リリーフバルブの仕組みと直動型・パイロット式の構造を解説

リリーフバルブの仕組みを基礎から解説。直動型とパイロット作動型の構造の違い、クラッキング圧力・圧力オーバーライドの意味、よくあるトラブルまで網羅。あなたの油圧回路、設定は本当に正しいですか?

リリーフバルブの仕組みと油圧回路での役割を徹底解説

設定圧力どおりに調整したつもりでも、実は流量を上げると設定値の15〜20%超の圧力がかかっていることがあります。


この記事の3つのポイント
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リリーフバルブとは何か

油圧回路の圧力が設定値を超えたとき、自動的に油をタンクへ逃がして機器を守る「安全弁」です。スプリングとポペットのシンプルな構造で成立しています。

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直動型とパイロット式の違い

直動型は応答が速く小流量向き、パイロット式は大流量でも圧力が安定する構造です。用途に合わない型を選ぶと圧力オーバーライドや機器損傷につながります。

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知らないと損するトラブル知識

チャタリング・異音・設定圧に達しないなどのトラブル原因と対策を解説。早期発見できれば、高額な部品交換を未然に防げます。


リリーフバルブとは何か?油圧回路での基本的な役割


リリーフバルブ(relief valve)とは、油圧回路の圧力が設定値を超えた際に、過剰な油をタンク側へ自動的に逃がすことで回路全体を保護する圧力制御弁のことです。日本語では「リリーフ弁」や「安全弁(セーフティバルブ)」とも呼ばれます。特に異常な圧力上昇から機器を守る目的で使う場合、セーフティバルブという呼称が使われることがあります。


油圧システムは非常に強力なエネルギーを扱います。ポンプが継続的に油を送り出している状態で、シリンダが動作を終えると回路内の行き場がなくなった油の圧力はどんどん上昇します。この圧力の逃げ場がなければ、ホースや配管の破裂、シリンダやポンプの破損、さらには油の高温化・劣化といった深刻な損傷が連鎖的に発生します。


リリーフバルブはその「最後の砦」です。つまり圧力制御の要です。


油圧回路の制御弁は大きく「圧力制御弁」「流量制御弁」「方向制御弁」の3種類に分類されますが、リリーフバルブは圧力制御弁の代表格です。具体的には以下のような場面で活躍します。


  • 🏗️ 建設機械(油圧ショベル・クレーンなど):過負荷時にアームの破損を防止
  • 🏭 プレス機・射出成形機:加工完了後にポンプを保護
  • 🔧 工場設備の油圧ユニット:回路全体の最大圧力を一定に保持
  • 🚗 エンジンの潤滑回路:エンジン回転数上昇時の油圧過多を防止


リリーフバルブが1個あるだけで、数百万円もする油圧ポンプや精密シリンダを保護できます。これが基本です。


参考:ダイキン工業 油機事業部による圧力制御弁の分類と回路動作の解説(業界標準的な参考資料)
圧力制御弁 | よくわかる油圧講座 | ダイキン工業株式会社 油機事業部


リリーフバルブの仕組み(動作原理)をわかりやすく図解で説明

リリーフバルブの仕組みは、「スプリング(バネ)の力と流体の圧力のせめぎ合い」で説明できます。構造はシンプルですが、理解しておくとトラブル対応が格段に早くなります。


まず通常状態では、スプリングがポペット(弁体)をシートに押しつけており、油の流れを完全に遮断しています。スプリングの強さ=設定圧力であり、調整ハンドルでスプリングを縮める(締め込む)と設定圧が上がり、緩めると下がります。


次に、回路内の圧力が上昇して設定値(クラッキング圧力)に達すると、油の押す力がスプリングの力を上回り、ポペットが押し開かれます。弁が開いた瞬間に油はOUT側(タンク側)へ流れ始め、回路内の圧力が下がります。圧力が設定値以下に戻ると、スプリングの力でポペットが再び閉じます。この「開→閉」のサイクルを繰り返すことで圧力が制御されます。圧力制御の繰り返しが基本です。


ここで重要な用語を整理しておきます。


| 用語 | 意味 |
|------|------|
| クラッキング圧力 | バルブが開き始める圧力(吹き始め圧力) |
| フルフロー圧力 | バルブが全開になる圧力(全量リリーフ圧力) |
| 圧力オーバーライド | クラッキング圧力からフルフロー圧力までの圧力差 |
| 設定圧力 | 調整ハンドルで決めたリリーフ開始の目標圧力 |


「設定圧で確実にリリーフする」と思っていても、実際にはクラッキング圧からフルフロー圧まで差があるため、流量によっては設定値より高い圧力がかかり続けることになります。この特性こそが「圧力オーバーライド」であり、直動型リリーフバルブの代表的な弱点です。


たとえば10MPaで設定したバルブに大流量を流すと、実際には11〜12MPaまで圧力が上昇することがあります。これは許容範囲を超える場合もあるため、機器の耐圧を確認したうえで設計に余裕を持たせることが必要です。


参考:日本オイルポンプ(NOPグループ)によるリリーフバルブの用語と動作解説
トロコイドポンプ用リリーフバルブについて | 日本オイルポンプ


リリーフバルブの種類:直動型とパイロット作動型の構造の違い

リリーフバルブには大きく分けて「直動型(直動形)」と「パイロット作動型(パイロット操作形)」の2種類があります。両者の違いを理解することは、機器選定の失敗を防ぐうえでとても重要です。


直動型リリーフバルブは、スプリングとポペットだけで構成されたシンプルな構造です。部品点数が少なく、応答性が非常に高いことが特徴です。圧力上昇に対して即座に反応するため、主にサージ圧(過渡的な圧力スパイク)への対応や、他の弁のパイロット部として組み込まれるケースに向いています。ただし流量が多い条件では「圧力オーバーライド特性」が大きくなる弱点があります。また高速でON・OFFを繰り返す「チャタリング」が発生しやすいという特性もあります。


パイロット作動型リリーフバルブは、メイン弁(主弁)と小型のパイロット弁(直動型リリーフ弁)の2段構造になっています。パイロット弁が設定圧力を感知して動作し、主弁の前後に圧力差を発生させることで主弁を開かせる仕組みです。チョーク(絞り)と呼ばれる細い穴が主弁上下の圧力差をつくり出す点がポイントです。


パイロット式の最大のメリットは「圧力オーバーライド特性が非常に優れている」ことです。大流量でも設定圧力近辺で安定してリリーフするため、幅広い産業設備に採用されています。さらに「ベントポート」を外部から制御することで、2段階の圧力設定や電磁弁との組み合わせによるリモート圧力制御も可能です。これは使えそうです。


  • 直動型:応答速度◎、圧力安定性△、小流量向け、パイロット部に最適
  • 🎯 パイロット式:応答速度○、圧力安定性◎、大流量対応、産業設備の主力


どちらを選ぶべきかは、流量の大きさと要求される圧力精度によって決まります。誤った選択は圧力の不安定さを招き、機器の寿命を縮める原因になります。


参考:直動型とパイロット作動型の構造図と動作を図解で解説した詳細記事
【図解あり】リリーフ弁とは?直動型とパイロット作動型の違いと構造を解説


リリーフバルブの設定方法と調整のポイント:正しい圧力設定の手順

リリーフバルブの設定を誤ると、機器の保護どころか逆に損傷を引き起こすリスクがあります。正しい手順を理解しておくことが大切です。


まず、設定前にシステム内の機器(シリンダ・ホース・継手・ポンプ)の最大使用圧力(耐圧)を確認します。リリーフバルブの設定圧は、この最大使用圧力を超えない範囲で、かつ必要な作動圧より少し高めに設定します。一般的には「作動最高圧力の110〜120%」を目安にすることが多いです。


設定手順のポイント:


  • 🔽 低圧から徐々に上げる:最初から高圧にすると事故の原因になります。調整ネジを締め込む前に、必ず圧力を最低値まで下げた状態から始めます。
  • 📊 圧力計を見ながら調整:設定ネジ(調整ハンドル)を1/4回転ずつゆっくり締めながら圧力計の値を確認します。
  • 🌡️ 油温の変化を考慮する:油温が上がると粘度が下がり、同じ流量でも発生する圧力が変化します。常温時と高温時では設定値がずれることがあるため、安全マージンが必要です。
  • 作動確認を必ず行う:設定後は実際に負荷をかけた状態で、設定圧に達した際に正常にリリーフすることを確認します。


注意が必要なのは、「設定値を上げ続けているのに圧力が回復しない」ケースです。これは設定ミスではなく、内部漏れや異物の噛み込み、弁の固着などのトラブルである可能性が高いです。そのような場合は調整で解決しようとせず、分解・点検を行うことが原則です。


また、油圧回路における固定ポンプを使用している設備では、シリンダの動作が完了した後も油が送り続けられます。この余剰の油を全量リリーフバルブで逃がしている状態が長時間続くと、高圧の油がそのまま熱に変換されてしまい、油温の急激な上昇と油の劣化を招きます。リリーフバルブを「常時使う安全弁」として設計するのではなく、アンロード回路や可変ポンプとの組み合わせを検討することが、エネルギー効率の面でも重要です。


リリーフバルブのトラブルと原因:チャタリング・異音・作動不良を見逃すと起きること

リリーフバルブは一見シンプルな部品に見えますが、異常を放置すると設備全体の損傷に直結します。代表的なトラブルを早めに見分けることが、大きなコストを防ぐ鍵になります。


① 設定圧より低い圧力で作動する(早期開弁)


スプリングの疲労や、異物・スラッジが弁座(シート)に噛み込んだことで、設定圧より低い圧力でも弁が開いてしまう状態です。シリンダの力が弱くなった、プレスの加圧力が不足しているといった症状として現れることが多いです。スプリング交換または弁のクリーニングが対処法になります。


② 作動しない(非作動:非常に危険)


弁の固着や油の劣化・スラッジ堆積により、設定圧を超えても弁が開かない状態です。これは最も危険なトラブルです。放置すると配管・ホースの破裂やポンプ焼損につながります。定期的な点検と作動確認が欠かせません。


③ チャタリング(振動・異音)


高速でON・OFFを繰り返し、「カタカタ」「ガタガタ」という異音が発生する現象です。主に直動型リリーフバルブで起きやすく、バルブに対して流量が過大な場合や、パイロット式バルブの調整不良が原因で発生します。チャタリングは弁座の摩耗を急速に進め、バルブの寿命を大幅に縮めるため早急な対処が必要です。たとえば、本来の設定圧が10MPaであるバルブが、9.9MPaと10.2MPaの間でハンチング(行き来)している状態がチャタリングの典型例です。


トラブルを早期発見するためには、設備の圧力計の値と作動音を日常的に確認する習慣が有効です。疑問があれば分解点検をためらわないことが原則です。


参考:リリーフバルブの仕組み・種類・設定方法・よくあるトラブルを体系的にまとめた解説
リリーフバルブとは?油圧回路の安全機構をわかりやすく解説 - INVITIN'


見落とされがちな視点:リリーフバルブが「常時開いている」状態のエネルギーロス問題

多くの解説では「リリーフバルブは安全弁だから、作動するのは異常時だけ」という前提で説明されます。しかし実際の設備では、リリーフバルブが常時またはほぼ常時作動している状態で運用されているケースが少なくありません。これは見逃されがちな問題です。


固定ポンプ(定吐出量ポンプ)を使用している油圧ユニットでは、ポンプが回転している限り一定量の油が常に吐き出されます。シリンダが動作端(ストロークエンド)に達して動かなくなったあとも、ポンプはひたすら油を送り続けます。行き場のない高圧の油は、リリーフバルブを通ってタンクへ戻されます。


この「高圧の油をタンクへ捨てる」動作こそが、大きなエネルギーロスの正体です。たとえば10MPaの圧力で20L/minの油をリリーフしている場合、毎分約3.3kW(≒電気ストーブ1台分以上)のエネルギーが熱として捨てられ続けていることになります。これは痛いですね。


このエネルギーロスは油温の上昇を招き、作動油の劣化を早め、油冷却装置(オイルクーラー)の負荷増大、さらにはシールやホース類の劣化促進にもつながります。結果として、維持コストが増加することになります。


この問題を改善するためのアプローチとして、代表的なものが「アンロード回路」の採用です。シリンダが動作端に達したタイミングでリリーフバルブのベントポートを解放し、ポンプの吐出圧力をほぼゼロにしてタンクへ戻す方法です。もうひとつは「可変ポンプ(可変容量型ポンプ)」への切り替えです。可変ポンプは必要な流量だけを吐出するため、リリーフへの常時逃がし損失そのものを大幅に削減できます。最近の産業設備では可変ポンプの採用が増えており、固定ポンプ+リリーフバルブの組み合わせは「旧来型の構成」と見なされつつあります。


設備の省エネ対策を検討する際は、リリーフバルブの作動頻度と時間を確認してみることを強くおすすめします。作動時間が長ければ、それはそのままエネルギーと費用の無駄になっているサインです。圧力計とフローメーターで実態を把握することが、改善の第一歩です。




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