEBCARTOPより)
「5分ごとに自動更新される情報が途切れると、古い情報のまま走ってしまう」という事態も起こります。JARTIC公式FAQによれば、「道路交通情報Now!!」は5分ごとに情報が更新されており、現場の状況からは5〜10分程度のタイムラグがあります。アプリが停止している間はこのリアルタイム性が失われるため、解消された渋滞を避けようとしたり、新たに発生した事故を見逃したりする可能性があります。
「JARTIC渋滞情報」アプリが使えないとき、または乗り換えを検討しているときに活用できる代替アプリをご紹介します。いずれもJARTICのデータを活用しているか、それ以上の情報量を持つ信頼性の高いサービスです。
まず、最もJARTICの情報に近い代替として挙げられるのが「ATIS交通情報(アティス)」です。このアプリはJARTIC提供の全国道路の渋滞・規制情報を元にしており、インターチェンジ間の所要時間や渋滞の通過時間まで確認できます。Google Play・App Store両対応で、プロドライバーにも広く使われているアプリです。渋滞マップ上で「時計マーク」をタップすると渋滞の長さと通過時間が表示される機能が特徴的です。
次に「iHighway交通情報」です。NEXCOが提供するこのアプリは、全国高速道路の渋滞・通行止め・工事情報をリアルタイムで確認できます。マイルート登録機能があり、よく使う路線の情報をワンタップで確認できるのが便利です。ライブカメラ機能も搭載されており、現地の映像で路面状況を直接確認できるのは大きな強みです。高速道路を頻繁に使うドライバーには特にマッチします。
「渋滞情報マップbyNAVITIME」は、高速道路と一般道の渋滞情報を色分けのラインで視覚的に把握できるアプリです。渋滞なら赤、事故なら紫、というように何が起きているかを色で即座に判断できます。高速道路料金や所要時間の確認もできるため、出発前の計画立案に役立ちます。これは使えそうです。
また、「Yahoo!カーナビ」はルート案内に特化しつつも、渋滞情報をリアルタイムで取り込んだルート案内ができる点が強みです。渋滞を自動で回避するルートを提案してくれるため、「渋滞情報をチェックする」という操作をしなくても渋滞を回避できます。音声案内つきで運転中の操作を最小化できるのが魅力です。
| アプリ名 | 情報ソース | 主な強み | 料金 |
|---|---|---|---|
| ATIS交通情報 | JARTIC | IC間の所要時間・渋滞通過時間表示 | 基本無料(有料プランあり) |
| iHighway交通情報 | NEXCO | ライブカメラ・マイルート機能 | 無料 |
| 渋滞情報マップbyNAVITIME | NAVITIME | 色分けマップで視認性◎ | 基本無料(一部有料) |
| Yahoo!カーナビ | Yahoo! Japan | 渋滞回避ルート自動提案 | 無料 |
つまり、用途に合わせて使い分けるのが原則です。高速道路メインなら「iHighway」、一般道も含めた渋滞把握は「ATIS」、ナビと渋滞情報を一体で使いたいなら「Yahoo!カーナビ」が選びやすいでしょう。
実は、「JARTIC渋滞情報」アプリがなくなっても、JARTICのデータをほぼそのまま使える公式の無料サービスがあります。それが「道路交通情報Now!!」というウェブサービスです。スマホのブラウザからアクセスするだけで利用でき、アプリのインストールも不要です。
「道路交通情報Now!!」では、都道府県警察本部や道路管理者から収集した通行止・渋滞情報を、高速道路図とデジタル地図の2種類の表示形式で確認できます。情報は5分ごとに自動更新されます。地図上では優先順位に応じて情報が色分けされており、通行止が黒、渋滞が赤、混雑がオレンジ、チェーン規制が紺・水色の縞模様、などで視覚的に把握できます。
一般道路の渋滞基準は「時速10km以下」、高速道路では「時速40km以下」で「渋滞」と判定されます。高速道路の「混雑」は時速40〜80km程度の状態を指し、「渋滞」よりは走れるものの通常より遅い状態です。この基準が原則です。
参考情報:JARTIC公式FAQ「渋滞・混雑の定義」
よくあるご質問(JARTIC公式)
メンテナンス等で「道路交通情報Now!!」の一部情報が停止される場合は、JARTIC公式トップページやメンテナンス案内ページで事前にお知らせされます。停止が過ぎても情報が表示されない場合は、ブラウザの「再読み込み」を押すことで解消されることが多いです。知っておくだけで焦らずに対処できます。
渋滞情報にはタイムラグがある点も覚えておく必要があります。車両感知器からデータを収集してサイトに反映されるまで、約5〜10分のズレが生じます。特に事故発生直後は渋滞が急激に伸びるため、「渋滞なし」と表示されていても現地ではすでに渋滞が始まっている場合があります。出発直前だけでなく、走行中もこまめに確認する習慣を持つと安心です。
ここまで「配信停止の対処法」として代替アプリや公式サービスを紹介してきましたが、より一歩踏み込んだ活用法があります。それが、JARTICが公式に提供している「渋滞予測」機能です。この機能はリアルタイムの渋滞情報とは別物であり、停止中でも活用シーンがあります。
「道路交通情報Now!!」のウェブサービスでは、過去の渋滞データをもとにした「渋滞予測」情報も提供されています。これは高速道路各社が公表している渋滞予報マップと連動しており、GW・お盆・年末年始などの繁忙期に特に役立ちます。たとえば東名高速の上りは特定の土日の午後3〜6時台に渋滞がピークを迎えやすいといったパターンデータを事前に参照できます。
つまり、リアルタイム情報が配信停止中であっても、「予測情報」は事前チェックが可能なことがあるということです。ドライブの出発時刻を1〜2時間ずらすだけで、渋滞に巻き込まれる時間を大幅に削減できる場合があります。
参考情報:JARTIC渋滞予測ページ
渋滞予測(JARTIC公式)
また、VICSとJARTICの情報源の違いを知っておくのも有益です。VICSはビーコンやFM多重放送を通じて「今まさに起きていること」を配信するシステムです。一方JARTICは、複数の機関から情報を集約した上で提供するため、一定のタイムラグが発生します。しかしJARTICはカバー範囲が広く、一般道・高速道路・都市高速のすべての情報を一元的に確認できるという強みがあります。
さらに近年は、スマホアプリのカーナビが収集するプローブデータ(実際に走行中の車のGPS情報を匿名で集計したデータ)も渋滞情報に活用されています。NAVITIMEやYahoo!カーナビはこのプローブデータを積極的に活用しており、車両感知器が設置されていない道路でも渋滞を検出できます。これはJARTIC単独では対応しきれない路地・生活道路レベルの渋滞情報を補完する、現代ならではの仕組みです。
アプリが止まっても情報収集の手段は複数あります。複数のツールを組み合わせて状況を把握する習慣を持てば、渋滞による時間損失を最小限に抑えられます。JARTIC・VICS・プローブデータという3つの情報源を知った上でツールを選ぶことが、渋滞情報を「制する」ための近道です。