ノーヘルで自転車事故の被害に遭うと、あなたの賠償金が最大10%も減らされる可能性があります。
2023年(令和5年)4月1日、道路交通法の改正が施行されました。それまでは「13歳未満の子どもを自転車に乗せる保護者」にのみヘルメット着用の努力義務がありましたが、この改正によってすべての年齢の自転車利用者に対象が拡大されました。
「努力義務」という言葉に馴染みがない方も多いと思います。簡単に言うと、「守るよう努めなければならないが、守らなくても直接的な罰則はない」という法律上の規定です。
つまり、現在(2026年3月時点)ヘルメットをかぶらずに自転車に乗っても、警察に止められて罰金を払わされることはありません。これは重要なポイントです。
ただし「罰則がない=何も問題ない」とは言い切れないところが、この義務化の大切な落とし穴になっています。後のセクションで詳しく解説します。
また、2026年4月1日から施行の「自転車への青切符制度」でも、ヘルメット未着用は引き続き青切符の対象外です。信号無視(反則金6,000円)やスマートフォン使用(反則金1万2,000円)などは対象になりますが、ヘルメットについては罰則がない状態が続きます。これが条件です。
| 対象者 | 改正前(2023年3月まで) | 改正後(2023年4月以降) |
|---|---|---|
| 13歳未満の子どもの保護者 | ⭕ 努力義務あり | ⭕ 努力義務あり(継続) |
| 成人・大人 | ❌ 規定なし | ⭕ 努力義務あり(新設) |
| 同乗者を乗せる運転者 | ❌ 規定なし | ⭕ 努力義務あり(新設) |
参考:自転車ヘルメット着用に関する道路交通法63条の11の改正詳細(警視庁)
自転車用ヘルメットの着用 - 警視庁ホームページ
「罰則なし=問題なし」と考えている方に、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
「努力義務違反」は刑事罰の対象にはなりませんが、民事裁判(損害賠償請求)では話が別です。交通事故の損害賠償では「過失相殺」という考え方があり、被害者側にも損害の拡大に繋がる過失があれば、賠償額から差し引かれることがあります。
実際に東京地方裁判所令和4年8月22日の判決では、ロードバイク乗車中に事故に遭った被害者がヘルメット未着用だったことを理由に、被害者側の過失が通常より5ポイント加算されています。通常「被害者:加害者=5:95」となるべき事案が、「10:90」に変更されました。つまり賠償金が実質的に目減りした計算になります。
着用率21%という現状(警察庁2025年調査)では、いまだ「社会的に一般化している」とは言えないため、現在は過失相殺されないケースも多いです。しかし、着用率が高まるにつれて裁判所の判断も変わる可能性があります。
特に注意が必要なのは以下のケースです。
加害者側の保険会社や弁護士は、上記に該当する場合に「ヘルメット未着用は被害者の過失だ」と必ず主張してきます。法的リスクに注意すれば大丈夫です。
参考:ノーヘル自転車事故の過失相殺に関する裁判例の解説(交通事故専門弁護士)
自転車のヘルメット着用が努力義務化!何が変わる?交通事故専門弁護士が解説
なぜ国がわざわざ法律を改正してヘルメット着用を義務づけたのか。その背景には、深刻な統計データがあります。
警視庁(東京都内・令和3〜7年合計)によると、自転車で死亡した人の約63.5%が頭部に致命傷を負っていました。また、ヘルメット未着用者の致死率は着用者の約2.3倍にのぼります。
さらに驚くのが、5年間で頭部の致命傷により亡くなった自転車利用者1,116人のうち、96%(1,071人)がヘルメット未着用だったという警察庁のデータです(読売新聞2023年報道)。これは衝撃的ですね。
にもかかわらず、2025年の警察庁調査では全国の着用率は21.2%(前年比4.2ポイント増)にとどまっています。都道府県別では最高が愛媛県の70.3%、最低はわずか7.2%(大阪)と、実に10倍近い地域差があります。
2023年4月の義務化直前の着用率は約4%でしたから、そこから着実に増えてはいます。しかし、9割近くの自転車利用者がまだノーヘルで走っているのが現実です。
ヘルメット着用率の低さの主な理由としては以下が挙げられています。
参考:警察庁による頭部保護と着用義務化の根拠データ
頭部の保護が重要です ~自転車用ヘルメットと頭部保護帽 - 警察庁
「とりあえずヘルメットをかぶればいい」と思いがちですが、実は選ぶヘルメットの種類が大切です。自転車用ヘルメットには現時点でバイク用のような法定基準がなく、「どんなヘルメットでも被ればOK」ではありません。
安全性の証明として信頼できる代表的なマークは次のとおりです。
| マーク名 | 発行機関 | 特徴 |
|---|---|---|
| SGマーク | 製品安全協会(日本) | 被害者への賠償制度あり。警察庁が推奨 |
| JISマーク | 日本産業規格 | 国家規格に基づく基準適合品 |
| JCF公認/推奨マーク | 日本自転車競技連盟 | スポーツ自転車向けの高い安全基準 |
| CEマーク(EN1078) | 欧州標準化委員会 | EU規格に準拠した製品 |
| CPSCマーク | 米国消費者製品安全委員会 | 米国安全基準に適合した製品 |
おしゃれな「帽子型ヘルメット」や、デザイン重視の製品の中には、これらのマークを取得していないものも流通しています。SGマーク等の安全性を確認してから購入するのが基本です。
あご紐の締め方にも注意が必要です。指1〜2本分の隙間を残しつつしっかりと固定することで、事故時にヘルメットが外れるのを防ぎます。1万円前後〜3万円程度が自転車用ヘルメットの一般的な価格帯ですが、補助金制度を使えば実質負担を減らせます。
参考:消費者庁による安全マークの種類と基準解説
自転車用ヘルメットの安全性を示すマークについて - 消費者庁
「値段が高い」「持ち運びが面倒」という2大ハードルをまとめて攻略する方法があります。
まず価格の問題について言うと、自治体の補助金制度を利用することで実質負担を大きく減らせます。全国1,718の自治体のうち約21%(351以上)がヘルメット購入補助制度を導入しており、上限額は自治体によって異なりますが2,000円前後が多い傾向です。サイクルベースあさひの補助金一覧ページなどで最新状況を確認しておくと良いでしょう。
次に「持ち運びが面倒」という問題は、置き場の工夫で解消できます。通勤・通学で毎日乗る場合は、玄関の自転車置き場にヘルメット専用フックをつけるだけで、自転車を取り出すたびに自然と目に入る環境が作れます。これは使えそうです。
ここで注目したいのは、「なぜ愛媛だけ着用率70.3%と突出して高いのか」という点です。愛媛県では2010年代から学校での自転車通学時のヘルメット着用指導が徹底されており、子どものころから「自転車=ヘルメット」が習慣として根付いています。着用率の低い大阪(7.2%)と実に10倍の差が生まれているのは、幼少期からの習慣形成が大人になってからの行動に直結するからです。
つまり、ルールや罰則がなくても「習慣化」さえできれば着用率は劇的に上がるということです。ヘルメットを自転車のカギと同じ場所に保管して「セット」にする、出発前のルーティンに組み込む、といった工夫が習慣化への近道です。
参考:自転車ヘルメット購入補助制度一覧(サイクルベースあさひ)
全国市区町村におけるヘルメット購入補助金について | サイクルベースあさひ

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