厚さ1.6cmのマットを敷いても、あなたの「ドスン音」は9割消えていません。
防音マットを選ぶうえで、まず理解しておかなければならない指標が「LL値(軽量床衝撃音低減性能等級)」です。この数値は小さいほど防音性能が高く、LL35が「通常ではまず聞こえない」レベル、LL60が「よく聞こえる」レベルとされています。
ニトリの製品で検証実験が行われた結果、「木目調パズルマット」はLL45相当、「タイルカーペットハーゲン」系はLL60相当という測定値が出ています。LL45は「小さく聞こえる」レベルであり、日常の生活音を軽減する効果は十分期待できます。
ただし、ここで重要な落とし穴があります。「LL値」が対象にしているのは、スリッパの足音・椅子を引く音・小物の落下音といった「軽量床衝撃音」であり、子供がジャンプする音や重い工具を床に落とす音のような「重量床衝撃音(LH値)」は別の話です。重い音はLL値がよくても消えません。これが原則です。
| LL値(遮音等級) | 聞こえ方の目安 | ニトリ製品の該当例 |
|---|---|---|
| LL35 | 通常ではまず聞こえない | (ニトリ単体では達成困難) |
| LL40 | かすかに聞こえる程度 | 高性能防音カーペット |
| LL45 | 小さく聞こえる | 木目調パズルマット相当 |
| LL50 | 聞こえる | コルクマット相当 |
| LL60 | よく聞こえる | タイルカーペットハーゲン相当 |
車好きな方が趣味部屋でニトリのマットを使う場面では、スパナやジャッキの衝撃音がLH(重量衝撃音)に該当するため、LL値だけを追いかけると実感とズレが生じやすいです。LL値が良くても防音できていないことがある、という点だけ覚えておけばOKです。
参考:床材の防音等級表示に関する情報。LL値とΔL等級の違いなども確認できます。
ニトリの防音マットは大きく3種類に分類されます。ジョイントマット(パズルマット)、タイルカーペット、そしてラグタイプです。それぞれ得意な使い方が違います。
まず「木目調パズルマット(厚さ1.6cm)」は、フローリングの見た目を活かしたまま使えるジョイントタイプで、LL45相当の防音性能を持ちます。4枚入りで税込1,490円前後という価格帯は、コストパフォーマンスとして優秀です。実際に使用したユーザーからは「ステッパーの振動が体感的にかなり和らいだ」「木目調なので見た目が気にならない」という声が多く挙がっています。これは使えそうです。
次に「防音吸着ぴたパネルマット(厚さ0.9cm)」は、タイルカーペットタイプで裏面に特殊吸着加工が施されています。掃除機をかけてもズレにくく、汚れたパネルだけ取り外して手洗いできる点が大きな強みです。軽量床衝撃音低減性能等級は△LL(1)-4(一般財団法人日本建築総合試験所測定)と公式に取得しており、透明性が高い製品です。
最後の「極厚30mmウレタン入り防音ボリュームラグ」は、厚さ約3cm(はがきの縦幅の約半分に相当する厚み)という圧倒的なボリュームで衝撃を吸収します。床に座ったり寝転んだりする時間が長い方に特に向いており、「床の硬さをまったく感じない」というレビューが複数あります。ただし柔らかすぎる反面、重い家具の脚が沈み込んで効果が下がるケースもあるため注意が必要です。
3タイプともに一長一短です。素材の選び方が条件です。
車好きで趣味部屋や室内ガレージスペースをお持ちの方に、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。「厚みがあれば防音効果が高い」という考え方は、かなりの確率で期待ハズレを生みます。
実際に検証実験のデータを見ると、ニトリの「木目調パズルマット」は厚さ1.6cmでLL45相当を達成しているのに対し、MUTE「防音専科」は厚さ1.8cmでLL35を取得しています。わずか0.2cm厚いだけで10ポイントもの差が出るのは、厚みではなく「素材の密度・構造」が決め手になっているからです。意外ですね。
また、車のパーツを扱う場面で問題になりやすいのが、重いものを床に落とした際の「重量床衝撃音(LH値)」です。ジャッキや工具箱のような重量物の落下音は、低音域の振動として床・壁・天井を伝わるため、柔らかいウレタン系のマットよりも高密度ゴム系のマット(防音ラバーマット)の方が効果的な場合があります。
趣味の整備スペースや車好きが作るガレージライクな部屋では、ニトリのマットで軽量音を抑えつつ、重量衝撃が予想される箇所だけに防音ラバーマット(ホームセンターで1枚1,000〜2,000円程度)を重ねる二段構えが現実的な対策になります。ニトリ単体で全部解決しようとするのではなく、得意な音域に使い分けるということが条件です。
参考:ニトリ・コーナン・MUTEの防音マットをタッピングマシンで比較実験した検証結果。LL値の差が視覚的に確認できます。
MUTE「ニトリの防音マットの効果は?コーナンとMUTEと比較してみた」
防音マットを買って敷いたのに「思ったより効果がなかった」という体験は、選び方ではなく「敷き方」に原因があるケースも少なくありません。
最もありがちな失敗が「部屋の一部だけに敷く」という使い方です。音は水のように隙間から回り込む性質があります。玄関脇だけ、ソファ周りだけといった部分敷きでは、マットのない床部分が振動の伝わり道になってしまい、防音効果が大きく減衰します。特に軽量床衝撃音の低減には、部屋全体の床面を覆うことが理想的です。
もう一つの見落とされがちな点が「マットの継ぎ目」です。ジョイントマットはパズル状に組み合わせるため、継ぎ目部分が弱点になりやすく、そこから音が漏れることがあります。ニトリの「防音吸着ぴたパネルマット」のように吸着加工付きの製品を選ぶと、継ぎ目のズレが生じにくく安定性が保てます。
さらに、床暖房の上に敷く場合も注意が必要です。ニトリの一部製品は床暖房対応表記がありますが、対応していない製品を高温状態の床暖房の上に長時間置くと、素材が変形したり接着成分が劣化したりすることがあります。購入前に製品ページで「床暖房対応」の表記を必ず確認するようにしましょう。防音マットの選択と同様、確認することが基本です。
ニトリの防音マットは優れたコストパフォーマンスを持ちますが、専門防音メーカーの製品と比較すると、重量床衝撃音への対応力に差があることは事実です。特に車好きが趣味スペースで使う場合、ニトリ単体で完結させようとするより、目的に応じて素材を重ねる考え方が効果的です。
例えば、ニトリの木目調パズルマット(LL45相当)の下に、遮音シートを1枚敷き込むだけで低周波域の音がさらに抑えられます。遮音シートを2枚重ねると遮音性能は約5dB向上するというデータもあり(日本健康住宅協会の情報より)、費用の追加を最小限にして効果を引き上げる方法として有効です。
また、MUTE「防音専科」のように遮音等級LL35を公式に取得した専門製品は、ニトリの木目調パズルマットと比べて0.2cmしか厚みが変わらない(1.6cm対1.8cm)にもかかわらず、測定値で2等級の差が出ています。趣味部屋のような「本気で音を止めたい空間」では、全面をMUTEのような専門品で敷くことも選択肢に入れておく価値があります。
一方で、リビングや寝室のように「ある程度音を和らげれば十分」な空間では、ニトリの手頃な製品で十分に目的を果たせます。コストと効果のバランスを部屋ごとに判断することが賢い選び方です。つまり、使い分けが基本です。
参考:子供の足音対策・遮音等級LL値の解説・ニトリ製品の効果まで詳しく比較した専門サイト。
元ラッパ吹きの防音研究所「ニトリの防音マット、子供の足音への効果は?」